――毛利さんは2年前から、Huluに出向されていますが、その狙いはどういったところにあるのでしょうか?

やはり、AKB48グループっていうのはファンの母数が大きくて、配信サービスとしては重要な顧客になってくるんですよ。

――コンテンツにお金を払ってくれるファンですもんね。

そんな中で、基本的には日テレの地上波と連動しながら、Huluのコンテンツを作るというのが、僕の今の仕事です。

『NOGIBINGO!8』
昨年9月に加入が発表されたばかりの乃木坂46・3期生が出演。4~6月に放送され、現在Huluで配信中。

――こうして新たなプラットフォームが出てくると、アイドル番組は今後加速していくのでしょうか? 最初の話に戻ると、地上波だと大衆向けの番組づくりを意識しますが、Huluのような配信だとコアなファンに向けての番組がつくれるわけですし。

そうなると思います。Huluだとファンの方に深い満足で、お金を払っても見たくなるコンテンツを作っていかなければいけません。『NOGIBINGO!』では、「NOGI ROOM」という、メンバーがパジャマでしゃべるだけのコーナーがあるんですが、まさに配信向けのコンテンツなんです。あれは全く演出をしないという演出でやっていて、彼女たちが夜に誰かの家に集まって、『NOGIBINGO!』の放送を見てしゃべってるという感じで作ってるので、基本何も起こらないんです(笑)。司会の仕切りもなく、とにかくダラダラ話してるだけなので、地上波ではエンディングで少し流すだけで、全然持たないんですが、配信だとそれを面白がれるんです。最初の「NOGI ROOM」の収録は、乃木坂46の運営の今野(義雄)さんと一緒に見てたんですけど、今野さんに「毛利さん、これ新鮮ですね。僕もこういうメンバーの姿は見たことないです。これはいいかもしれない」と言ってくれたのを覚えてます。

――これまでに毛利さんが影響を受けたテレビ番組を1本挙げるとすると、何ですか?

僕はやっぱり『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系、1985~87年)ですね。当時高校生だったんですが、衝撃を受けました。テレビに出てくるそれまでのアイドルって、当時は天上人だったんですよ。でも、そこで革命を起こしていて、"隣のクラスの女の子"みたいな子が、テレビに出てるんですよね。確か秋元さんが「おニャン子クラブはカワイイ子も、お調子者の子も、元気な子も、ちょっとブスな子もいる。それが、高校のクラスのシミュレーションなんだ」と言っていて、「すげぇな! こんなのあるんだ!」ってどっぷりハマっていたのを覚えてます。とんねるずさんが、お客さんを生放送でバンバン殴るとか(笑)、ものすごいエネルギーがありましたよね。

――そこが、毛利さんのアイドル番組の原点なんですね。

そうですね。だから僕は、高校生の時にテレビ業界に入ってアイドル番組を作ろうと思ってたんですよ。

――ところが、『電波少年』や『笑ってコラえて!』など、ロケバラエティを長く担当されてたんですよね。そこからどういうきっかけで、アイドル番組を立ち上げることになったんですか?

入社17年目くらいになってキャリアも積んできて、ちょうどタイミングがハマったんですね。AKB48というグループが秋葉原の劇場にいるらしいと聞いて、行ってみたら、「これは新しいな」と思ったんです。完璧なパフォーマンスで魅せるスーパーアイドル・モーニング娘。がいる一方で、AKB48は小さな劇場でお客さんと近い距離で、その新しさは『夕ニャン』のときの感覚と似てましたね。で、これはあるなと思って、秋元さんに企画書を持っていったら「やるからにはガチで」という約束で、『AKB1じ59ふん!』(2008年)という番組を始めました。今から10年前くらいですね。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、毛利さんの気になっている"テレビ屋"をお伺いしたいのですが…。

TBSの合田隆信さん。合田さんもTOKIOで『ガチンコ!』とか、V6で『学校へ行こう!』といった、あちらは男性ですが、こちらと同じようにアイドルを起用して『電波少年』や『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』のようなドキュメントバラエティのフォーマットをはめて作られていたと思うんです。どんな思いを持ってつくっていたのか、興味がありますね。

次回の"テレビ屋"は…

TBSテレビ制作局制作一部長・合田隆信氏