――師匠のような存在を挙げるとしたら、どなたになりますか?

師匠と呼ぶのはおこがましいんですけど、『FUJIYAMA FIGHT CLUB』と『RIZIN』をやっていた時から佐藤大輔(佐藤映像)さんには良くしてもらっています。大輔さんはADにも「VTR作ってみろ。俺が責任持つから」と言うタイプなので、いわゆる“煽りV”を入社1年目の後半から作らせてもらっていました。

当時ど緊張しながらVTRをチェックしていただいていたのですが、そこでの指摘がすごくて。本当に天才的なナレーションを入れる方なので、「ナレーションの単語1個変えるだけで、こんなに違うの?」みたいな驚きばかりでした。だから、今『鬼レンチャン』で入れているナレーションなんて、完全に大輔さんから影響を受けています。当然足元にも及びませんが。

――『千鳥の鬼レンチャン』は、まさに“煽りV”ですよね。その中でも、先日のOAに出た島谷ひとみさんの「平和を愛する債権者」など、独特のワードが効いてます。

この世に存在しない短くて強いパワーワードを作るというのを、すごく意識しています。とにかく人が「何その言葉!?」と感じる、「頭に残るワードを置く」という考え方は、大輔さんのVTRを見たり、直接教えてもらったりして、めっちゃ影響されていますね。

――『千鳥の鬼レンチャン』のVTRはナレーションや構成にこだわりを感じますが、特に心掛けていることは何でしょうか?

最終的にその人を応援したくなるようにというのは、すごく意識しています。前半は変なナレーションとか入れたり、バラエティっぽくしつつも、その中で「この人のココかっこいいよね」とか「すごく愛らしいよね」といった人間性が見えてきて、最後は「鬼レンチャンしてくれ!」って思ってしまうような作りにしようと心掛けてます。

それと、割と毒気のある番組ではありますが、むやみやたらに攻撃的な編集はしないようにしてます。強めのナレーションを入れるにしても、あくまでその挑戦者が言っていたことに則すとか、過去に千鳥さん・かまいたちさんが言っていたことに乗っかるとか、何か良くないことをしていたから、そこを突っつくとか、あくまで「因果応報」にしているので、何もしてない人に急に攻撃的なナレーションを入れたりはしないです。それをやっても共感されないですから。

――そして、VTRを受けるスタジオパートが大きな役割を果たしていますよね。

こういったナレーションなどVTR上で遊ぶことができるのは、本当に千鳥さん、かまいたちさん、鬼の声のユースケさん(ダイアン)が制作側の些細な仕掛けに真っ向からぶつかってくれて、何倍にも面白くしてくれるからというのが一番大きいです。我々のしょうもない小仕掛けもみなさんの返しのコメント一つでめちゃくちゃ面白いシーンに変わる瞬間が数えきれないくらいあるので、本当に感謝しています。

また、VTRの挑戦が、成功・失敗どっちになっても面白くなるように、「こうなったらおもろいなあ」と結果が出る手前で“フリ”を作ってくれるんです。もしそうならなくても面白くなるようになっていて、「このままこの人が優勝したら面白いけど、失敗したら何だったん!?」っていう空気を作って、それが視聴者のガイドになるから、本当に天才的だなと毎回思っています。

――特に「サビだけカラオケ」は、挑戦者のストーリーが生まれるのが面白いですよね。

大悟さんは挑戦のVTRが終わった後に必ず「次どうしようか」って今後の展開を作ろうとしてくれて、そこにノブさんとかまいたちさんから「こうしようか」とアイデアが出るので、制作側としてもめちゃくちゃ助かるんです。4人が意識的にやっているのかは分からないんですけど、挑戦者を“点”で終わらせないように、「次はこれに出てもらおう」とか「こういう扮装させよう」とか言ってくれるので、何回もチャレンジする挑戦者が出てきて“線”になるんです。

