国内向けだけに作る時代は終わっていく

――今後、こんな作品を作ってみたいという構想があれば、教えてください。

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いくつかありますけど、国内向けだけに作る時代は終わっていくんだろうなという気がしているので、世界中の人が喜んで楽しんでもらえる物を書きたいなと思っています。

――そうすると、NetflixやAmazonプライム・ビデオなどで書いてみたいという気持ちですか?

必ずしもそこでなくても、テレビ局が作ったものでも、世界中に売るというやり方はいくらでもありますから、別に書くのはどこでもいいですね。やっぱり、日本国内だけに向いてると視野が狭くなるので、日本だけの事情でそうなってる部分がいろいろあるのはバカバカしいなと思っていて、世界中の人が分かることで感動できるものが作りたいという気持ちが、強まっています。

――今回も韓国版と中国版が同時に制作されていますしね。『デート』は中国でリメイクされましたが、手応えがあったのですか?

中国はまだ制作者のノウハウが少ないので、なかなか難しかったようで、台本が上がってきたら日本版の台本そのままになってるような状況だったんですけど、これからノウハウが蓄積されていけば、作品を自分たち流のものにするということもどんどんできてくるようになると思います。そういう意味では他の国といろんな形で連携しながら新しい作品を作っていくことは増えていくだろうし、すごく面白いことになるんじゃないかなという気はしています。

――古沢さんの作品は、会話劇が魅力の1つだと思うのですが、そこで"国境の壁"という心配はないですか?

ないと思いますね。中国では政府や公務員を批判できなかったり、内容に関してはその国その国の事情がありますが、乗り越える方法はいくらでもあると思います。

日本人みんなが熱狂する作品を目指すべき

――先ほど、月9という枠についてあまり意識していないというお話もありましたが、最近「若者のテレビ離れ」と言われるような風潮について、どのように捉えていますか?

時代の流れなので、それに対して嘆かわしいとも思っていないんですけど、やっぱりみんなが見るものってテレビなんですよ。"視聴率何十%"みたいな現象が時々起こるのもテレビだし、日本人みんなが熱狂する作品って、テレビだからこそできることだと思うんですよね。だから、僕らはそういうものを作る努力をして、目指すべきなんじゃないかと思っています。

――そんな古沢さんが、影響を受けたテレビ番組を挙げるとすれば何ですか?

いっぱいありますけど、『8時だョ!全員集合』(TBS)かなぁ。自分の記憶をたどって、最初に熱狂したテレビ番組が『全員集合』なんですよね。志村けんとジャッキー・チェンが大好きだったんです(笑)

――ご自身の書く脚本が、影響を受けている部分もあるんですか?

あると思いますね。『全員集合』が終わった後の『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』も大好きで、あの番組でやっていた「THE DETECTIVE STORY(探偵物語)」は、すごいよく出来ている回がありましたよね。あれには影響を受けていると思います。

あと、僕はナインティナインさんにもすごく影響を受けているんです。ナイナイさんが出てきた当時って、やっぱりダウンタウンさんが全盛で、一時期、漫才師はみんなダウンタウンっぽい感じだったんですよ。特に、ツッコミはみんな浜田(雅功)さんの高圧的な感じを見習っていたんですけど、その中でナイナイさんがいち早く脱却したという感覚が僕にはあるんです。サッカー部の先輩と後輩という関係を流用したと思うんですけど、矢部(浩之)さんが下から敬語でツッコむんですよね。

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    ナインティナイン

――「岡村さん、何してはるんですか」ってやつですね。

そうそう、それがすごく新しいなと思って。普通はボケが間違ってツッコミが正しいから、ツッコミのほうが上の立場で言うんですよ。それを逆転させたのが、すごく面白いと感じたんですよね。だから、僕の作品でボケとツッコミの関係を描く時は、あの関係を結構使ってるんです。『リーガルハイ』もその延長線上にあって、黛さん(新垣結衣)が「古美門先生(堺雅人)、違うと思います」って下から敬語でツッコむのは、ナイナイさんの影響を受けているんですよ。だから『めちゃイケ』は、ある種「ナインティナイン」というすごく良くできたコントを毎回作り続けたということが、すごいと思いますね。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている"テレビ屋"をお伺いしたいのですが…

『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ系)の再現ドラマって、あのクオリティを毎週作るのはとんでもないことだと思うんですよ。飛行機事故の再現ドラマとか、びっくりしながら見ています。あれは、みんなもっと褒めるべきだと思うんですよね。

次回の"テレビ屋"は…

『奇跡体験!アンビリバボー』角井英之プロデューサー