――『ゲート・オン・ザ・ホライズン』も『DARK13』も、いわゆるお芝居を生業にしている方とは違う、若いアーティストと組まれています。

正直、二の足を踏むところはありますよ。ともすると孫世代ですし(笑)。「果たして彼らや彼らを取り巻くカルチャーに、この古びた頭でショックを与えることができるんだろうか?」と考えると、ちょっとげんなりもしますが、そんなこと言ってたって、楽しく死ねないんで。今まで経験したこと、想像したことを全部ぶち込んで、まず自分が楽しくやろうと。そうしないとスタッフが楽しめないし、役者たちも楽しめない。

そして、彼らは本職の役者ではないけれど、役者であれば物事を面白くできるかというと、全然そんなことはないんです。ダンスや歌ですごいパフォーマンスを持っている人は、通常の役者よりも強い存在感を放つことがたくさんありますから。

――10人のメンバーが演じる、それぞれのキャラクターが本当に際立っています。

一人ひとりが輝くにはどうしたらいいか。会議室に一堂に集まっていただいて、顔と声を確認しながら、「君はクラーク・ゲーブルだな」とか言ってキャラクター付けしていきました。みなさん「クラーク・ゲーブルって?」とスマホで調べたりしながらね(笑)。「君はケイン・コスギだな」「あなたはIKKOさんだね」とかやっていきました。

――そういったキーワードを投げかけたりされるんですね。

ある程度完成した俳優さんにそんなこと言ったら失礼の極みですけど、演技経験のない、違う川を泳いでいる皆さんだからこそ、こういう新しい流れの中で、一つヒントをあげるとめちゃくちゃ面白いことができる。それが今回証明されていると思います。

  • 『DARK13 踊るゾンビ学校』<br>ABCテレビ(関西) 毎週日曜深夜24:10~<br>テレビ朝日(関東) 毎週土曜26:30~<br>ABCテレビでの放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信。TELASA、FOD でも全話配信<br>(C)DARK13製作委員会・ABCテレビ

    『DARK13 踊るゾンビ学校』
    ABCテレビ(関西) 毎週日曜深夜24:10~
    テレビ朝日(関東) 毎週土曜26:30~
    ABCテレビでの放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信。TELASA、FOD でも全話配信
    (C)DARK13製作委員会・ABCテレビ

地獄のAD生活からの脱出を踏みとどめたバンド

――さて、数々のヒット作を手掛けてこられた堤監督ですが、改めてキャリアを振り返って、忘れられないお仕事や、今の自分を形成する原点となった経験はありますか?

忘れられない出来事は、いわゆるアシスタントディレクター(AD)として入った頃のことですね。大学4年まで行って中退して、22歳くらいで業界に入ったんですけど、わかりやすく言うと「地獄のAD生活」をいきなり始めまして……はっきり言って、向いてないと思ったんです。

――いきなり「向いていない」と。

そもそもこの仕事を選んだのは、「自分にネクタイを締める仕事はできないだろう」と思って、「テレビのディレクターなら、なんか簡単にできそうだな」なんて思ったからなんですよ。舐めてかかっていた。それがとんでもない。いわゆる体育会的な回路がないと無理な現場でした。

――当時は相当過酷な現場だったのでは。

70年代、80年代初頭のバラエティ番組なんて、もう地獄の所業といいますか、ひどかったですね。僕は体も動かないし、どうしたらいいかもわからない。全く向いてないなと思って、ある日、「もう今日で辞めてやろう」と決意しました。

――え! そこからどうなったのですか?

その時担当していたのが、TBSで夕方にやっていた『ぎんざNOW!』という伝説的なバラエティ番組でした。そこに生放送でいくつかバンドが出るんですけど、私自身は中学からバンドばっかりやってて、テレビに出ているような歌謡バンドはあんまり信用してなかったんです。

――(苦笑)

もっとカルチャー寄りの、松本隆さんとかがやっていた「はっぴいえんど」のようなバンドが好きだったので、いくら生でバンドが出てたって1ミリも心が動かなかったんです。そんななかで、「もう今日辞めよう」と思っていた日に見たバンドが、その気持ちを止めました。

――そのバンドとは。

「サザンオールスターズ」です。

――おお~!

ほぼデビューの頃で、最初は「なんだこいつら、色物か?」と思いました。歌詞もむちゃくちゃだし、着てる服もジャージとか舐めた感じで。でも、音楽的な見方をしてみると、狙いに狙ったわかりやすさがありつつ、ロックのグルーヴみたいなものをすっかり熟知している、えらいテクニックのすごいバンドだったんです。それで、「こういう新たなロックを作る人たちとも関われるんだったら、もうちょっとこの仕事をやってみようかな」と踏みとどまりました。