テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第184回は、7月31日に放送されたテレビ朝日系バラエティ特番『世界が驚いたニッポン!スゴ~イデスネ!!視察団「最強ジャパンスイーツ!」ベスト40大決定 3時間SP』(18:56~21:54)をピックアップする。

東京オリンピック真っただ中の土曜夜にテレ朝が選んだのは、スイーツ。しかも、外国人516人が選んだ「最強ジャパンスイーツ」ベスト40を決めるという。オリンピック関係で多くの外国人が来日する中、さまざまなランキング企画を連発するテレビ朝日がどんな構成・演出で挑むのか。

  • 『世界が驚いたニッポン!スゴ~イデスネ!!視察団』MCの爆笑問題

■製造工程を見せる家族向けの構成

オープニングでは、どら焼き、チーズケーキ、かき氷の映像が流れ、ナビゲーター役の綾小路きみまろが「お団子にケーキ、おせんべいやスナック菓子……今夜はニッポンのおいしいお菓子、ジャパンスイーツの魅力に迫ります」と語りかけた。

さらに、「2021年 夏の一斉調査!」と掲げつつ、「日本に住んで1年以上の外国人516名に聞いた、いま世界が認める日本のお菓子ランキングが決定」と派手にぶち上げた。オリンピックに負けないお祭りムードを醸し出そうという感がうかがえる。

早速ランキングがスタート。40位は“和菓子”のジャンルから桜餅が選ばれた。まずはイタリア料理店のオーナーシェフ(日本在住22年)と、ベラルーシ家庭料理のシェフ(在住20年)が愛情たっぷりのコメントを披露。続いて、来年使う桜餅の葉は今が収穫シーズンであり、半年かけて塩漬けする様子を現地取材とイラストを交えて紹介した。

39位は“米菓”から「雪の宿」。ブラジル人主婦の推薦コメントに加えて、三幸製菓社員のインタビュー、“テレビ初公開”というせんべいに雪化粧する工程が映された。お気に入りの理由だけでなく、製造工程を見せつつ、独自の工夫や努力を押し出した、いかにもファミリー層狙いのオーソドックスな構成だ。

ここで一旦ランキングを小休止して、スタジオのメンバーが1位を予想。麒麟・川島明が「雪見だいふく」、山之内が「じゃがりこ」、美 少年・浮所飛貴が「まだ決めてません」と思い思いのコメントをしていたが、これも視聴者に予想を楽しんでもらうための演出だろう。

驚かされたのは今回のランキングに、和菓子、洋菓子、チョコ菓子、クッキー、キャンディー、アイス、米菓、お土産、スナックという計9ジャンルが含まれていたこと。どうやら「スイーツ=甘いもの」というわけではなかったらしい。

■何でもアリは『総選挙』との差別化か

38位は“米菓”からニュージーランドの主婦(在住19年) が推薦する「歌舞伎揚」。37位は“キャンディー”からアメリカ人女優・ナレーター(在住30年)、アメリカ人大学教授(在住52年)が推薦する「ハイチュウ」。

ここで「日本在住数十年の外国人は、もはや日本人の感覚に近いのでは?」という疑問が浮かんでしまった。それだけにこの先のランキングは、日本人と似たものなのか、それとも外国人らしさが表れたものになるのか。

続く36位は“洋菓子”からチーズケーキで、35位も“洋菓子”からショートケーキ。洋菓子店の名前でも、菓子メーカーの商品名でもなく、「日本のチーズケーキ」「日本のショートケーキ」というざっくりとしたくくりだった。ジャンル別のランキングではなく、ざっくりとしたくくりと個別の商品をごちゃ混ぜにした「何でもアリ」のランキングにした理由は、1年前に同じテレ朝が放送した『お菓子総選挙』との差別化なのだろうか。

その後のランキングを挙げていくと、34位は“チョコ菓子”から「明治ミルクチョコレート」。33位は“和菓子”から、かりんとう。32位は“クッキー”から「ルマンド」。31位は“米菓”から「ハッピーターン」。やはり、かりんとうの存在が浮いている……。

30位は“和菓子”からカステラ。29位は“お土産”から生八ツ橋。28位は“お土産”から「東京ばな奈」。27位は“和菓子”から、みたらし団子。26位は“アイス”から、かき氷。25位は“チョコ菓子”から「明治アーモンドチョコレート」。24位は“チョコ菓子”から「コアラのマーチ」。23位は“クッキー”から「カントリーマアム」。22位は“チョコ菓子”から「きのこの山」。21位は“チョコ菓子”から「たけのこの里」。意地悪な見方かもしれないが、本当に「きのことたけのこの順位が並んでいるのか?」と思った人は多いのではないか。

