注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、時代を作ってきたドラマ監督の堤幸彦氏だ。
『ケイゾク』『池袋ウエストゲートパーク』『TRICK』『SPEC』と、テレビドラマの文法を根底から書き換え、今なお現役で走り続けている同氏。最新作となる連続ドラマ『DARK13 踊るゾンビ学校』(ABCテレビ)では、Z世代のダンスグループ「THE JET BOY BANGERZ」とタッグを組み、ゾンビとダンスが融合したホラーコメディを手掛けて話題となっている。
「もしかしたらとんでもないドン・キホーテで、空回りのオワコンの極地かもしれないけど、とにかく“前に進んで倒れるまで”やろうと思っている」と意欲満々に話す堤監督。その姿には、“緻密な職人技に裏打ちされた最高級の悪ふざけの革命家”として、現役であり続けるパワーがみなぎっている――。
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堤幸彦
1955年生まれ、愛知県出身。法政大学を中退後、テレビ業界に入り、『ぎんざNOW!』『コラーッ!とんねるず』などバラエティ番組を担当。ドラマ監督としては、『ケイゾク』『池袋ウエストゲートパーク』『TRICK』『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』など、革新的な映像表現とキャラクター描写で支持を獲得した。映画監督としても活躍し、『20世紀少年』3部作、『明日の記憶』『天空の蜂』『人魚の眠る家』など話題作を多数手がける。今年は、現在放送中のドラマ『DARK13 踊るゾンビ学校』で演出を担当し、映画『ミステリー・アリーナ』『hinata』が公開予定。9月に開幕する「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)」では開閉会式の総監督を務める。
スタイリスト:関恵美子
ただ面白いと思うものを“球”として全国に投げたい
――当連載に前回登場したABCテレビ『相席食堂』の小高正裕ディレクターが、どうしても堤監督にお話を聞いてもらいたいとご指名されました。小高さんは堤監督の代表作のひとつ『SPEC』が大好きで、番組構成に行き詰まると、当麻(戸田恵梨香)のようにキーワードを書いた紙を破って投げて、「何か結びつくんじゃないか?」とやっているそうです。さらに、愛知高校の先輩・後輩にあたるとのことで、「勝手に運命を感じている」ともおっしゃっていました。
そうですか(笑)。それは、ありがたいですね。光栄です。
――今回、監督はABCテレビとタッグを組んで連続ドラマ『DARK13 踊るゾンビ学校』を制作されました。かなりぶっ飛んだ世界観の中で人間ドラマが展開していくユニークな作品です。
話を重ねるに従って、ますます人間ドラマ味が増えていきますよ。全部並べてみると、一層「とんでもないドラマだ」と実感していただけると思っています。
――これまでにも、ご出身(名古屋)の地域の中京テレビや東海テレビをはじめ、系列局とお仕事をされています。キー局以外と制作する面白みや狙いといったものはありますか?
中京テレビさんや東海テレビさんの場合は、名古屋を舞台にドラマを作るとか、ビビットな地元ニュースネタに作ることが多いですね。そういう場合は、地域性に限定された企画になります。
――今回はゾンビモノです。
はい。『DARK13』では「全国津々浦々、面白いよね、コレ」と思っていただけるものを、ABCテレビさんに乗っていただきました。ただ面白いと思うものを、僕としては全国に“球”として投げたい。今回、こういうチャンスをいただけたことは、本当にありがたいと思っています。
――キー局以外のほうが、キツい規制がないといった違いはありますか?
微妙にあるのかもしれないけれど、僕の中ではないです。昨今、表現というのはコンプライアンスを意識しながら作っていくというのが、当然のルールとしてあります。それは東京だろうが大阪だろうが名古屋だろうが変わらない。そのなかで今までにあまり見たことのないようなものを、いかに作り続けられるかというのが大事です。それを引き受けていただけるということだけで、自由度満載という感じです。
「何アホなこと言ってんだよ」から生まれるアイデア
――企画の発想について伺いたいのですが、監督のアイデアはどのように生まれることが多いですか?
雑談ですね。特に最近は、去年FODでやった『ゲート・オン・ザ・ホライズン~GOTH~』も、SKY-HIさんと「沖縄で『IWGP』みたいなことやったら面白いんじゃない?」という雑談から生まれました。
――今回の『DARK13』も?
そうです。まあ、今回はLDHのHIROさんと一緒に考えていきました。飲み屋ノリと言ったら変ですけど、原作があるわけでも、モデルになるリアルな人物がいたわけでもない。ゾンビですからね(笑)。ミーティングの中で、LDHの「THE JET BOY BANGERZ(TJBB)」という10人組グループを主演に、「彼ら全員が均等に主役っぽく見えるものってありますか?」と聞かれたんです。「ない」と言うことだけは、僕は悔しくてできませんから、「ありますよ。ゾンビです」と、3秒で結論を出したところが始まりです。
――3秒でゾンビと。
ただゾンビだけだと「ありがちなパターンだな」というリアクションが来ると思ったので、「単なるゾンビものじゃありません。ゾンビの裁判モノ、もっと言うとゾンビの金八先生みたいなモノ」と次の手を打っていきました。真っ当な人間が聞くと、一見、「何アホなこと言ってんだよ」というところから、こういうテレビの企画というのは始まるんじゃないかと。私も70歳を超えましたが、“最後のアホ企画”として、ぜひチャンスがある限り続けられればいいなと思っている次第です。