――今後、こういう番組を作っていきたいという構想はありますか?

数年前の僕の頭の中って、すごい真面目に苦労して根詰めしたものをギュッと出すのがテレビの番組作りだと思い込んでいたんですよ。そうじゃなきゃダメだと。もちろんそうやって作らないといけない番組もたくさんあります。でも、僕が観て育った番組ってそうじゃなかった。昔のバラエティって、例えばとんねるずさんの番組とか、めちゃくちゃしてたなと思って。それは車を壊したり爆破したり、今よりコンプライアンスゆるかったよなぁとかそういう話じゃなくて、今よりもっといい意味での“ノリ”で作ってたんだろうなあと。当時の先輩方からしたら、いやしっかり考えてたよって言われるかもしれないですけど、少なくとも小学生のときにテレビを見ていた僕はそう感じてたし、その“ノリ”にワクワクしていた。

そういう世界に憧れてテレビ業界に入ったつもりなのに、いざ自分がテレビ番組作りをするうちに、いつの間にか「テレビは大人がしっかりと考えて作らないといけないもの」「誰もがわかりやすく理解できるように作るべきもの」「ノリで作っちゃダメ」みたいな考えに凝り固まってしまっていた。そこには時代の流れに沿って、テレビに求められるモノが変わってきていたりとか、いろんな要因があると思うんですけど。

同じ世代のある芸人さんと話したことがあって、小学生の頃テレビの中でとんねるずさんが「おい!」ってスタッフさんを呼んだりするのを観ていて、その芸人さんはそんなかっこいいとんねるずさんに憧れて芸人さんになった。僕は「おい!」って呼ばれてるスタッフさん面白そうだなと思って裏方になった。何が言いたいかというと、きっと演者さんとかスタッフさんの境界線なく魅力的な雰囲気が番組全体から出てたんですよね。だから僕も、“あの番組の一員になりたい!”と思われるような、そんな雰囲気が伝わる番組を作りたいです。

――そういう意味では、今まさに『かまいガチ』で理想的なことができつつあるという感じでしょうか。

そうですね。今、それに向かっていってる感じです。これが評価されるようになるといいなと思います。

■テレビ・配信の違いは「あんまりないです」

――最近はYouTubeなども盛り上がっていますが、そんな中でのテレビの役割というのは、どう考えていますか?

ん~難しいですね…。実際、バラエティを作るということに関して言えばYouTubeでもテレビでもどっちでもいいと思うところもあるので、役割と言われると何だろうと思っちゃいます。ありきたりですが、数多くあるメディアの中でも情報の確実性という意味ではテレビってまだ信頼されているメディアだとは思うので、スポーツとニュースがテレビの役割なんですかね。

僕はバラエティ番組が好きで、子供の頃に見ていたのがテレビだったからたまたまテレビにいるだけで、小さい頃にYouTubeが流行ってたら今YouTubeを作ってるんじゃないかとも思います。

――『かまいガチ』はTELASAでオリジナルコンテンツを配信していますが、そこもあまり違いを意識して制作していないのですか?

あんまりないですね。細かいことを言うとテレビは尺が決まってるので、カットしようと思った1ウケをTELASAにはそのまま入れるとかですかね。それでTELASAのクオリティが下がってるわけでもなく、そのままテレビで流しても全く遜色ないものを作ってるつもりです。

――ご自身が影響を受けた番組を挙げるとすると、何ですか?

たくさんあって選べないですが、特に影響を受けたのは小学生のときだと思うので『めちゃイケ』と『とんねるずのみなさんのおかげでした』(いずれもフジテレビ)の2本ですかね。共通しているのは、先ほども言ったスタッフを巻き込んで現象を起こしてる感じ。チームとして一緒に作ってる感じが好きだったんだと思います。“内輪笑い”は多くの人には伝わりづらいからあんまりよくない、みたいな風潮ってちょっとあるじゃないですか。それを地でやっていたのに、環境も立場も全然違う田舎に住んでた小学生の僕が理解できて笑ってたってことは、ちゃんと面白かったんですよね。

――ちゃんと視聴者も巻き込んでいたんですよね。

そうですそうです。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…

ABCの芝聡さんです。10年くらい前に『戦うお正月』というABCとテレビ朝日が合同で作る年始特番で一緒になりました。「楽しそうに番組を作っているなー」と思うプロデューサー・ディレクターの1人で、大阪から上京してきて完全に東京に染まった1人でもあります。早く結婚すればいいのに(笑)

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • ABCテレビ『ポツンと一軒家』『DRAGON CHEF』プロデューサー・芝聡氏