――乳幼児向け番組のパイオニアということで、他局の人から、ノウハウを聞かれることもありますか?

あります。そういう時は、全部包み隠さず話します。子ども向けコンテンツが増えることは、子どもたちにとっても、親にとってもいいことだと思うんです。みんなが子どもに眼差しを向けて、本気で作ってくれたら、選択肢が増える。『シナぷしゅ』だけがあればいいとは思っていません。

――この4月から、テレビ朝日で『よ~い! スターと! トビダスクール』、フジテレビで『ぱちぱちるんるん』と子ども向け番組が相次いでスタートしましたが、ご覧になっていますか?

同じジャンルの番組を見ると、どうしても仕事の目線が入ってしまうので、あまり見ていないんです。「この予算はどうなっているんだろう」とか、そういうことまで気になってしまって、純粋に楽しめなくなるので(笑)

――放送にとどまらない展開の中で、企業とのコラボ展開も積極的ですよね。

営業経験があるので、スポンサーの方に自分で会いに行くことも多いです。自分の言葉で『シナぷしゅ』の思いを話すんです。「一緒に社会を変えましょう」という気持ちでお伝えしています。

番組はもちろんビジネスとして成り立たせなければいけません。でも、それだけではなく、赤ちゃんと育児をしている人たちにとって本当に必要なものを作っているという思いを共有できる企業と一緒にやっていきたいです。

――2023年、2025年と映画化も果たしました。

映画は、最初の企画書の段階からやりたいと思っていました。テレビ番組を作るだけではなく、赤ちゃんと社会との接点を増やしたかったんです。

子育て当事者と非当事者の間には、すごく高い壁があると感じています。子育ての話題は炎上もしやすいですし、当事者以外にはなかなか見えにくい。私自身、妊娠中に地下鉄でマタニティマークを隠していたこともありました。社会全体が、もう少し子どもや子育てに寛容であってほしいと思っています。

映画館は、もともと0歳児が来ることを想定していない施設です。そこで『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』が上映されたことで、映画館のロビーにベビーカーがずらっと並びました。それを見て、通りがかった大学生が「今どきの赤ちゃんって、映画館で映画観れるんだね」と話していたんです。

『シナぷしゅ』の映画があったからこそ、若い子たちが一瞬でも「赤ちゃん」の存在を心に留めてくれた。その人たちが将来、子どもを持つ選択をする時に、「今時の子育てって、ちょっと楽しそうだよね。映画館にも行けるし」と思ってくれたら。そういう小さな積み重ねが社会を変えていくんじゃないかと信じています。エンターテインメントの力で、少子化に対して働きかけられたらと、常に考えています。

  • 『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』(C)SPMOVIE2023

    『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』(C)SPMOVIE2023

  • 『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』(C)SPMOVIE2025

    『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』(C)SPMOVIE2025

これ以上ない喜び「『シナぷしゅ』がある時代に子育てできてよかった」

――そうした視聴者からの言葉で、ほかにも印象に残っているものはありますか?

「『シナぷしゅ』がある時代に子育てできてよかった」と言っていただけるのが、一番うれしいです。子育ては楽しいことばかりではないですし、孤独になる瞬間もある。だからこそ、毎日の生活の中に『シナぷしゅ』があることで、少しでも救われたと思ってもらえるなら、こんなにうれしいことはありません。

――最初から配信を意識して企画したという『シナぷしゅ』ですが、配信の存在感が高まるなか、テレビ放送はどんな意義を持っていると思いますか?

乳幼児向けというジャンルにおいては、テレビはまだ特別な存在だと思っています。安心安全なものを見せたい親御さんたちにとって、「地上波で放送されている」という事実はすごく大事なんです。

ネット発の、誰が作っているか分からないコンテンツよりも、地上波で放送されている安心感がある。その一方で、配信で自由に見られる便利さもある。『シナぷしゅ』はその“いいとこ取り”ができていると思います。

――グローバル展開にも力を入れていますよね。

英語版のYouTubeチャンネル「PushBaby」は、視聴の6割ぐらいは海外からだと思います。インドとフィリピンが多いですね。

ただ、海外で本当に浸透しているかというと、まだ課題があります。チャンネル登録者数は80万人ぐらいいますが、視聴時間はそこまで長くない。日本の方は吟味してチャンネル登録する傾向がある一方で、海外の方は「かわいい、良さそう」と比較的気軽に登録することもあると聞きます。だから、登録者数だけを見るのではなく、どの国や地域にどう届けるのか、ターゲットを絞って考えていく必要があると思っています。

変わらず毎日の放送を丁寧に大切に作ることを大前提とした上で、世界の赤ちゃんに向けてものづくりをしていくことも、面白いテーマだと思っています。