「旨くて、安いラーメンが食べたい」。1杯1,000円を超える高級ラーメンも多いが、手軽で・旨くて・さらに安くラーメンが食べられるのなら最高だ。
全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター・井手隊長が、旨くて安いアンダー700円のラーメンを紹介する「井手隊長の700円以下で旨いラーメンが食べたい!!」、第100回の今回で最終回となる。2020年12月からスタートした「700円ラーメン」連載の4年間を振り返ってもらった。
「最近、高価格帯のラーメンが増えてきて、なかなか安く食べられるお店って少なくなってきていますよね。安くて美味しいお店を紹介する連載を始めたら、多くの人に喜んでもらえるんじゃないですかね?」
もともとこの連載は、そんな思いから生まれたものであったと記憶している。
確かに私が食べ歩きを始めた20数年前から比べると、ラーメンの価格は明らかに上がり続けているだろう。これは、ラーメンに限らずどんな食べ物にも言えることだろうと思うが、なぜかラーメンは価格が上がっていくたびに消費者側からの大きな落胆の声が上がっていた。そのうち「1000円の壁」という言葉が生まれるようになった。
これは、大衆食、国民食として広まってきたラーメンの歴史の中で、「ラーメンは安くなければならない」という固定観念が日本人の中に強く根付いているからである。ラーメンは決まった定義のない食べ物で、歴史とともに新たなラーメンがたくさん生まれてきた。特にこの20年間のラーメンの進化は目覚ましい。
その中で、一口にラーメンといっても、従来の大衆食的なあり方のものから、高級なものまでそのカテゴリの幅が広がってきた。しかし、「ラーメンは安くあるべし」という固定観念はなかなか変えることができず、ラーメンの適正価格問題は今でもメディアを騒がせ続けている。
正直、この1~2年は特に“700円以下”でラーメンを提供しているお店は限りなく少なくなってきた。チェーン店を除けば、古くからやっている老舗や町中華、地方のお店などに限られてきて、特に都心では700円以下のお店を見つけることはかなり難しい状況にある。
ここ数年は、明確に人件費の問題、食材費の高騰、さらには水道光熱費の高騰がぶつかり、ラーメンを700円以下で提供することは到底難しくなってきている。
一概に安く提供することが正ということでもなくなってきている状況の中、この連載を続ける意味合いが難しくなってきていると判断し、区切りの良い第100回で終了させていただくことにした。
今後も安価なラーメンがなくなることはないだろうとは思うが、これからはラーメンも二極化、三極化の時代に変わっていく。なかなかラーメンは安くなければならないという固定観念は変わらないが、業界の発展のため、そしてこれからも美味しいラーメンがたくさん生まれていく土壌を作るためには二極化、三極化は避けられない。
作り手はもちろん我々食べる側の人間の意識も変えていきたい。普段食べるラーメン、ご馳走として食べるラーメン、どちらもあって良いはずである。ラーメン界のさらなる進化とともにこれからを末永く見守っていきたい。