――芦田さんは、想定していた“博士ちゃんとサンドさんの橋渡し”以上の役をこなしているんですね。でも、進行を全部任せる訳ではないとは言え、“子供が先生役の授業”を番組として面白くしていくのには、苦労も多いのでは?

そこはサンドウィッチマンさんの存在がとても大きいです。誤解を恐れずに言うと、サンドさんはバラエティのさまざまな能力を全て兼ね備えている人たちではないと思うんです。芸能ネタはめっぽう疎いですし、食リポは毎回「おいC」と「ウマーベラス」しか言わない(笑)。でも、相手(ゲスト)の良さを最大限に引き出すという能力は、ズバ抜けてると思います。

子供たちに対して、サンドさんはどんなことも否定しないで受けとめるので、子供たちがどんどん気持ちよくなって加速していくんですよ。最近「優しい笑い」みたいなことがお笑いのテクニックとしてトレンドになっていますが、サンドさんはデフォルトで備わっていると思います。

例えば、信号機が大好きな博士ちゃんが、本物の巨大な信号機を買って部屋の中に置いてるんですけど、普通ならそのことをツッコんだり、イジたっりすると思うんです。でも、サンドさんはめちゃくちゃ大笑いしたあと、「いいなーそれ」「どうやって遊ぶの?」って次の話につながっていくんですよ。子供たちは、おそらく周囲から「なんでそんなもの集めるの?」って疑問を投げかけられてきたことが多いと思うんですけど、サンドさんは1回全部受け入れてくれるんで、その子たちならではの面白いところがどんどん出てくるんです。信号機博士ちゃんは「普段は絶対見れない、青信号を点滅させて遊んでます!」って答えてました(笑)

――そこが、サンドさんの高い好感度の理由なのでしょうね。

そうかもしれないですね。普通は、「優しい」と「面白い」って共存しづらいと思うんです。笑いって、どうしても斜めに見たり、意地悪な目線だったりすることが多くて、ちょっと優しいことを言うと冷めてしまう空気があると思うんですけど、サンドさんは相反しそうな「優しさ」と「面白さ」が、ちゃんと共存できる稀有なタイプの芸人さんだと思います。

『博士ちゃん』でのすごく好きなシーンがあって、外国に詳しい博士ちゃんが「ガーナのお葬式は、棺桶を亡くなった方が生前好きだったものの形にする」と紹介してくれたとき、サンドさんがその子に「君は何が好きなの?」って聞いたら、「枝豆です!」って答えたんですね。そしたら、その子に「枝豆、棺桶にしたらめちゃくちゃ寝やすそうでいいじゃん!」って返してすごくスタジオがウケたんですけど、伊達(みきお)さんがすぐに「でも、死なないでくれな」ってサラっと言ったんです。その時、スタジオはハッと我に返るわけではなく、そのまま笑いに包まれてて、博士ちゃんもニコニコしながら「はい!」って答えてて…。

「死なないでくれな」って言葉は、言う人によっては周りが引いてしまったり、偽善っぽく聞こえちゃうとこともあると思うんですけど、あのやり取りが成立する人ってなかなかいないんじゃないですかね。サンドさんが持つ、そもそもの人としての「優しさ」は、笑いと共存してもぶつかり合わないんだと思います。

■過酷ロケでも満足する俳優・女優たち

――『帰れマンデー』でも、サンドさんの優しさを感じることはありますか?

サンドさんと話すと分かると思うんですけど、2人ともめちゃくちゃゲラなんですよ。スタッフの話とかでも声上げて笑ってくれる。あんなにネタが面白い人たちがあれだけ笑ってくれたら、気持ちよくなっちゃいますよね。それでいてADのビックリするくらいオチのない話も聞いてくれる…。

もちろんサンドさんは狙ってる訳ではないでしょうけど、番組に来たゲストの方はそんなサンドさんとの心地いい会話をずっと楽しんでる感じです。特に、1日かかる過酷なロケに緊張していらっしゃる俳優さんや女優さんが、めちゃくちゃ自分のカラーを出せて、毎回ロケが終わるときにすごく満足そうに帰っていくのが印象的です。

――毎回あんなに過酷なロケなのに!

すごく特徴的なのは、『帰れマンデー』は出てくれたゲストのファンの方々から「今までで一番素顔が出てた! 良かった!」と言ってもらえることが多いです。King & Princeの平野(紫耀)さんが出たら「平野くんのいいところが全部詰まってました」とか、松田龍平さんが出たら「私たちが一番好きな松田龍平が出てました」とか、そういう声を頂く機会が本当に多いです。

――『博士ちゃん』の話に戻りまして、これまでいろんな博士ちゃんが登場していますが、親御さんの共通点などはありますか?

皆さん子供と一緒にそのジャンルを楽しんでらっしゃる方が多いです! 親御さんも博士ちゃんくらい詳しかったりします。例えば、お城博士ちゃんのお母さんは、博士ちゃんが架空の難攻不落の城の図面を書いて、「お母さんが武将ならどう攻める?」みたいな全て架空の話にも、「ここに5千の兵を置いて、ここから攻めるかなぁ」って何時間も語り合ってたり。マイナー魚博士ちゃんが「どうしてもコバンザメが食べたい」と言ったら、笑いながら弁当にコバンザメの唐揚げを入れてあげたり。

あと共通点として、みんな“漢字”をすごく丁寧に教えてらっしゃいますね。大人用の専門書を読む子が多いからだと思いますが、博士ちゃんの漢字好き率はとっても高いです。