• 『鶴瓶・ナイナイ 元祖英語禁止ボウリング』(ABEMAプレミアムで配信中)より (C)テレビ朝日

――現在、コンテンツ編成局次長という立場ですが、1月にABEMAで配信された『志村&鶴瓶のあぶない交遊録 大最終回スペシャル』で、久々に制作現場を担当されましたよね。この番組が成立したのは、志村さんが亡くなったことがきっかけだったのですか?

そうです。毎年お正月にやっていたのが諸般の事情で2020年が1回お休みになって、どこかで再開したいなと思っていたんです。そしたら、志村さんがああいうことになられて、「最後にちゃんとやりたかったなあ」と思っていたところに、鶴瓶さんが「このまま終わるのは志村さんにも申し訳ないし、自分の中でもスッキリしないから、どんな形でもいいから最終回をやりたい」とおっしゃって。その少し後に、今度はナイナイさん側からも「やりたいです」という話を頂いて、そうであればちゃんと形にしようということで、志村さん側にもお話をした上で、やらせていただきました。

――改めて「英語禁止ボウリング」のオトナな“ご褒美”を見ると、よく今まで地上波でやってたなと思います(笑)

やっぱりそう思います?(笑)

―――大悟さんは「まだこんなバカみたいなことできるんだ」、鶴瓶さんも「ようアホなことやってたな」とおっしゃっていましたし(笑)

今までだと、何をやっても最後にチュッとやればご褒美の形になれたんですけど、コロナでチュッができなくなって、そうなると演者たちがご褒美と感じられるものって何だろうというところから考えていくんですよ。

――それで地上波が難しいから、ABEMAになったのですか?

実はそうではなくて、ABEMAさんが「うちがやりますよ」と手を挙げてくださったんです。だから、ABEMAだからあそこまでできたというのは後付けで、面白いものをちゃんと作って配信したいという思いで企画を練っていったら、ああなったんです。結果的にOAしてみたら、「これはABEMAで良かったね」という感じです(笑)

――番組内の随所で「志村さんだったらこうしてたなあ」と、志村さんの話題が自然と出てくるのが印象的でした。皆さんの中で大きな存在だったということが伝わってきます。

そうですね。鶴瓶さん、ナイナイさんはもちろんですけど、大悟さんも上島(竜兵)さんも志村さんに対する思いがすごく強かったので、見ていて志村さんが本当にそこにいるような感じでできたらと思って作りました。最後に、全員感想を言って終わって、「さよなら~」と言った後に、鶴瓶さんが手を振りながら上を向いていたんです。たぶん、鶴瓶さんは「志村さん、ちゃんと最終回やりましたよ」って報告してくれたんだろうなあと思って、良い回だったなと思いました。

  • 『鶴瓶・ナイナイ 元祖英語禁止ボウリング』(ABEMAプレミアムで配信中)より (C)テレビ朝日

志村さんと言えば、『志村&所の戦うお正月』という特番もやってて、志村さんとは毎年年末にご一緒させていただくという形だったんです。あの番組も僕が『ロンドンハーツ』を離れて、これからディレクターを続けるか、プロデューサーになっていくかという分岐点のときにディレクションを任された番組なので、思い入れがありますね。

■エンドロールに名前を残し続けた

――今回の『あぶない交遊録』もそうですし、『くりぃむナンチャラ』にも昨年9月の最終回まで、エンドロールの「構成」に、2015年に亡くなった放送作家の渡辺真也さんの名前がずっと入っていましたよね。そこへの思いというのは、藤井さんにとって大きいのでしょうか。

僕は本当に、渡辺くんのおかげで面白いものが作れたと思ってるんです。北本かつらくんも偏(かたよ)ってますけど、渡辺くんも本当に偏っていて、お笑い以外に全く興味がない(笑)。あと、真実を知りたいということに関する興味がものすごくある人で、『シルシルミシル』で担当ディレクターの取材が甘かったときに、真っ先に「足りないでしょ! そんな訳ないでしょ!」と言ってくれたのも彼でしたし。僕に“共犯者”がいるとすれば、渡辺真也くんとくりぃむしちゅーだと思います。

だから、渡辺くんが考える企画のアイデアの足元にも及ばないかもしれないけど、『くりぃむナンチャラ』は『くりぃむナントカ』のテイストを残している番組として、彼の名前をクレジットしたかったんです。『あぶない交遊録』って、前は渡辺くんしか作家がいなかったんですよ。僕と渡辺くんだけでほぼ作っていたんです。体調がすぐれなくなったときにかつらくんが入って交代するんですけど、『あぶない交遊録』もそれくらい、彼に頼っているところがありましたね。

――信頼が厚いんですね。

僕からいろいろ依頼したことがあったんですけど、『シルシルミシル』が最後のほうにレームダックになって数字がなかなかうまくいかなくて、いろんな企画を考えるようになっていたとき、チーフ作家の渡辺くんに「これで数字とれると思う?」と聞いたんですね。そしたら、彼は「数字がとれるかどうかは分かりません。僕は面白いか面白くないかしか分からないんです!」と言ってきて、「チーフ作家のくせに数字とるか分かんないってキレ方なんだよ!」と思ったんですけど、それがやっぱり渡辺真也くんなんですよね。