テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第96回は、9日に放送されたテレビ朝日系バラエティ番組『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(毎週土曜18:56~)をピックアップする。

番組の主役は、強烈な好奇心によって大人顔負けの知識を身につけた子どもたち。愛するテーマの授業をする姿が「かわいらしいだけでなく、教えられることが多い」と評判を集め、今年2月・6月のパイロット版を経て、今秋早くもレギュラー化された。

同じ土曜夜に放送され、同じように子どもたちの活躍が見られる『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(フジテレビ系、毎週土曜19:00~)との比較も交えながら検証していきたい。

  • (左から)伊達みきお、芦田愛菜、富澤たけし

■“好感度オバケ”3人の位置づけとは

オープニングのナレーションは「この番組は子どものころから“お勉強が大嫌いなサンドウィッチマンさん”と“日々勉強に励み、読書大好き芦田愛菜さん”が、さまざまな分野の博士をお招きしてお勉強していく番組」「ただし、その博士というのが、小さな子どもの博士ちゃん。自分たちのライブでは客席のちびっこをステージに上げ、漫才のような即興トークで盛り上げるサンドウィッチマンと、今新聞やネットをさわがせている天才と話題の子どもたちをかけ合わせると…笑って学べる世界で一つだけの授業が誕生」。

「好感度オバケ」のサンドウィッチマンと芦田愛菜をベースにしつつ、シンプルながら考え抜かれたコンセプトの番組であることが、わずか数秒で分かってしまった。このナレーションを聞いて「それなら見てみようかな」と思った視聴者は少なくないだろう。

この日の放送は3部構成で、それぞれ授業風に「〇時限」とされていた。1時限目の博士ちゃんは、福岡県久留米市の藤崎伊織くん(12歳・小6)。和田アキ子の出演番組すべてチェックし、歌いまくった結果カラオケ大会で11回も優勝した「和田アキ子大好き博士ちゃん」という。

伊織くんは、部屋のどこにいても和田と目が合うようにポスターを貼りまくり、「カワイイ」を連呼する一方、あいみょんも広瀬すずも知らなかった。和田を好きになったきっかけは、「小3のときにYouTubeでたまたま見て、歌声と声量に圧倒されて感動した」から。

番組は「“まずは”カラオケ大会11回優勝の美声」「“そして!”アッコに捧げた日常に密着」「“いよいよ!”意外と知らない…ホントの和田アキ子」という3つのトピックスを立てて、順番に愛の深さを掘り下げていった。いたずらにあおり映像を使うのではなく、プレゼンを思わせる簡単なトピックス立てで「この先はこういうことを放送しますよ」を伝える演出は好感が持てる。

■『マツコの知らない世界』の子ども版か

2限目は、現場へ突撃取材する「博士ちゃんNEWS」。芦田がキャスターになって何人かの博士ちゃんを紹介する新企画だ。

「スーパーで購入した食用のうずら卵を温めてふ化させた」京都府宇治市の角野収都くん(10歳・小4)、「300体のオリジナル仏像を作り、部屋を埋め尽くした」長野県長野市の宮沢汰佳くん(16歳・高1)、「夏休みの自由研究で作ったオリジナルのことわざが本として出版された」東京都のさくらこちゃん(10歳・小5)の3人がテンポよく紹介された。

この新コーナーは、単調さを避け、視聴者を飽きさせないための工夫なのだろう。3人とも、十分おもしろいキャラクターであるが、メインの博士ちゃんほどキャッチーなテーマではないため、言わば「横綱クラスの博士ちゃん2人の間に、大関・関脇・小結クラスの博士ちゃん数人を挟もう」という意図ではないか。

3時限目の博士ちゃんは、北海道帯広市の池原亜飛くん(16歳・高1)、透真くん(13歳・中1)兄弟。2人は北海道の道の駅124カ所を9年間コツコツ回り、もうすぐ完全制覇目前の「北海道 道の駅博士ちゃん」だった。