20位は“お土産”から「白い恋人」。19位は“チョコ菓子”から「アルフォート」。18位は“チョコ菓子”から「ブラックサンダー」。17位は“和菓子”から、ようかん。16位は“チョコ菓子”から「チョコパイ」。15位は“アイス”から「ガリガリ君」。14位は“スナック”から「かっぱえびせん」。13位は“洋菓子”からシュークリーム。12位は“アイス”から「雪見だいふく」。11位は“米菓”から「柿の種」。

10位は“スナック”から「カラムーチョ」。9位は“スナック”から「うまい棒」。8位は“和菓子”から、わらび餅。7位は“和菓子”から、どら焼き。6位は“和菓子”から、たい焼き。5位は“スナック”から「じゃがりこ」。4位は“チョコ菓子”から「ポッキー」。3位は“チョコ菓子”から「キットカット」。2位は“スナック”からポテトチップス。注目の1位は“和菓子”から大福(いちご大福)だった。

■臨場感のある風物詩的な特番に

この結果を受けたウエンツ瑛士は、「日本人の方でアンケート取ったときに果たして大福が1位に来るかどうか」と驚いていたが、あまりに何でもアリのため、「じゃあ何が1位なのか」が浮かんでこない。日本人も日本在住の外国人も、はたしてこのランキングに納得できるのだろうか。

ただ、見方を変えれば、「ランキングは視聴者を引きつけるためのコンセプトに過ぎず、本当の目的は日本商品の礼賛にある」ということなのかもしれない。実際エンディングでは、羽田美智子が「あらためて日本のスナック菓子とかのレベルの高さ。職人さんとかがあんなにこだわって作っていらっしゃるって全然知らなかった」「いい国に生まれたな……って思いました」とコメントしていた。

さらに、川島明が「日本のすごいところは、こんだけこだわったものをほとんどコンビニで買えるってこと」と呼応し、最後も羽田が「私たちが好きなものが外国の方にも受け入れてもらっているってうれしいし、おいしいものは世界の壁を越えるんですね」というコメントで番組は終了した。

「オリンピックで国への意識が高まっている時期だからこそ、外国人たちから礼賛されることを楽しんでもらおう」という狙いは納得できる。しかし、前述したようにジャンルのあいまいさや、納得感の低いランキングが、礼賛される気持ちよさを削いでいた気がしてならない。

外国人だけでなく、スイーツ研究家やフードプロデューサーなどのコメントをしっかり取るなどの丁寧な仕事ぶりは随所に感じたし、天然氷の製造過程をドキュメントタッチで描いたり、「ランクインしたのは何の商品か」を当てる工場視察クイズを設定したりなどの飽きさせない工夫も見られた。

ただその一方で、「コアラのマーチ」の絵柄、「きのこの山」のチョコ2層構造、「ガリガリ君」のキャラクターデザイン変更など、「見たことがある」というものが多かったのも事実。それは同じテレ朝の『お菓子総選挙』なのかもしれないし、『シルシルミシル』などかもしれないし、あるいは他局の番組かもしれない。「40位まで発表」「3時間特番」という長さも含めて、制作サイドの事情や都合が優先された結果、供給過剰になったのではないか。

ランキングや「総選挙」のシリーズが悪いということではなく、たとえば2年に一度、開催月を固定した上で放送すれば、季節の風物詩的な特番として印象づけられる気がしてならない。さらに言えば、「『M-1グランプリ』のように生放送での発表なら、「関係者のハラハラドキドキも含めて盛り上がるのでは?」と思ってしまった。

■次の“贔屓”は…熱戦を締めくくる閉会式を生中継! 『東京2020オリンピック 閉会式』

閉会式が行われる国立競技場=東京・新宿区

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、8日に放送されるNHK『東京2020オリンピック 閉会式』(18:30~22:30)。

17日間にわたる熱戦がついに終わり、閉会式が放送される。開会式は直前までトラブル続きながらも中継はおおむね好評だったが、「Worlds We Share」をテーマに掲げた閉会式はどうなのか。

民放各局の放送も含めて、自国開催のオリンピック中継も振り返っておきたい。