安定した業種といえば……やはり「食品」だな、食べることはこの先も無くならない。将来独立するなら……やはりベンチャー企業だな、身近で経営が学べるし。独立して研修講師になるなら……。

このように、「こうしたければ、こう」といったような、「絵に描いたようなキャリアデザイン」を持って、その実現を目指している人はいませんか? もちろん、全部が悪いわけではないですが、少し間違えてしまうと、これも一気に「しなくていい努力」になってしまうリスクもあるので要注意です。

  • 絵に描いたようなキャリアデザインを意識していませんか?

「安定している業種」の仕事が安定しているとは限らない

私自身は、「安定してる」と言われている食品業界の中でも、もっとも安定しているといわれる会社の1つである味の素で実際に働いていました。で、私は、そこで終始「安定」して働いたかというと、30歳で休職するのです。

「安定な業種」の「優良会社」には、自分で言うのもなんですが、当然、優秀な人材がたくさん集まります。そんな社内での競争はなかなか厳しいものです。優秀な人ばかりの中で、頭角を現すのはそう簡単ではありません。

また、安定している業種ということは、裏を返せば、「市場がすでに成熟していて、なかなか成長しない」ということでもあります。その中で、数字を伸ばすのは、これまたなかなか骨の折れることだったと記憶してます。

「皆が目指すキャリア」はレッドオーシャンの可能性

その後私は、独立してプロの研修講師を目指すことになるのですが、そんな私には、1つ、大きな懸念事項がありました。

「食品会社に入社して、営業、マーケティング、『休職』、総務、人事、広告部マネージャー」
どうみても私のキャリアが、「絵にかいた研修講師」のそれとは違うのです。

(コンサルティングファームも経験していないしな……)
(やっぱり、MBAとかを持っている講師の方が、声がかかるんだろうな……)

しかし、いままでのキャリアを偽装するわけにもいきません。ある種開き直って、プロの企業研修講師としてのキャリアに踏み出しました。

結果、これが大成功したのです。独立して2年目には、予想をはるかに上回る、年に180日を超える出講をしていました。

なぜこんなに順調なのか、自分でも訳が分かりません。

こうなると、逆に怖くなってきて、あるとき、新規に採用してくれた人事担当者の方に「あの……、私のようなキャリアの講師で、良かったのですか? コンサルティングファームだとか、MBA取得者とか、他にもっと立派な人もいますよね?」と思い切って尋ねてみました。

すると、その担当者は、
「堀田さんのように、事業会社のたくさんの現場で、豊富な実務経験をしてきた講師は意外といませんね」
「こう言ってはなんですが、『成功談』を話す講師はたくさんいますが、堀田さんのように生々しい『失敗談』を話してくれる講師って、ほんとうに貴重なんです」
と言うのです!

コンサルティングファーム出身の講師はたくさんいて、その競争は厳しい。MBAを取得している講師も、同様に激戦区です。

「絵に描いたようなキャリア」は、皆が目指します。だから特長は逆になくなるし、競争視点で考えれば、たくさんの人がそこに群がるのですから、いわゆるレッドオーシャン(血の海)で戦うキャリアになってしまうリスクも、そこにはあるということです。