注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、各局で数々のバラエティ番組の構成を手がける飯塚大悟氏だ。
YouTubeの台頭に加え、ここにきて新型コロナウイルス対策に伴う収録中止と、テレビをめぐる環境は厳しさを増しているが、テレビ局員ではない放送作家という立場から、現状をどのように見ているのか――。
【このインタビューは3月8日に実施し、その後追加取材を行いました。】
■テレビのあらゆる要素が詰まっていた番組
――当連載に前回登場したテレビディレクターの水口健司さんが、飯塚さんについて「いま相当な数の番組やってるけど、あまり知られていない。“変なヤツ”感がすごいので、世の中にこういう放送作家がいるということを知ってもらいたい」とおっしゃっていました。
こんな機会を頂けたんで、“変なヤツ感”がすごくて良かったです(笑)。水口さんは『水曜日のダウンタウン』や『たりないふたり』などでご一緒させてもらってますが、めちゃくちゃコミュ力が高くて初対面でもガンガン懐に入っていくし、人見知りの僕にとっては水口さんこそ“変なヤツ”です。いつも僕が「もっと誰かに褒められたい!!」とわめき散らしてるんで、きっと気を使ってこの取材をつないでくれたんだと思います(笑)
――放送作家には、どのような経緯でなられたのですか?
元々お笑いが好きで、大学の落研でコントとかやってたんですけど、演じるよりもネタ作る方が比較的好きだったので、放送作家を目指すようになりました。ADとして番組制作に関わっていたこともあって、たけし軍団さんのロケのシミュレーションとして、40kgくらいある巨大なエイを身体に縛り付けて水上バイクで引っ張られたこともあります。今となってはいい思い出です(笑)
その後、作家のなかじまはじめさんの紹介で、『いきなり!黄金伝説。』(テレビ朝日、00~16年)という番組に見習い作家として入れていただけるようになったんです。
――当時の『黄金伝説』はどんな雰囲気でしたか?
会議に行くと、今や“ナスD”になったテレビ朝日の友寄(隆英)さん、作家の高須光聖さん、鈴木おさむさん、そこに福田雄一さんもやって来るっていう、もう「テレビっ子の夢」みたいな世界で、とにかく会議がバカみたいに面白かったんですよ。雑談とかも全部面白くて、「テレビってこんなに面白い人たちが作ってるんだ!」というのが、放送作家としての原体験になっています。実際には笑いの一切ない地獄のような会議もあることを、後に知ることになりましたが(笑)
――飯塚さんはスタートの番組が恵まれていたんですね。
そうですね。それに『黄金伝説』って特殊な番組で、無人島で体当たりロケやってるかと思えば、次の週はディズニーランドのグルメ情報やってる、次の週は内職で稼げるか検証してる…みたいな、テレビのあらゆる要素が詰まっていたので、そこで基礎を学べたのが今に役立ってる気がします。海の中で素潜り漁している無音のVTRに、映像だけを頼りにナレーションを書いた経験は、他の番組で一切役立ったことはないですけど (笑)
――『黄金伝説』から、他の番組、局に仕事が増えていったんですね。
その後、先輩作家から日本テレビの安島(隆)さんを紹介していただき、『解決!ナイナイアンサー』や『たりないふたり』シリーズなどにも関わらせていただけるようになりました。学生時代に、安島さんが企画・演出されていた、『バナナマン・ラーメンズ・おぎやはぎ ライブ!!君の席』ってDVDを擦り切れるほど見ていたので、まさか一緒に仕事ができるとは思ってなかったです。
■『クレイジージャーニー』で学んだこと
――ご自身の中で、一番手応えのあった仕事はなんでしょうか?
テレビ番組って演出家の作品だと思っているので、「これが自分の仕事」って言いにくいんですけど、昨年秋から始まった『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日)という番組はチーフ作家という立場でゼロから関わっているので、思い入れは強いです。サンドウィッチマンさんは、ライブでも客席の子どもをステージに上げて、アドリブでバンバン笑いを獲ったりするんですが、『博士ちゃん』特番時代に、世界遺産博士の少年と芦田愛菜さんとサンドさんで即興コントの流れになって、めちゃくちゃハネたんです。「多幸感あふれる笑い」っていうか、最近のテレビでは珍しいタイプの面白さになったという実感がチーム全体にありましたね。
実は『博士ちゃん』は、『クレイジージャーニー』(TBS)で学んだことがすごく生かされていて、何かに異常な熱意を持って取り組んでる人という意味では、年齢が違うだけで同じなんですよね。例えば、『クレイジージャーニー』は演出の横井(雄一郎)さんの嗅覚で取材先を決めていたんですが、例えばリヤカーマンこと永瀬忠志さんに話を聞くと「新婚旅行でも奥さんと別行動で自分はリヤカーを押していった」みたいな、「なるほどこの人なら行ける!」って思えるクレイジーなエピソードが出てくる。『博士ちゃん』でも、魚が好きな少年が「お母さんに頼んで、お弁当にコバンザメの唐揚げを入れてもらう」という話が聞けると、「絶対この子でいける!」って思えたり。熱量の部分がちゃんと伝わるように気をつけています。