テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第208回は、23日に放送されたTBSのバラエティ番組『ラフ&クライ! ~笑いのショートプログラム~』(毎週日曜13:30~)をピックアップする。

昨夏と今年元日の特番を経て、9日からレギュラー放送がスタート。「4組がテーマに沿ったショートネタでガチンコバトルし、4位のみ放送されない」というシンプルかつシビアなコンセプトで放送している。さらに、芸人ではないJokerを1組まぎれ込ませ、「芸人たちは絶対に負けられない」というムードを作っている点もポイントの1つだ。

同番組が放送されているバラエティ枠『日曜グランプリ』は、『歌ネタゴングSHOW 爆笑!ターンテーブル』『快答!50面SHOW』『ウッチャン式』『出動!謎ときヒーロー』と全番組が2~3カ月の放送後、ゴールデン特番となっている。『ラフ&クライ!』も、それに続くことが確実視されるだけに、この段階からチェックしておきたい。

  • 『ラフ&クライ! ~笑いのショートプログラム~』MCのロンドンブーツ1号2号・田村淳

    『ラフ&クライ! ~笑いのショートプログラム~』MCのロンドンブーツ1号2号・田村淳

■3組の芸人をなぎ倒すJokerたち

オープニングナレーションは、「天国か、それとも地獄か。挑戦者の4組は番組が用意したプログラムでオリジナルのショートネタを披露。一般投票で最下位になったネタは何と地上波放送なし」。10~50代の男女50人が最も面白い人に投票するといシステムは、何ともフェアであり、だからこそ間口が広い。

すぐに品川庄司・庄司智春、ニッポンの社長(辻、ケツ)、天才ピアニスト(竹内知咲、ますみ)の3組がスタジオに登場。ここにJokerが加わった4組が競い合うことになる。続いてMCの田村淳が「衝撃映像 その後どうなった?」というプログラムを発表。「ロケット打ち上げ失敗後、現場で何が起きていたのか」をネタにするのだが、ここでJokerがJOYであることが発表された。

淳は「強い」などと反応した芸人たちに、「今までの中で言うと(JOYは)弱いよ。『ここは勝ってね』ってことで用意させていただきました」とピシャリ。その直後、これまでJokerとして出演したジローラモ、鈴木奈々、DJ KOO、ラミレス、A.B.C-Z・河合郁人と五関晃一、峯岸みなみ、AKB48・加藤玲奈の写真が映し出された。しかもDJ KOOの金メダル2つを筆頭に、全員がメダルを獲得するなど互角以上の結果を出している。つまり、彼らは本来と同じ意味でJokerなのだろう。

まず3位の銅メダルは、50人中6人が選んだ天才ピアニスト。この順位を聞いた竹内は「幸先悪いな」、ますみも「これ3位なら、あと全部4位な気がしてきた」と分かりやすくヘコんだところで、ネタ映像がスタート。「ロケットが落ちたばかりなのにピザをオーダーする」というネタが終わると、2人の首に銅メダルがかけられた。

その後スタジオでのトークタイムに移り、画面に表示されたのは一般審査員たちのコメント。「良かった点…10代男性:ボケがたくさん詰め込まれてよかった、40代女性:冷静なツッコミがよかった」「悪かった点…30代女性:若干先が読めた、30代男性:チーズオチかぁ、50代女性:あんまり良くない行動ですよね」などのコメントが表示された。

驚かされたのは、コメント数が先週までの倍以上に増えていたこと。しかもMCの淳が自ら読み上げる形でフィーチャーされていた。「一般審査員のコメントが面白いからもっと見せよう」「コメントをスタジオトークの笑いにつなげよう」という意図なのだろうか。

■JOYの惨敗から見えてきたもの

2位の銀メダルは、50人中9人が選んだ庄司。裸の庄司がロケットを受け止めて宇宙に投げるというネタで、「良かった点…20代女性:CGが良かった、30代女性:絶対ミキティって叫ぶと思ったらまさかのノーミキティ」「悪かった点…10代女性:私でも考えられそう」が表示された。

天才ピアニストはショートコントとして作り込み、庄司は一発ギャグ的な力技という対照的なネタを見せ、残るはニッポンの社長とJOY。「さすがにニッポンの社長だろう」と思わせる中……1位の金メダルは50人中34人が選んだニッポンの社長だった。

彼らのネタは、不謹慎だけどロケットの落ち方に笑いが止まらず悪ノリし続けるというもの。「良かった点…20代男性:笑ってはいけない状況で笑いがより増幅した、40代女性:ホリエモンのオチがよかった、50代男性:劇団とかにいる方ですか?」が表示された。

最後のコメントに辻は「一応、お笑いの人です」、ケツが「吉本興業です」と受けていたが、最後にボケ風味のものを加えて、スタジオトークの笑いを誘う構成なのかもしれない。

この結果を受けた淳は「スタジオでメダルがそろう(芸人が金銀銅を独占し、Jokerが最下位)のはなかなかレアなケースなんで」と笑っていたが、確かにこの番組は「芸人が素人のJokerに負けて放送されない」というケースが大半を占めている。ただ、淳が「気になりますよね。何をしたら50人中1人なのか」と言ったように、今回はJOYが弱すぎたのだろう。

時にはこういう展開があってもいいが、やはり芸人が悔しがらない展開は盛り上がりに欠ける。JOYの惨敗で「Jokerの人選が番組の肝であること」「DJ KOOや鈴木奈々レベルのJokerを毎週連れてこなければ盛り上がりにくい」ことが明らかになった。