――演者さんのお話をしていただきましたが、作り手のほうですごかったと印象に残っている人を挙げるとすると、いかがですか?

やっぱり星野淳一郎さんですね。今の『27時間テレビ』の企画書を横澤(彪 ※『オレたちひょうきん族』『笑っていいとも!』初代プロデューサー)さんに初めて出したのが高校生のときですよ。日テレの『24時間テレビ』に対抗して笑いだけの24時間をやるべきだって、当時ADでバイトしてた学生が持っていって、そのときは「何を言うてんねん」って感じだったのに、何年後かに彼がディレクターになってすぐくらいに、横澤さんがやることになるんですよね。そこで、まだ25~26歳の若造が、ビッグ3(タモリ、ビートたけし、明石家さんま)とかウンナンとかダウンタウンとか所(ジョージ)さんとか(片岡)鶴太郎さんとか、猛獣たちを生放送で仕切っていくんですよ。片岡飛鳥(※『めちゃ×2イケてるッ!』総監督)が初めて『27時間テレビ』をやるときに、星野さんがやった1回目を全部見たって言ってましたから。何をやって何が面白かったのを全部書き出して研究したらしいです。

それもすごいですし、『夢で逢えたら』のブリッジ(※コーナーとコーナーをつなぐ映像)もすごいし、オープニングもサザンがかかってカッコいいんですよ。1分半もあって「お笑いの番組でそんな映像毎回1分半も流す!?」って思ってたんですけど、それがおしゃれで、フィルムで撮るというこだわりもすごかった。

あと、『ごっつ』を始めて何年か経ったときに、裏の『(天才・たけしの)元気が出るテレビ!!』(日本テレビ)を全然抜けなかったんですよ。「こんなに世の中で『ごっつ』が面白いことになってるのになんで抜けないんだ」って僕はずっとボヤいてたんですけど、そのときに飲みに連れてくれた星野さんに「悔しいですね」ってぶつけたら、「これ、ブームになっちゃダメなんだよ。ブームになったら終わるから、ブームになる前に止めるんだよ」と言われたんです。当時、星野さんもまだ30歳くらいですよ? しかもテレビがグングンいってる時期で。

――その年齢ですでに達観していたんですね。

「ブームになる前にギリギリで止めて、もう1回戻すための企画をやるんだよ。その微調整をしながら、何かの時に迫力あるもので『おっ!?』と思わせるスペシャルをぶつけて、番組を維持する」って言われて。当時は「何を言ってんねん、このおっさん」って思いましたけど、今、僕がこの年齢になってやっと分かりましたね。

■誰にも真似できないナスDのスタイル

今の人で言うと藤井健太郎(※『水曜日のダウンタウン』演出)も優秀ですよね。あと、僕はテレ朝の友寄(隆英)も好きですね。

――ナスDですね。

今、深夜で出る側になってますけど、『(いきなり!)黄金伝説。』で現場に行くと、演者が何も食べなかったら彼もずっと食べなかったんですよ。その徹底ぶりに「アホやな(笑)」って思ったんですけど、最近ヒマラヤにいく特番を見たら、いいコメントするんですよね。やっぱり演者って“行かされてる”んですけど、彼は“本当に行ってみたい”んですよ。だから、コメントが生き生きしてるんですよね。裏方が出る演出って、日本だと叩かれたりするんですけど、あそこまでやったら誰も真似できないじゃないですか。だから、友寄はすごく優秀な演出家だと思ってるんです。

特に今、YouTubeやSNSがある中で、自分が商品となって自分で撮るというコンパクトなスタイルで、地上波でもどこでも流すことができる。本来なら、一本足打法であるテレビ局の演出家が、どこにでも持っていけるコンテンツが撮れるし、自撮りで行って、しかも究極一人っきりで誰も見たことのない映像を撮れる可能性もあるという点で、すごいと思いますね。

――テレ朝の米田裕一さん(※『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』『帰れマンデー見っけ隊!!』『10万円でできるかな』『家事ヤロウ!!!』演出)は、『黄金伝説』のときは、友寄さんがちょっと画面に見切れる(=映り込む)だけですごい怒ってたのに、今は出役になるという、その切り替えがすごいとも言っていました。

そうですね。でも、僕も『上々』のときも『笑ってはいけない』のときも、絶対見切らないようにしようというのは言ってるんです。裏側が見えると「そんな状態でこのタレントがやってるのか」と冷めてしまうんで、それが分かってしまう景色を全部省きたいんですよね。CCD(カメラ)や下をはってるコードも、僕はできるならCGで消したい。結構そこにこだわらないディレクターがいるんですよ。でも、僕は嫌なので、友寄の気持ちはすごく分かります。タレントが没頭している画で集中させないとダメだと思うんですよね。

■放送作家でも「こんな画がほしい」

――お話を伺っていると、高須さんはかなりディレクター目線も持って番組作りに参加している印象を受けます。

そうなんです、画のことを言っちゃうんですよ。『めちゃイケ』でそんな話してると、飛鳥に「高須さん、画撮りは任せてください!」ってピシャっと言われて、「あ、ごめんごめん」って(笑)。でも「こんな画がほしい」「こんな画があったら面白いやん」って思うのは、そのほうがやっぱり伝わるからと思って言うんですよね。

――セクショナリズムにならずに、番組を面白くしようという気持ちが出てしまうと。

そうなんですよ。だから、「こんな画作りで、こんなセットで始まりたい」という考えが、自分の中であるんですよね。会議でもそういう話を言っちゃうから、ディレクターたちにはウザいと思われてるかもしれないですね(笑)。最近はできるだけ言わないようように心がけています(笑)