本社に打診したら、「その値段は出せない」とあっさり言われた。

20代の私が、心底がっかりきたのは、こういう場面でした。営業の私が、お客様に食らい付いて、他社との競合にもまれながら、なんとか、「じゃあ、君から買おうか」と言ってもらえたこの案件。それが、本社の一言でNGになってしまうのです。

最初は心からショックを受け、しばらくは仕事が手に付かないくらい落ち込みました。しかし、そんなことが何回か続くと、「またか……」と少しずつ感覚がマヒしてきます。そして、いつの間にか、

「本社が言うのだから仕方がない」
「上司が決めたから仕方がない」

と、「仕方がない」と言う言葉がいつの間にか口ぐせのようになっていました。そして、この口ぐせが、自分のビジネスキャリアを本当に「しかたがなくなる」まで追い込んでいったのです。

  • 自分の仕事を否定されてストレスを感じることはありますか?(写真:マイナビニュース)

    自分の仕事を否定されてストレスを感じることはありますか?

「しかた(仕方)」は必ずたくさんある

「上司に企画を提案したら、否定された」。このような時、20代の私は、多くの場面で"しかたなく"諦めることを選びました。また、どうしても納得いかないときは、がんばって再提案したのです。

こういった場面で、私の頭に浮かんだのは、いつも、このように「あきらめるか」「再提案するか」といった「2択」の選択肢でした。

そして、納得できずにあきらめるか、強引に再提案して玉砕するかして、いずれにしてもストレスを溜めこんでいったのです。

実は、この"しかたがない"2択での選択の積み重ねこそ、まさに「しなくていい努力」だったのです。「上司に企画を提案したら、否定された」時の、選択肢は、

A「あきらめる」
B「再提案する」

の2択だけではけっしてありません。「後日飲みに誘って口説く」「3人の同僚と再アタックする」「上司の上司に持ち込む」「(上司に)信頼されている別の先輩に代わりに提案してもらう」「提案がNGな理由を丁寧にヒアリングする」「他の仕事で実績を作り、信頼性を高めてから再提案する」「会社を辞め、別な会社に売り込む」……。

1分考えただけで、これだけの「仕方」を考えることができるのです。

仕事ができる人は、「しかた」がたくさんある

仕事ができる人というのは、常に「"しかた"がたくさんある人」です。仕方を増やすために、視野を広く、視座を高く、視点を変えて思考している人です。「しかたがない」という言葉は、瞬時に思考を止めてしまう、恐ろしい言葉です。

少し考えれば、どんな場面でも、2択ではない、もっと豊かな選択肢がたくさんあるのです。パッと思いついた2択の中からではなく、より多くの豊かな選択肢の中からの方が、自分自身、納得した選択ができます。「切れるカードがたくさんある人」の方がより有利に、ゲームを進められるのです。

実は、仕事における能力開発とは、選択肢を広げることなのです。上司に企画を否定された後に、「論理的な力」があれば、論理で説明する選択肢が取れます。

また、日頃から先輩と良好な人間関係を構築しておけば、「先輩の加勢」という選択肢もあるのです。逆に言えば、論理的な力が無く、先輩との信頼関係が無い人は、いざという時にそのような選択はできないのです。

筆者プロフィール: 堀田孝治

クリエイトJ株式会社代表取締役
1989年に味の素に入社。営業、マーケティング、"休職"、総務、人事、広告部マネージャーを経て2007年に企業研修講師として独立。2年目には170日/年の研修を行う人気講師になる。休職にまで至った20代の自分のような「しなくていい努力」を、これからの若手ビジネスパーソンがしないように、「7つの行動原則」を考案。オリジナルメソッドである「7つの行動原則」研修は大手企業を中心に多くの企業で採用され、現在ではのべ1万人以上が受講している。著書『入社3年目の心得』(総合法令出版)、『自分を仕事のプロフェッショナルに磨き上げる7つの行動原則』(総合法令出版)他。