『貴ちゃんねるず』

――『貴ちゃんねるず』の視聴者層はどこが多いのでしょうか?

始めたばかりのときは、実は若い男の子たちが多かったんですよ。そこから、30代から40代、50代も多くなってきましたね。全部男です(笑)

――いわゆる“とんねるず世代”より若い層が見て、新たなファン層の開拓にもつながっているんですね。

タカさんは野球が好きで、「貴ちゃんスポーツ2020」って企画もやってるので、スポーツ好きな子たちが見てるんじゃないかなと思います。僕は50歳ですし、20代にウケる笑いなんて作れないですから(笑)

――そこは、幅広い世代に刺さる魅力を石橋さんが持っているということなんですね。

ここまでトップスターで走ってきた人ですからね。

――『貴ちゃんねるず』の今後の展望は、どのように考えていますか?

特にないですよ(笑)。このまんま、もう面白いものを作っていくだけです。チャンネル登録数とか再生回数っていうのは、全く気にしてませんので。好きな人が思い切り笑ってくれるものを日々作って、1年でも2年でも長くいろんな人に見てもらえればいいだけなので、登録者200万だとか、本当にそんな目標ないんですよ。現場でも本当にノーストレスでやってるので、つまんなきゃ配信しないし、面白かったら配信するし、みたいな。テレビ局だとそんなことしたら大問題になりますけど、そういうところに縛られてないのが非常に良いですね。

――マッコイさんとしても、新たな面白い場所を見つけたという感じでしょうか。

そうですね。僕らのような制作会社の人間は、テレビ局の局員と違って、枠があるわけじゃないんですよ。「そこの枠をください」と局員に頭を下げてもらうんですけど、その作業が僕は苦手な人なんで(笑)。でもYouTubeは、自分が面白いと思ったら自分で勝手に枠を作れるんで、もう本当に面白い場所を見つけましたよ。再生回数が上がれば広告が付いてお金が入ってくるので、自分の手柄次第じゃないですか。だから、踏ん切りがつくというか、覚悟が決めやすいんです。テレビだと、見えない視聴率に首締められて、どんどんどんどんつまんないものを作ってしまうドツボにハマっていってしまう。

――木梨さんもネット配信ではGYAO!の番組(『木梨の貝。』)をやられている中で、どうしても『貴ちゃんねるず』とのコラボというのを期待してしまいますが…。

ん~、ここでコラボするというよりも、もっとあの人たちが輝く、ふさわしい派手なステージがあると思いますね。やっぱりスーパースターですから。

■『みなさん』で学んだ企画の極意

――改めて『みなさん』を長年制作されて学んだことは何でしょうか?

「面白い企画は1行で分かる」「企画や考えを幕の内弁当にしない」ということを学びましたね。名企画っていうのは1行で分かるんですよ。「全落オープン」「男気ジャンケン」「きたな美味い店」「2億4千万のものまねメドレー選手権」と、名企画ほどシンプルで、企画書にしたら1行で分かる。やっぱりダメな企画ほど、いいところだけ重箱に詰めて記憶に残らなくなっちゃうんですよ。『貴ちゃんねるず』でももちろんそうしてますし、これはブレることがないですね。

――サムネイル画像を見ただけで分かりますもんね。

自分が感じて見つけた方程式なので、死ぬまで信じてこの理論で闘っていこうかなと思ってます。あと、普通の会話から考えた企画のほうがいいなというのもありますね。机合わせて会議室で頭抱えながら考える企画より、酒飲みながら、女口説きながら話してるバカみたいな会話の中に、実はヒントがあったりするんだなと思いました。

「男気ジャンケン」は、普通にタカさんと飯食って「支払いはジャンケンで」っていうところから始まったし、「買うシリーズ」も僕が札幌で100万くらいの時計を買ったところから始まってますし。会議室で頭固くして考えるよりも、そういうプライベートの友達やパートナーや彼女とか、お父さんお母さんの会話から生まれるほうが、名企画になりやすいんじゃないですかね。

  • とんねるずの石橋貴明(左)と木梨憲武

――「全落オープン」はどんなきっかけで生まれたんですか?

あれは作家の小川(浩之)さんと「落とし穴で面白いことできないかな」と話して、落とし穴に落ちるさまを「バーディー」とか「イーグル」とか「ホールインワン」にするゴルフパッケージにしたら絶対面白くなると思ったんです。小川さんと俺で1分くらいで考えて「面白い! 見えた!」って。面白い企画って、本当にシンプルなんですよ。

「2億4千万のものまねメドレー選手権」もそうですよ。タカさんの誕生日で(バナナマンの)日村(勇紀)くんがずっと郷ひろみさんのものまねをやってたのが面白くて、ものまね芸人に1曲縛りでやってもらおうと考えたんです。

――本当にその場の“ノリ”ですね。

よく、作家さんが全部仕切る番組もあるんですけど、それはダメですね。責任を取るのはディレクターなんですから、ディレクターは作家さんをあくまでも自分の右腕と思って、責任を全部取るつもりでやらないと。作家さんのことばかり聞いていたら、絶対いい番組にはならないです。作家さんはディレクターが何をやりたいか、その企画に対して「こういうことをやったら面白いかもよ」ってアドバイスをしてくれればいいんですよ。

だから小川さんとか、鈴木工務店とか、佐藤(俊明)とか、(酒井)健作とかは、僕が考えたものを膨らませてくれるんで、好きなんですよ。番組のケツを拭くのは総合演出なんですから。