• 『サヨナラ港区』(C)ytv

――宮城さんといえば、読売テレビで放送された『サヨナラ港区』が大きな話題になりました。全編AI映像で制作されたドラマが、地上波放送という意味でも注目を集めました。制作面でこだわったことを教えてください。

今はAIでセリフも言えるようになってきているんですけど、「間」の作り方とか、感情移入できるかどうかという部分は、今のAIにはやっぱりないんです。「AI技術だけでドラマができますよ」となっても感情移入が難しくて、声はAIで合わないと判断したので、声優さんにお願いしました。音響も入れています。AIは映像を担当した形です。

生み出したキャラクターは全部ネット検索による照合と目視で、いろんな人に確認してもらいました。そうやって似ている人が絶対いない状態まで持っていくということを、プロデューサーと一緒に徹底しました。

――具体的に、キャラクターデザインではどのようなことに気を配ったのですか?

既存のキャラクターや実在の人物に似ないようにするために、基本的には全部ゼロイチで作ります。自分で手書きでキャラクターを描いて、それをAIに読み込ませるんです。上手い下手じゃなくて落書きレベルでいいんですけど、それをベースに改良していく。アニメキャラクターが一番怖いので、完全に自分の手描きから入った方が安全だという判断です。

――堤監督も言及されている「リーガルな問題をクリアして制作されている」という部分ですね。

リーガル面は、僕が一番気にしているところです。商業利用で、メディアを通して何かをやるときは、実在の人物を読み込むようなことは絶対にしない。建物や名称、「誰々風」といった表現も一切使わない。そういったことを全部記録として残していて、テレビ局さんとお仕事をするときはプロンプト(※AIへの指示文)の管理資料もご提供するという条件でやっています。

――そこまで徹底するのは、プロデューサーとしてリスク管理をしてきた経験が大きいのでしょうか。

だと思います。全体を管理する側にいたので、リスクは負いたくないというのが染み付いているんですよね。SNSを見ていると著作権関係なく何でもやってしまうケースも目立ちますが、そこをちゃんと管理できない人はビジネスにもつながらないと思います。そしてツールに頼っているだけだと多分みんな作るものが同じになってしまう。使われる側じゃなくて使う側でいるためにも、リーガルの管理とプロンプトの技術で自分のスパイスを足していく。この両輪が重要だと思っています。

――「プロンプトの技術」というのは具体的にはどういうことでしょうか。

テレビ局さんとお仕事をするとなると、著作権の問題から使えるツールが限られてくるんです。そうなったときに、同じツールを使っている中でどうやって差をつけるかというと、プロンプトしかない。僕は1カットを作るのに2000字から3000字打つんですが、「ちょっと入力したらすぐ出てくるんでしょ?」と思われていることは今でも多くて、そこはなかなか分かってもらえないところではあります(笑)

全編AI制作ドラマは炎上覚悟も…意外な反応

――この分野では、まだライバルもいない状況ですよね。

そうですね。ライバルっていうライバルは本当いなくて。だから、毎日自分との戦いになりますね。

――宮城さん自身が先駆者なので、師匠的な存在というのも難しいとは思いますが、あえて挙げていただくなら?

テレビ屋という意味合いでいくと『サヨナラ港区』を一緒に手掛けたプロデューサーの汐口武史さんかと思います。テレビマンとして、アニメも、バラエティも、実写ドラマもやってきた方で、本当に幅広いジャンルをこなす人物です。『サヨナラ港区』の企画もそういったクロスジャンルの経験値があるからこそ成立した部分が大きい。面白要素を入れる部分とかもすごく上手なんです。

「実写でもアニメでもない中間を取り入れよう」という発想を教わったのも汐口さんからですし、それまでは声がかかった仕事をやれるかやれないかで判断するだけだったので、地上波で流すことを前提に制作を考えるという視点を持てたのも、汐口さんのおかげです。本当に天才肌で、今も見習う部分しかないです。

――そうして徹底した管理とこだわりの上で作り上げた最初の地上波ドラマが『サヨナラ港区』だったんですね。実際に放送されていかがでしたか。

普段SNSを見ていると、反AIの方の声がどうしても目立つので、正直、拒否反応を覚悟していましたが、いざ放送してみると炎上もなにもありませんでした。ポジティブな反応のほうが大きかったのが正直意外でしたし、うれしかったです。

そのあとに放送された、実写と生成AIを融合させた『TOKYO 巫女忍者』(日本テレビ)は、『サヨナラ港区』の放送直前のタイミングですでにミーティングしていましたが、『サヨナラ港区』が放送できたことで、業界の方々から「なんだこれは」という感じでいろいろお声がけいただきました。

――反響といえば、バラエティ番組『沸騰ワード10』(日本テレビ)にも“AIの魔術師”として何度も出演され、話題になっていました。

間宮祥太郎さんなど俳優さんたちもいるスタジオでAI映像を披露したので、一番ドキドキしました。「いいのかな、これやって」という気持ちもあって(笑)。ただやっぱり反響は想像以上で、一般の方にも知ってもらえたという部分が大きかったですね。反AIの方からの反応もありましたけど、「すごいね」「見てよかった」という声のほうが大きかったです。