テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第97回は、17日に放送された日本テレビ系バラエティ番組『誰だって波瀾爆笑』(毎週日曜9:55~)をピックアップする。

放送開始は2008年10月と、すでに11年が経過しているが、「日曜朝のトークショー」としての歴史は、さらに長い。故・逸見政孝さんが司会を務めた前々番組『いつみても平平凡凡』のスタートは1991年4月であり、いかに長きに渡って親しまれてきたかが分かるだろう。

今回のゲストは社会学者の古市憲寿。超個性的なパーソナリティとともに、『ワイドナショー』(フジテレビ系)の準レギュラーだけに裏番組でどんな存在感を発揮するのか興味深い。

  • 『誰だって波瀾爆笑』MCの堀尾正明

■大物芸能人が減る中「ゲスト1人」の構成

番組は、2分弱をかけた予告VTRからスタート。その間、画面上部には、「本拠地が東京から埼玉に変わって落胆!?…7人家族でテレビ8台&就職が嫌でノルウェー留学」「空気を読まない社会学者 古市憲寿34歳」と表示されていた。

『サンデージャポン』(TBS系)、『ワイドナショー』(フジ系)という強力なライバルがいるだけに、「ここが勝負」「ガッチリつかもう」という意志を感じる。穏やかな笑いをベースにした牧歌的な番組にしては、ハイテンションなオープニングだった。

古市が登場すると「キャー」の黄色い声援が飛んだ。さらに「今年のテレビ出演本数150本以上。今最もノリに乗っているコメンテーター」「小説を出せば2年連続で芥川賞にノミネート」「女性ファッション雑誌では意外にも結婚に関する連載などもする多彩な34歳の古市さん」「好感度なんて気にしない忖度なしの古市発言は多くの若者から熱い支持」のナレーションでたたみかける。

ただでさえ「大物芸能人が減った」と言われるだけに、ゲスト1人のみをフィーチャーする当番組は、これくらい派手にブランディングするべきなのかもしれない。ただ、それは制作サイドの理屈で、今どきの視聴者には「あおりすぎ」「だからテレビは…」と感じる人も少なくないだろう。

最初のコーナーは、「誰だって波瀾履歴ショー」。履歴書をモチーフにした巨大パネルが登場し、アルコ&ピースの平子祐希が掘り下げながらトークを広げていく。「履歴書をベースに生まれや育ちを順に紹介していく」という形であり、その点で古市は当番組にうってつけのゲストだった。

まず、家族に関しては「家での食事は“冷凍食品バイキング”だった」「食事はバラバラで家族一緒に『いただきます』をしたことがない」「7人家族でテレビ8台」。育った埼玉県に関しては「墨田区の生まれだが、7歳で埼玉に引越しして絶望」「いいところが1つもないし、パスポートに“SAITAMA”と書いてあって凄く嫌」。学校生活に関しては、「体育をやる意味がわからないから見学していた」「勉強ができたので学校を拒否。毎週月曜は勝手に休みにしていた」。発言するたびに驚きと笑いを誘う姿を見る限り、古市は情報番組以上にバラエティ向きに見える。

■むしろバラエティ向きの古市憲寿

さらに古市は、「小さいころからサメ好きで、自分でサメ図鑑を作っていた」「ファンのすべてを食い尽くす印象があってアイドルが苦手だった」「バイト経験はない。人に頭を下げるとかやったことない」「越谷北高校に進学したが、人生で一番つまらなかった」

「楽なAO入試を選び、ポエムで慶応大学に入学した」「就職活動から逃れるためにノルウェーのオスロ大学に1年間留学した」「どうしても就職したくなかったので、東大大学院総合文化研究科に進学した」などと次々に個性的なエピソードを披露。

エピソードを小出しにするタレントとは、一線を画す大放出だった。古市はこの出し惜しみなしの姿勢があるからこそ、『ワイドナショー』でトーク巧者のタレントに混じっても、まったく遜色がないのだろう。裏を返せば、「古市がバラエティの単独ゲストでも成立することを当番組が証明した」とも言える。