――そういうストーリー展開は、制作が誘導するのではなく、MC発信で生まれていくんですね。

そうですね。ディレクターから挑戦者に「ここで失敗したら改名してくれますか?」と言ったら引いちゃうと思うので、そこは4人のノリにすべて委ねるという感じです。

  • 『千鳥の鬼レンチャン』(C)フジテレビ

    『千鳥の鬼レンチャン』(C)フジテレビ

大きい声を出すことに向いてない芸人…たむたむの衝撃

――そのノリから生まれるストーリーが笑いになるわけですが、さらにそこから感動が生まれることがあるのも、すごいと思います。

本当に挑戦者の皆さんは練習も含めて一生懸命やってくださってるので、制作側が「この人は感動路線でいこう」と思っていなかったのに、撮ってみたら結果的に感動を生んでいたということになるんです。どういうキャラクターでどんな人なのかというのは、めちゃめちゃ掘り下げてVTRを作っていくんですけど、そこに千鳥さんとかまいたちさんのコメントや応援が乗っかってくると、その人の良さが10倍、20倍に膨れ上がってくるという感じがありますね。

――HONEBONEのEMILYさんの挑戦に感動して、すぐインタビューしてしまいました。テレビでは無名の方も次々に出てきますが、こうした挑戦者はどのように探しているのですか?

これはもう総力戦ですね。(放送)作家さんが大量に気になる歌手のリストを出したり、ディレクターがアンテナに引っかかった人を提案してきたり、とりあえず片っ端から会ってみようという感じです。もちろん、最低限歌えるというラインがある中で、ちょっとでもキャラがありそうだと思ったら、ディレクターが会って、しゃべって、撮ってみてという感じですね。

毎回ディレクターの皆さんが挑戦者の人間性を引き出すために徹底的に取材をして収録に臨むので、ディレクター陣の演者さんに対する情熱がこの番組の強みでもあります。

――『千鳥の鬼レンチャン』からこれだけブレイクした人が出てくると、皆さんものすごい熱量で挑んでくるのではないでしょうか。

そうですね。皆さんプライベートでカラオケにこもったり、本当に超練習されて一生懸命やってくれるので、「鬼レンチャンしてほしい」という気持ちはもちろんですけど、達成しなくてもこの人のキャラや後々ハネるような要素を見つけていくというのは、こちら側が頑張るところだと思っています。

――「サビだけカラオケ」の収録は、めちゃくちゃ時間かかってますよね。

歌と歌の間のトークをめっちゃ撮ってるので、鬼レンチャン(10曲)まで行くと3時間以上かかることも普通にあります。だから、純粋に歌の上手さを問われるだけじゃなくて、体力戦にもなってる感じがありますね(笑)。それにキンタロー。さんとかりんごちゃんとか扮装系の人は凝ってるんで、1レンチャンするのに1時間半くらいかかって、9レン、10レン行くと10時間近くかかります。

――そうやって本気で挑んでくれた皆さんがこの番組をきっかけにブレイクすると、制作側としてもうれしいですよね。

もちろん『鬼レンチャン』だけが要因じゃないでしょうけど、営業の仕事がものすごく増えたという話を聞くのはうれしいですね。ほいけんたさんがCMに出てると、ノブさんが「時空ゆがんだんか」とかおっしゃるんですけど(笑)。だから、これから徳永ゆうきさんが『紅白歌合戦』に出てくれるとか、そういうのがあるといいなと思いますね。

――本当に人材豊富な挑戦者の皆さんですが、特に印象に残る方を挙げるとするとどなたになりますか?

たむたむさんは、初めて会った時から「こんな面白い人いたんだ…」って衝撃でしたね。基本、緊張でまともにしゃべれてないんだけど、キザなんでそれを絶対に認めないんですよ。出川(哲朗)さんや狩野(英孝)さんって、噛んでツッコまれても無視してしゃべり続けるじゃないですか。あの感じの新しいバージョンが出たなと思いました。

それと一番びっくりしたのは、緊張でえずいちゃうんですけど、たぶん大きい声を出して口を大きく開けると自動的にえずいちゃうシステムなんですよ。何回かやって気づいたんですけど、「かかってこいー!!」って河村隆一さんのマネをするとだいたい「ううっ」ってなるから、大きい声を出すことに向いてないんです(笑)。そんな人がマクドナルドのCMに出た時はびっくりしましたね。