• 『有田Pおもてなす』(毎週土曜21:50~) (C)NHK

――他に、ご自身の担当された番組で特に印象に残ってるのは、何ですか?

僕は『くりぃむナンチャラ』がすごく楽しくて。「ミニスカート陸上」とか「『もうええわ』を言わない相方たち」とか「クイズ!技術さんが考えました」とか、我ながら面白いなあと思う企画を、小田(隆一郎)さんや土井(功輔)Dが面白がって選んでくれて。でも、その先に有田(哲平)さんがいるのが大きかったですね。

芸人のときに、くりぃむさんがMCをやっていた『笑金(笑いの金メダル)』(ABCテレビ)に出させてもらって尊敬してましたし、今『有田Pおもてなす』(NHK)では有田さんとの打ち合わせに出席してるんですけど、ここですごくいい経験をさせてもらってます。MCクラスのタレントさんとの打ち合わせって、まぁ緊張感があるんですよ。ご自身の番組だから背負うものがあるし、お笑い番組なんてこっちがちょっとでも詰めきれていなければ指摘されちゃうし。そうするとスタッフ内での会議の緊張感が変わるんですよ。藤井さんはずっとこれをやってたんだなあと、今になって思いますね。だから、有田さんにはとても鍛えてもらってます。仕事のときはすごく厳しいんですけど、打ち上げとかで飲んだらめちゃくちゃ優しいっていう、すばらしい方ですね。

――印象に残るタレントさんは、他にもいらっしゃいますか?

ラッキーなことに元芸人なので、まあまあ早い段階で世に出る前の芸人を知れるんですよ。僕が作家になってすぐの頃、芸人がいっぱいいる花見に呼ばれたんですけど、そのときにまだ全然有名じゃないオードリーの若林(正恭)がいて。当時、おぎやはぎさんが『くりぃむナントカ』で弾けてるときで、若林を見て第2の矢作(兼)さんになるんじゃないかなと思ったんです。それをずっと思っていて、さっき言った『ハードル・プードル』で、せっかく新しいディレクターの番組をやるならということで、まだMC経験の少なかった若林にやってもらいました。ここで、吉村(崇、平成ノブシコブシ)と一緒にやってた北野と出会って、『しくじり』のチームができるんですよ。

あと、麒麟の川島(明)もそうですね。ずっと面白いなと思ってて、『バカリズム御一考様』(テレビ朝日)って大喜利の番組を作ったとき、「川島を使いましょう!」って入れてもらったら、やっぱり面白いんですよ。ずっと『IPPONグランプリ』(フジテレビ)に出てなかったと思うんですけど、あるとき優勝してすぐ「ずっと面白いと思ってたから自分のことのようにうれしい!」ってLINEしましたもん(笑)。でも、当時はMC案で名前を出しても「川島じゃ弱いかなあ」っていうのがテレビ局の意見だったんですよ。それが見てくださいよ、朝の顔になりましたからね! ほら見たことかってことです。

■とろサーモン久保田に“英才教育”

とろサーモン・久保田かずのぶ

――これから、次の若林さん、川島さんになりそうな注目されている芸人さんはいらっしゃいますか?

今は年取っちゃったんでなかなか若い子に目が行かなくて…。ただ、とろサーモンの久保田(かずのぶ)は、作家人生においてかなり大きな存在なんですよ。『人志松本の○○な話』(フジテレビ)という番組をお手伝いしていたとき、河本(準一、次長課長)さんが自分の好きな芸人を紹介する企画で、とろサーモンを出したんです。それで打ち合わせに行って収録に出てもらったら、うまいこといって。その後、久保田からDMで「同じ匂いがしました」って来て「なんやこいつ!」って思いながら後日飲みに行ったら、こんなに面白いやつがいるのか!って思ったんですね。

放送作家って、M-1みたいに優勝とかないじゃないですか。ちょうど、自分の中で目標がほしいと思ってたときだったんで、「こいつをゴールデンの番組に当たり前に出れる世の中になったら俺の優勝と呼ぼう」と決めて、その日から僕による“英才教育”が始まったんです(笑)。もう毎日くらいLINEで「ミッション」と言って、僕がキャスティングをハメられる深夜番組があったらそこに呼んで「この番組のお前の立ち位置はこうだから、こういうことをやりなさい」と伝えたり。

――マンツーマンの特訓ですね。

でも、ネタには一切口出ししませんでした。そんな日々を送って、とろサーモンがM-1のラストイヤーで決勝に行ったんですよ。ここまで来るのに何年もかかって、しかもそこで優勝するわけなんです。そしたら、優勝後の記者会見で、「この喜びを誰に伝えたいですか?」って聞かれて、村田(秀亮)は「お母さんです」って感動的なこと言うんですけど、久保田は「樅野さんです」って。でも誰も知らないし、ボケなのかも分かんないし、変な空気になって俺、名前出されてスベってるんですよ(笑)

――(笑)。でも長年の成果が出て、感慨もひとしおだったのではないでしょうか。

そのちょうど1年後にあの事件が起きて、「ゴールデンの番組に当たり前に出れる世の中に」っていう目標は終わるんですけどね(笑)。でも、今『クセスゴ(千鳥のクセがスゴいネタGP)』(フジテレビ)にも出てもらって、すごく感慨深いものがあります。