この番組は、「堀尾正明、溝端淳平、岡田結実、平子(または小峠英二)の4人が寄ってたかって質問する」という図式でゲストのコメントを引き出す演出だが、この日は古市の独壇場。「ゲストのトークスキルやキャラが微妙だと盛り上がらない」という不安は一切感じさせなかった。

その後、「過去の問題発言をクイズで出題」「憧れの小室哲哉に誕生日を祝ってもらった写真公開」「仕事現場に密着して私服や私物も紹介」「知られざる埼玉の魅力を発掘すべくロケ敢行」とクイズやロケなどを交えてトーク番組としての幅を持たせた。

ただ、「ゲスト1人で90分」の当番組は、同じ日テレのトークバラエティ『おしゃれイズム』が30分であることからも分かるように、幅を持たせたところで、それでもかなりゆるい構成と言える。

■年齢を重ねるほどに愛着が増す

その理由は「日曜午前に家族でゆったりと見てもらう」という狙いがあるから。もともと当番組は「序盤からメイン級のエピソードで飛ばして、中盤あたりから少しずつトーンダウンさせ、11時台からゆるやかにフェードアウトしながら終わる」というイメージが強い。確かに、「トーク番組で90分間エピソード詰め込みっ放し」はキツイが、それ以上に日曜午前のゆるいムードに合わせたいい意味で右肩下がりの構成にしているのではないか。

実際、この日のラストは、埼玉ロケでのゆるいコメントだった。古市は埼玉県民に愛されている中華料理店と、「唯一自信を持ってすすめられる」菓子店で食レポに挑戦。前者ではあまりしゃべらず、後者では「おいしい」を連発したほか、お土産を9,450円も購入していた。

その落差をスタッフからツッコまれた古市は「ラーメンとか正直あんまり食べないんで。丼もの食べないんで。せっかくの1日の摂取できるカロリーを丼とかに使いたくない」と本音をポロリ。オチというには何ともシュールで爆笑はなかったが、それこそ日曜午前のムードにふさわしい。

ゲストによっては、涙や癒やしを誘うシーンもあるが、番組名にある通り最重視されているのは笑い。だからこそ殺伐とした事件や芸能人のスキャンダルを扱う『サンデージャポン』『ワイドナショー』よりも当番組を選ぶ人は少なくないし、視聴率でも同等レベルの結果を得ている。

今年のゲストを切り取ってみても、田中圭、チョコレートプラネットら人気者から、奥田瑛二、中村雅俊らベテラン俳優、細川ふみえ、島崎和歌子ら元アイドル、鈴木雅之、石川さゆりら大御所歌手、高橋大輔、吉田沙保里らアスリートまで、バリエーションは万全。「安定した人気を得ている」から目先の視聴率ばかり追わずにバランスを取れるのだろう。地味だからこそ、見る側が年齢を重ねるほどに愛着が増していく番組とも言える。

■次の“贔屓”は…サザエさんがMC挑戦!世相を振り返る『池上彰×サザエさんSP』

(左から)池上彰氏、サザエさん、天海祐希 (C)長谷川町子美術館 (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、22日に放送されるフジテレビ系特番『池上彰×サザエさんスペシャル お茶の間ニッポン史50の解説でございま~す!』(19:00~22:52)。

国民的アニメ『サザエさん』放送50周年を記念したスペシャル特番。「スタジオにサザエさんが登場し、池上彰とともにアニメ内で描かれた世相を振り返っていく」という斬新なコンセプトであり、興味をそそられる。

さらに、池上がサザエさんに「貯金はしているの?」「マスオが浮気したら?」などと切り込むコーナーもあるという。24日にはスペシャルドラマ『磯野家の人々~20年後のサザエさん~』が放送されることも含め、『サザエさん』というコンテンツそのものも掘り下げていきたい。

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。