これまで特番時代に「野菜博士ちゃん」「世界遺産博士ちゃん」「美空ひばり博士ちゃん」「金魚すくい博士ちゃん」「マイナー魚博士ちゃん」「レトロ信号博士ちゃん」「スーパーカー博士ちゃん」。レギュラー放送で「レアうま魚博士ちゃん」「珍仏像博士ちゃん」「世界の楽器博士ちゃん」が出演してきたが、グルメ、旅、エンタメなどの鉄板コンテンツをそろえていてバランスがいい。

「一般人が愛するものを熱量たっぷりに話す」というコンセプトは、『マツコの知らない世界』(TBS系)に近く、当番組はその子ども版に見える。白衣を身にまとい流暢にしゃべる子どもたちの目はキラキラと輝き、無邪気に笑う姿には癒やされるし、時にサンドウィッチマンのツッコミに動揺するなどの幼さは微笑ましい。大人がコアな話をすると「オタク」「変人」に見られがちだが、子どもが同じことをしても、その印象はなく、ただただ感心させられてしまう。

■民放の土曜19~21時はファミリー一色

“愛するものに熱量たっぷりの子ども”と言えば、冒頭に挙げた裏番組の『99人の壁』を無視することはできない。トークとクイズという軸の違いこそあるが、「天才かつ面白いキッズを同じ時間帯で奪い合う」という意味では、近年ないほどガチガチのライバル関係にも見える。

両番組を比較すると、『博士ちゃん』は、スタジオと自宅ロケの両方で愛するものを思う存分しゃべれる反面、出演のチャンスはなかなかめぐってこない。一方の『99人の壁』は、クイズを楽しみ、大人を負かし、賞金も得られ、繰り返し出られる反面、前に出るのが難しく、知識を話す時間は限られ、交通費がかかってしまう。

両番組はこの日が初対決だったが、視聴率(ビデオリサーチ調べ・関東地区)は『博士ちゃん』7.3%、『99人の壁』8.6%。今回は「小学生1人VS東大生99人」という強烈な企画で勝負した後者に軍配が上がったが、始まったばかりであり、しばらくは激しいバトルが見られるはずだ。

同じ土曜夜に放送されている『ジョブチューン』(TBS系)も、最近のメインは子どもが好きなファミリー向け飲食チェーンの採点企画であり、『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)も含め、民放各局のマーケティングが「子どもをベースにしたファミリー」一色になりつつある。

その点、『博士ちゃん』は「母親に何度も話を振って、親目線のコメントを入れる」という演出を採り入れるなど、ファミリー層にきっちり訴求できていた。バラエティからドラマ、報道番組まで「レギュラー番組の視聴年齢層が高い」と言われがちなテレビ朝日にとって大切な番組なのかもしれない。

土曜の19~21時は、「子どもが見るものは、親も見てくれるはず」、その上で「大人目線を入れて楽しんでもらう」という番組が埋め尽くしている。決して悪いことではないのだが、テレビの多様性を担保するために、「休日なのだから、年々増える独身者をターゲットにした番組も放送してほしい」と感じてしまった。

■次の“贔屓”は…『ワイドナ』準レギュラーの古市憲寿が登場 『誰だって波瀾爆笑』

『誰だって波瀾爆笑』MCの堀尾正明

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、17日に放送される日本テレビ系バラエティ番組『誰だって波瀾爆笑』(毎週日曜9:55~)。

放送開始は2008年10月と、すでに11年が経過しているが、「日曜朝のトークショー」としての歴史は、さらに長い。故・逸見政孝さんが司会を務めた前々番組の『いつみても平平凡凡』のスタートは1991年4月であり、いかに長きにわたって親しまれてきたかが分かるだろう。

次回のゲストは社会学者の古市憲寿氏。「今どんな角度からも悪口が言えるテレビ界最強のひねくれ者! 古市さんがいかにしてひねくれ者に育ったのか? その人生をご紹介!」と失礼承知のぶっちゃけたPRがいかにもこの番組らしい。

古市氏の超個性的なパーソナリティとともに、『ワイドナショー』(フジテレビ系)の準レギュラーだけに、裏番組でどんな存在感を発揮するのか興味深い。

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。