「人間関係なんかどうでもいい」と入社した初日から考えている新入社員は、そういないと思います。「いい仕事」もしたいですが、それ以上に「いい人間関係」ができることを期待して社会人生活をスタートします。
しかし、研修を通して多くの若手社員と関わる中で、どちらかというと、「仕事(業務)」ではなく、「人間関係」の悩みの方が大きい、そういう人がたくさんいるのが現実だと感じています。
20代の私も良い人間関係を作りたくて、「人に嫌われること」を何よりも怖れ、「相手に好かれるように」と常に心掛けて努力しました。しかしそれは……「しなくていい努力」だったのです。
トップセールスは「相手に好かれる考え方」をしない
「優秀な営業の先輩にそのコツをヒアリングし、そこから学ぶ」という研修に、30代になった私は運営事務局のメンバーとして参加。そこで、頭をハンマーで殴られるような衝撃をうけることになったのです。なぜなら、トップセールスのメンバーは、口々にこう発言しました。
「お客様には、絶対に好かれようとしない」、そして「その代わり、『お客様を好きになること』は、100%やる」と続けたのです。「えっ!……どうして好かれようとしてはいけないのでしょうか?」心の底から疑問に思った私は、素直にその疑問をぶつけました。
すると、あるメンバーは、少し悲しそうな顔で、私に諭すように、こう告げたのです。
「あなたはお客様から、『もらうこと』しか考えていないんだね……。仕事をください!さらに僕のことを好きになってください!って……」
「それは逆じゃないかな? お客様は、自分に一番与えてくれる人に、仕事をあげようとするんじゃないかな」
「もし品質と価格がまったく同じだったら、お客様は、『自分のことを好きになってくれる営業』と、『好かれようとはするが、そのくせ自分のことは好きにはならない営業』と、そのどちらから買おうとするかな?」
「だから僕は、逆に『お客様を好きになる努力』は100%したけどね」
自分の考えとは真逆の発想となるその言葉を聞き、当時の私は絶句しました。
相手を好きにならないと、人間関係はダメになる
これは、なにも営業だけの話ではありません。社内の人間関係でもまったく同じことが言えます。当時の私は、上司にも「好かれよう」としました。そして、上司を「好きになる」努力はまったくしません。
「教えてください!」「判断してください!」「同行して助けてください」そして「好きになってください!」、だけど「あなたを好きにはなりません!」「仕事以外の話は興味ありません!」……。
このように、好かれようとはするが、好きになろうとはしない人は、良好な人間関係を築きあげることはできないのです。逆に言えば、「相手を好きになる」ことは、誰でも、何のスキルもいらず、人間関係を円滑にする最強の武器かもしれません。
例えば、「自分のことを好きだ」という人に、嫌がらせはなかなかできないはずです。もし人間関係に問題を感じているのなら、自分が好かれようとしているのか、好きになっているのか、チェックしてみるといいかもしれません。