テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第38回は、22日(21:00~)に放送された『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK、不定期放送)をピックアップする。

同番組は、座長の内村光良が演じる「NHKゼネラル・エグゼクティブ・プレミアム・マーベラス・ディレクター」の三津谷寛治や、星野源が演じるオモえもんなどの人気キャラを輩出。不定期放送ではあるものの、希少なコント番組として定着している。

今回の放送は、現在放送中の朝ドラ『半分、青い。』のパロディに加え、真裏で放送された『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)とのコラボもあるなど、普段以上に注目を集めていた。民放各局がプライムタイムのコント番組を避ける中、我が道をゆくスタンスで放送を続けているだけに、その方向性や価値を考えていきたい。

「番宣」を超えたパロディコント

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内村光良

オープニングは、東京・麹町の日本テレビスタジオから。「放送65周年記念コラボ」という特別感が一瞬で伝わった。内村ふんする三津谷が『嵐にしやがれ』にゲストとして迎えられ、「NHKなんで」の決めゼリフでひと笑い。「NHKの『LIFE!』で『嵐にしやがれ』を見る」という不思議なオープニングが、視聴者の期待感を加速させたのは間違いない。

ただ、最初のコントはコラボ企画ではなく、『半分、青い。』のパロディ。内村が豊川悦司演じる秋風羽織になりきる『半分、秋風。』だった。ビジュアルの作り込みと、「豊山悦郎、つまり『半分、トヨエツ。』です」のフレーズはいかにも内村らしく、今回も全力投球である様子がうかがえる。

永野芽郁と佐藤健を相手にした長尺コントは、最後に「トヨエツが長髪つながりで武田鉄矢に変わる」というオチで終了。放送されているドラマのパロディであり、本物のキャストを交えてのコントは、ぜいたくであり、何より楽しい。名作パロディ全盛期でテレビと視聴者が相思相愛だった1980年代が戻ってきたかのようだった。セットもスタッフも朝ドラが全面協力していたほか、多くの視聴者が楽しめるこの形であれば、「番宣」と揶揄(やゆ)する人は少ないだろう。

続いて、再び三津谷が登場し、嵐の大野智をおじいちゃんイジり、櫻井翔を『ニュースウオッチ9』(NHK)に勧誘して笑わせる。さらに大野は、スーパーのシチュエーションコントで、嵐がデビュー曲で着ていた半裸衣装でイジられ、『あぶない刑事』(日テレ系)のパロディに挑戦。櫻井は父と息子のコントで、ビシッと決めた白のタキシードを土、水、コンクリートで汚された。

主婦が喜ぶ割引シールをカッコつけながら貼り、柴田恭兵のモノマネで「関係ないね」を披露した大野。「さんざんインテリジェンスと持ち上げておいて、体を張らせるコントだった」というオチの櫻井。いつの時代も人気者ほどコントがハマるし、54歳で彼らとやり合う内村の若々しさを感じた。

MCよりコントをするウッチャンが見たい

『LIFE!』を見ていると、ノスタルジーを感じるのは私だけだろうか。世代的には、『ドリフ大爆笑』(フジテレビ系)のバカ殿様やヒゲダンス、『オレたちひょうきん族』(同)のタケちゃんマンやブラックデビルがキャラクターコントの入り口であり、大いに笑わせてもらった。

しかし、その後は『夢で逢えたら』(フジ系)のムラさん、ポチ&卍丸、『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』(フジ系)の満腹ふとる、九州男児、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日テレ系)のホワイティ、TERU、『笑う犬』シリーズ(フジ系)のミル姉さん、小須田部長……1980年代後半から2000年代前半までは、“ウッチャン”のキャラクターコントを見続けていた。

その意味で『LIFE!』は、当時のデジャヴを見るようでもあり、何も考えず頭を空っぽにして笑うことができる。正直、中には「自分にはハマらないな」と感じるコントもあるが、オムニバスである以上、スルーするのが視聴者のたしなみ。特に固定されたキャラクターを演じるコントは毎週楽しめる連ドラと同じで、演者も視聴者も愛着を抱きやすいだけに、レギュラー放送で見たいと思ってしまう。

