――アイドルの子たちは、もちろん最初はバラエティの素人ですよね。そんな彼女たちに、いつもアドバイスしていることはありますか?
よく言うのは、とにかくバッターボックスに立つ回数が大事だということですね。レギュラー番組だと、何回かバッターボックスに立てるわけです。他のバラエティにゲストで呼ばれるのは「代打」で出るようなものですから、一振りに賭けなければならず、そこでヒットを打つのはなかなか大変なんですよ。でも、レギュラー番組だと何回も打席が回ってくるので、思い切りバットを振ることもできるんです。
そこでもう1つ言っているのは「トークで振られたときに、普通のことを言うな」ということ。例えば、何かを食べてMCに「どう?」って聞かれても「おいしいです」ではダメ。「おいしいです」の先に何を言うかを常々考えなさいと。それは、別に面白くなくてもよくて、人と違う自分なりの答え、例えば「おいしいです。ママのオムライスみたい」でもいいんです。それによって、お母さんに大事に育てられている子なんだなって、個人のストーリーを感じることができるんですよね。
――そうすると、MCの芸人さんも拾って広げてくれますよね。
そうです。「おいしいです。このご飯に包まれて眠りたい」とか言うと、キャラが出てくるじゃないですか。一振りに一振りに、自分なりの答えを考えながらやっている子と、惰性でバットを振ってる子だと、成長の仕方が全然違ってきます。
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『KEYABINGO!3』(きょう17日スタート、毎週月曜25:29~25:59 ※初回は25:59~) |
――長い間アイドル番組に携わってきて、バラエティタレントとして一番化けたなと思うのは誰ですか?
峯岸みなみ(AKB48)ですね。みーちゃんも最初は普通の中学生だったんですけど、その一振りの研究が一番すごかったです。彼女は「私、OAを見て『あ、こういうコメントがしゃべりテロップに出るんだ』って思ったんです。印象的で短いコメントがオンエアで使われやすいんですね」と言ってたんですよ。そういう子は、やっぱり伸びますよね。
――いまやバラエティで独り立ちされていますもんね。
バットを振るだけじゃなくて、「なぜあれがヒットになったんだろう?」って研究できる子なんです。
――『AKBINGO!』の後に『NOGINIBGO!』を立ち上げられましたが、AKB48と乃木坂46で、それぞれの特性を生かしたすみ分けはあるんですか?
『AKBINGO!』が始まる前、秋元(康)先生に「1つだけ約束してほしい。予定調和な台本じゃなくて、とにかくガチでやってほしい。それがAKBだから」と言われたんです。それを守ってずっとやってきたので、言って見れば、僕がディレクター時代にやっていた『電波少年』の作り方をアイドルに持ち込んだんですよね。タレントさんをある一定の状況に追い込んで、どうなるのかっていうあのスキームと、全部一緒なんです。
その後『NOGIBINGO!』を作ったとき、乃木坂46はまだブレイク前だったんですが、AKB48の公式ライバルということで、「国民的アイドルのAKB48と同じことをすれば、乃木坂46は国民的アイドルになれるのか」というのがテーマだったんです。だから、『NOGIBINGO!』のシーズン1は、「ムチャぶりドッジボール」や「ショージキ将棋」など、『AKBINGO!』と同じ企画をやりました。ただ、乃木坂46は清楚なイメージで、粉とかクリーム砲を浴びたら、ファンの方からものすごくお叱りを受けて(笑)。でも、クリーム砲を浴びた白石麻衣が「ありがとうございます!」って神リアクションしたんですよ(笑)。
そうやって"荒療治"でやっていったんですが、シーズン2からはやっぱり乃木坂のいいところを伸ばしていく企画をやろうと考えて、そこで生まれたのが、「妄想リクエスト」なんです。乃木坂の子たちが、視聴者のリクエストを受けて演じるんですが、これが彼女たちのルックスと演技力の高さで見事にハマって人気が出て、シーズン8でも続く人気コーナーに成長しました。
そうやっていくうちに、『NOGIBINGO!』はビジュアルと演技力に力点を置いた企画が多くなって、逆に体を張った企画が減っていき、『AKBINGO!』とそれぞれ違う番組として育っていくんです。両方のグループのカルチャーの違いが出てくるので、まるで生き物を育てているようで面白いですね。
――メンバーが成長していくのを、まさに実感しているわけですね。
そうなんです。だから『電波少年』と似てるんですよね。
――確かに、『電波少年』は駆け出しの芸人さんがどんどん育っていくのを目撃しました。
たまに総集編をやって過去のVTRを見ると、「成長したなぁ」って思いますよ。