――『テレビ千鳥』はどのように始まったのですか?

それも加地さんに「会議室の前待つ作戦」をして、最初は千鳥さんと他の芸人も入れて座組バラエティみたいな企画書を持っていったんです。そしたら千鳥さんだけで「千鳥番組」って書いて出せって言われたんです。「この番組がテレ朝にあったら強い」って。深夜の枠で企画が通って、加地さん、作家のそーたにさん、中野俊成さんと僕と4人で話して、具体的に何をやるか決めました。千鳥さんは2人きりでロケをした方が面白いのでそこは守ろうと。で、誰かが「最近、都会の路地裏が気になるよね」と話して、すると中野さんから「窓の景色だけを集めた写真集がある。と教えていただいて。都会にある昔ながらの路地裏を歩いて、古い民家の窓から写真を撮ろうとなりました。その中で、千鳥さんらしくクセがあるものを見つけていくという内容に。

それで始まったのが『千鳥の東京路地裏大クセ探訪』です。それが『千鳥の路地裏探訪』として日曜午前の2時間番組になったから、千鳥さんの面白いところを全部使えたんです。月一で1日だけ8時間も街ブラアドリブロケをして、ボケですけど文句もいっぱい出て、千鳥さんとの関係性も深まりました。編集でクセのあるモノの写真を見せて、ツッコミをテロップで載せていたのですが、実はこの編集が今の『テレビ千鳥』でも残っています。

そこから『千鳥の大クセ写真館』や『テレビ千鳥』の特番になっていくんですけど、当時、千鳥さんは「売れそうで売れない病」だったから、なかなかレギュラーにならなくて。で、2018年12月の特番でノブさんが1,142万円の車を買ってくれたんですよ。元々は「安いのを買うわ」みたいな感じで、そのつもりだったから、スタッフも引いてました(笑)。その放送が局内投票で1年間の特番のランキング1位になってやっとレギュラーになったんです。

――『テレビ千鳥』の企画はどのように立てているのですか?

まだ誰もやってないことを僕は考えていますね。あと、成立しない企画です。普通では成立せんやろみたいなものを千鳥さんでやってみる。企画の打ち合わせは千鳥さんを含めてやるんですけど、収録の後だからみんな疲れているんですよ。大悟さんも言っていましたけど、もうなんでもええわと思って「はいはい」って言ったら撮ることになることもある(笑)。でも、それが馬力になっているんじゃないかと思います。成立しないものを成立させる。見たことのないこととか、千鳥さんも経験してないところがハネた時が面白いと思うんです。

――やっぱり千鳥さんだからこそできる?

そうですね。千鳥さんってスベってもいいんですよ。スベった後がさらに面白い芸人。それをつくったのは千鳥さんだと思います。この前「剛くんと夏菜子ちゃんに結婚祝いを勝手に贈る」企画をやりましたけど、久々に不安だったんです。でも大悟さんは「はいはい」みたいな感じで。それでいざ大悟さんが夫婦茶碗を出したら、ノブさんが「安(やし)い!」ってツッコんで(笑)。僕的には夫婦茶碗なんて軽く触れて「これはちゃうわ」くらいの感じかと思ったら、ノブさんがおもろくするんや!と思って。やっぱ2人ともおもろいのがすごいですよね。

  • 『テレビ千鳥』(毎週木曜24:15~)
    (C)テレビ朝日

ノブが言ってくれた「編集は全部山本くんに任せる」

――千鳥さんの魅力は?

大悟さんって男気もすごいし優しい。例えば、大悟さんが「でん悟ろう」に扮して理科の実験をする企画で、助手を連れてきてプシューってCO2を吹きながら登場するっていうボケがあったんです。その助手役を女性ADがやっていたんですけど、そのCO2の装置が重いから、歩いている途中で降ろしてしまった。でもそれは大悟さんが事前に「重かったらどこでもいいから降ろしていいよ」ってADに耳打ちしてたんです。それでノブさんは「なんでそんな場所からプシューってしてんねん」ってツッコんで笑いにする。優しおもろいんかいって。

あとノブさんが「Lemon」を歌った回。あのとき、ほんまにノブさんは手応えがなくてヘコんでたんですよ。「編集どうする?」って相談にも来たくらい。それで大悟さんに電話したら「俺はなんでもええから、ノブが嫌にならんようにだけしてくれたらええよ」って。ノブさんにも改めて電話したら「編集は全部山本くんに任せる」って言ってくれて、感動しました。それであの回がすごく話題になったから、ノブさんは「俺はスベったほうがええんかな…?」って(笑)

――僕の体感では半分くらい千鳥さんだけの回がある感じがします。

そうですね。そのバランスを加地さんはすごく気にされています。僕は2人だけの企画が好きなんでそれをずっとやりたいくらいなんですけど、そればかりだと視聴者に飽きられるし、ハードルも上がってしまう。ただ面白いだけじゃダメで、視聴者が面白い以外にどう感じるかを考えて「普段見ない層に向けて作る」「あえて力を抜いて見られる回を作る」など、加地さんの番組を終わらせないための考え方はすごく勉強になります。