奇しくもこの日、『LIFE!』と同じ時間帯にコントの日本一決定戦『キングオブコント2018』(TBS系)が生放送され、こちらも笑わせてもらった。ただ、両者は高校野球とプロ野球のような違った醍醐味があり、お笑い好きにとってはどちらをリアルタイムで見るか迷っただろう。どちらを選んだ人にとっても、キャラクターコントに挑むベテランを見られる『LIFE!』のようなコント番組は貴重な番組だが、プロ野球中継のように「視聴率を獲れないから」という理由で、民放各局で放送されなくなっているのは寂しい。

果たして、「ウッチャンナンチャンや彼らが選んだメンバーのコントを見たい」と思っている人はどのくらいいるのだろうか。毎週が難しいのなら隔週、あるいは月1回、それでも難しければ季節に1回。本人たちのこだわりは当然あるだろうが、日本有数の作家を総動員してでも見せてほしいと思ってしまう。MCという高いポジションで若手を見守るより、現場でコントをしているウッチャンが好き。『LIFE!』は、そんな往年のテレビっ子たちに希望を与えてくれる番組だ。

求められる他局との定期的なコラボ

最後に、『嵐にしやがれ』とのコラボもふれておきたい。コントの『LIFE!』と、週替わり企画の『嵐にしやがれ』では、おのずとコラボの幅は異なる。実際、『嵐にしやがれ』のほうが、コラボの自由度は圧倒的に高かった。

まず「ご飯のお供デスマッチ」に『LIFE!』の三津谷寛治を招いて、“NHKクイズ”をたっぷり出題。三津谷は「これが日テレのやり方か!」「番組というのはゲストを立てるもの」「今度は『VS嵐』に出ます」と通常のゲスト以上にボケを連発。内村は三津谷のコントをやり通し、嵐のメンバーがツッコミを入れ、ともに楽しそうな姿が印象的だった。

その後、「NHKvs日テレ3番勝負」として、最新技術対決、社食ラーメン対決、マスコットキャラクター対決を放送。少なくとも視聴者にとっては、「なかなか見られない企画」であり、「コラボの価値はあった」と言えるだろう。

今回のコラボは、あくまで友好的なものだが、視聴者に比較され、優劣をつけられてしまうのも事実。その意味で、再び野球のたとえになるが、プロ野球のセ・パ交流戦に近いのではないか。交流戦は少しずつ形を変えながら、05年から14年連続で開催され、風物詩としてファンに浸透した。

「テレビ局のライバルは他局なのか?」「ネットコンテンツの脅威にどう対処するか?」という見方が強まる中、「コラボを活性化させて業界発展を図る」のは自然な形にも感じる。すでに自局内の番組でのコラボでは、「単なる抱き合わせ」「見せかけの長時間化」と視聴者にバレはじめているだけに、他局との定期的なコラボが求められているのではないか。

次の“贔屓”は…再放送ですら2ケタ超えの人気番組『チコちゃんに叱られる!』

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『チコちゃんに叱られる!』岡村隆史(左)とチコちゃん

今週後半放送の番組からピックアップする"贔屓"は、28日に放送される『チコちゃんに叱られる』(NHK、毎週金曜19:57~)。

ひと言で表現するなら雑学番組であり、民放ではあまたあるジャンルで珍しさはない。しかし、今年4月のスタートからわずか半年間で、金曜夜の本放送と土曜朝の再放送が、ともに2ケタ視聴率を超える人気番組となっている。

「5歳のチコちゃんが大人の芸能人たちに放つ、『ボーっと生きてんじゃねえよ!』が痛快」なんて声もあるが、本当にそうなのか? さまざまな角度から検証していきたい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。毎月20~25本のコラムを寄稿するほか、解説者の立場で『週刊フジテレビ批評』などにメディア出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日の視聴は20時間(2番組同時を含む)を超え、全国放送の連ドラは全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』『話しかけなくていい!会話術』など。