――改めまして、この業界に入るきっかけは何だったのですか?

父がオペラの演出家をしていて、年に何回か公演を見に行くと、カーテンコールで父が出てくるんですよ。それで「裏方の仕事ってカッコいいなあ」と思ってたんですけど、オペラやクラシックを勉強する気はなくて。そんな中、高校生のときに『高校生クイズ』(日本テレビ)に友達と一緒に出たんですけど、都立の高校で僕の代で廃校になるのが決まってたんです。

それで、日テレさんが都内なのにそんな学校があるのは珍しいということで、フィーチャーされて。当時の麹町のスタジオに呼ばれて、結果は惨敗だったんですけど、MCの島田紳助さんと相原勇さんの間に座って、そこからテレビのスタッフさんを見てたら、結構なおじさんたちが若々しく動いてて、「こんな世界があるんだ」と思って、そこからすぐテレビの世界に行きたいと思ったんです。

――スタートの番組は何だったのですか?

日本テレワーク(現・NEXTEP)という会社に入って、最初は『どうーなってるの?!』(フジテレビ)でショッピングのコーナーをやってました。7分半のコーナーで、そこで商品をどうやったらきれいに見せられるかとか、当時は生放送で用意した商品を時間内に全部尺通りに紹介しないといけないとか、カメラの動き方を全部把握してカット割りを作ったりして、基礎が学べたんです。ディスプレイの仕方もADが考えていたんで、街に出て小物屋に入って、「これはディスプレイに使えるな」とか見つけたりしてました。そこから『料理の鉄人』(フジテレビ)に行って、今度は『どうーなってるの?!』の本編に行くという感じでしたね。

■VTR制作は有吉弘行との勝負

有吉弘行

――有吉さんとの番組が多いですが、最初の出会いはどこだったのですか?

『クイズ$ミリオネア』(フジテレビ)でディレクターをやっていて、あの番組って必ず「応援者」という存在があったんです。それで、太田プロの芸人さんが出ると、必ず有吉さんが来てくれていたんですよ。

――当時は再ブレイクの前でスケジュールがあるときだったんですね。

ただ、チャレンジするのが上島(竜兵)さんだったりするので、なかなか早押しで勝てず(笑)、結局センターシートで問題に挑戦することができないから、有吉さんに毎回来ていただいても映らないので、帰り際に「いつもすいません」って言ってたんですね。有吉さんは腰が低いので「いえいえ」って言って帰っていかれるんですけど、その結果『ミリオネア』の最多出演は有吉さんだったんですよ。

――積み重ねていたんですね(笑)

最後はブレイクされて、センターシートにも座って、みのもんたさんに「実は僕、最多出演なんです」って話をされてました。もちろんあだ名も付けてましたね。たしか「油トカゲ」だったと思うんですけど(笑)

それと、テレビ東京でくりぃむしちゅーの有田(哲平)さんとネプチューンのホリケン(堀内健)さんの『アリケン』という番組があって、それに有吉さんをお呼びしたら「こんなに毒舌な人がいるんだ!」って超面白くて。どんなテーマを掲げても論破するし、こんなこと言ったら、ご本人は嫌がるかもしれないですけど超常識人だからバランス感覚に優れていて、僕らが言語化できない心の奥にあるちょっとした、「ん!?」と気になることを明確に言葉にしてくれるからスッキリするんですよね。それと、普通のタレントさんだったら、本番前に「今日失礼なこと言うかもしれませんけど、よろしくお願いします」って相手に言う人も多いんですけど、それをやらずに本番でけしかけるんです。この緊張感というか、セメントマッチというか。でも、最後にあの笑顔でみんな許しちゃう。それで、蛭子(能収)さんや三又(又三)さんやグラビアアイドルがボロクソに言われて、最高に面白かったんですよ。

――そこから、どのように『ダレトク!?』につながっていくんですか?

『アリケン』以降から有吉さんと、ぜひ一緒に番組をやりたいと思って、2011年に『世の中のデマを一挙撲滅 特命任務DEMA-TRIX』という番組が始まったんです。有吉さんと、ほんこんさんと、磯野貴理子さんの3人で関西ローカルで細々とやってたんですけど、それが好評で全国に上がって、『ダレトク!?』という形になるんです。

この番組で有吉さんにはっきり言われたんですけど、VTRを見ているとたまにご存知の情報が出てくるときが当然あるんですよ。大抵のタレントさんは何も言わず流してくれるんですけど、有吉さんは「あー俺これ知ってる。この先こうなるんでしょ?」って全部言うんです(笑)。「何で言っちゃうんですか?」って聞いたら、「俺、『ダレトク!?』だけはそういうの許したくないんです」っておっしゃって。でも、有吉さんは読書家だし、テレビもよくご覧になってるし、いつ時間があるんだろうって思うくらい色々なことをご存知なので、本当にネットを遮断してほしいくらいでした(笑)。だから僕らはそれを楽しむようにして、「このオチ知ってる」って言ってるのもワイプで使ったんですよ。結果その通りのオチになるときもあるし、逆に裏切るときもあったりして。こうやってVTRを作るときは、まず有吉さんとの勝負になるんです。有吉さんを笑わせないと視聴者も笑ってくれないというのがあるので。

――『おーい!ひろいき村』(フジテレビ)のドミノ企画も大好きでした。ドキュメンタリーとして、人間の本性が出るじゃないですか(笑)

僕はドミノ担当ではなかったですが、奇跡のハプニングがいっぱいあって、僕らも涙流して笑いながら見てました。芸人さんたちは、ドミノの仕事が入るのを本当に嫌がっていて(笑)

――拘束時間がすごいでしょうし…。近年では『有吉の夏休み』(フジテレビ)などもご担当されてますよね。

『アリケン』『ひろいき村』と同じ制作会社のチームがやっていて昔からお付き合いがあるのでお声がけいただき、1ディレクターとして参加しています。初年度から「本当にこんな楽しい番組あるのかな」っていうくらい、ロケ中に笑いすぎて必ず腹筋がつります。基本的に皆さん自由にやっていただいて、当然長くカメラを回すので莫大な素材量になるんですけど、ずっと笑いながら編集してますね。だから、泣く泣く落とすところも本当に多くて、いつも惜しいなと思ってしまいます。

――本当に皆さんが素の表情で、見ていると大勢で旅行に行きたくなります。

皆さん喜んで来てくれるので、「私、来年も『有吉の夏休み』に行きたい!」って、本当にいろんな人が出たがってくれます。

――ドミノとは正反対ですね(笑)