テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第142回は、3日に放送された日本テレビ系バラエティ番組『I LOVEみんなのどうぶつ園』をピックアップする。

『天才!志村どうぶつ園』が16年半の歴史に幕を閉じた翌週、早くもスタートする新番組であり、そのコンセプトは「相葉雅紀が学び、培ってきた経験と優しい目線で、動物たち1匹1匹の個性をリアルに、丁寧に描いていく」というもの。

「大黒柱の志村けんさんを失う」というピンチをチャンスに変えることができるのか。「変えるところと変えないところ」などの細部までチェックしていきたい。

  • 『I LOVEみんなのどうぶつ園』(C)NTV

■「スタジオなし、オールロケ」に激変

オープニングのナレーションは、「動物はみんな僕らの仲間。日本中、世界中、動物がいる場所がみんなの動物園。その現場へ……I LOVEみんなの動物園」。その声に合わせて相葉が、番組のシンボルとなるであろう動物が描かれたトレーラーに絵を描いている。

さらに「動物がいるところがスタジオ」という相葉のコメントをフォローするように、「そう、毎回世界中の動物たちがいる現場から。決めているのはそれくらい」というナレーションが流れた。つまり、「スタジオセットは準備せず、アクティブにロケをしていこう」という方針であり、『志村どうぶつ園』からの大きな変化にほかならない。まだまだコロナ禍でロケのしづらい中、勇気ある方針に驚かされた。

最初のロケ地は、千葉県のサユリワールドと市原ぞうの国。動物とのふれ合いがテーマのスポットであり、初回のロケ地にふさわしく、相葉の持ち味も引き出されそうだ。

多くの動物からピックアップされたのは、意外にもアカカンガルー。まず『志村どうぶつ園』で相葉とカンガルーがふれ合った過去映像を見せ、「胸を強めにゴシゴシすると喜ぶ」「オス同士が縄張りを争う」「時速65㎞で走り、ジャンプは最大9m」などの豆知識を紹介していく。さらに、相葉がカンガルーからみぞおちに強烈なキックを受けてしまい、「相葉の教え カンガルーは正面に立つな」のテロップで笑わせたシーンは、いかにも彼らしい。続いて、ゲストの横浜流星と橋本環奈がアカカンガルーとふれ合うシーンが放送された。

ここで映像が切り替わり、番組オリジナルトレーラー・どうぶつ園号の紹介がスタート。「世界中の動物園や水族館をはじめSNS、YouTubeなどのあらゆる動画コンテンツから、今話題の動物情報が集まってくる」という設定が明かされる。

どうぶつ園号は、その他にも「天窓が開いて野生動物を間近で観察したり、スーツケースがベッドになって張り込みができたり、窓からドローンが飛び出して動物を楽しませたり、謎のボタンを押すとさまざまなエサが出てくるなどの仕掛けが満載。「このトレーラーを相葉の相棒として人気者にしていこう」という意図が伝わってくる。

■明るく楽しいだけじゃないDNA

トレーラーに集まる動物情報の中から最初にピックアップされたのは、何とアンガールズ・田中卓志の実家。実母が登場し、「家の中にツバメの巣が10個あり、30羽も巣立ったのに現在も45羽いる」「ヘビからヒナを守るために窓を開けて招き入れるようになった」ことなどを明かした。

もう1つ「家が水族館(のように多くの魚を飼っている)」の高校生・饗場空璃(あいばそらり)くんがバショウカジキの幼魚を見せる動画を流したあと、レギュラー企画の「カンナのおっきい動物とちっちゃい動物飼ってみた」へ。『志村どうぶつ園』でもよく見られた「動物と芸能人が一緒に暮らす」という人気企画だけに、しばらくは番組をけん引するコーナーになるだろう。

第1弾の動物は3匹のカピバラで、橋本は「将軍」「おチビちゃん」「タタミさん」と命名し、気持ちよくなると毛が逆立つ様子や、「クルクル」という鳴き声などの魅力を紹介。タレントは「全然知らない」という体で動物とふれ合い、ナレーションで「生態を解説していく」という実にわかりやすい構図のコーナーだった。

橋本がカピバラに水浴びをさせているところに相葉と桝太一アナが現れ、さらに横浜流星も合流。4人で150㎝の子ゾウに会うために、市原ぞうの国へ行くという。……となると、冒頭のアカカンガルーとのふれ合いは放送順がおかしいが、番組の最初に相葉が動物とふれ合うシーンを視聴者に見せて、「こういう番組です」と印象づけたかったのではないか。

4人がワオキツネザルとふれ合い、カバのASMR(咀嚼音)を録音し、レッサーパンダにエサをあげるシーンが放送されたあと、2つ目のレギュラー企画「自然豊かな里山で日本犬を育てる。6匹の天然記念物と藤岡弘、ご一家物語」へ。

父・藤岡弘、が長女・愛、長男・真威人、次女・天音、三女・舞衣に、「いいかい、みんな。日本犬は国の宝。天然記念物だ。だから絶対に種を絶やさないように大切にお世話するんだぞ。いいね?」と呼びかけた。ここではじめて社会的意義を感じさせるテーマが登場したが、このような「明るく楽しいだけじゃない企画」こそ『志村どうぶつ園』のDNAにほかならない。

さらに父・弘、は、甲斐犬に「つきみ」、柴犬に「てまり」、秋田犬に「琴」、紀州犬に「ゆり姫」と名付けたが、北海道犬と四国犬は不在。希少ゆえに子犬が準備できなかったのかもしれないが、「産まれるところから子どもたちや視聴者に見せられる」というメリットもある。かつて『志村どうぶつ園』にも「日本犬の里」というほぼ同じコーナーがあったが、今回は本当の親子を起用した点が、進化と言えるかもしれない。

■相葉が番組を引き継ぐための儀式

再び相葉たちのいる市原ぞうの国に映像が戻り、150㎝の子ゾウが登場。相葉が率先して子ゾウにふれ合うが、鼻で股間を吸われたあげく、パンチをくらってしまった。今後もこうした「親しみやすい相葉ちゃん」というシーンを盛り込んで、番組の軸にしていくのではないか。

そして、初回2時間SPの最後に選ばれたコーナーは、志村けんさんの愛犬。「新番組のスタートにあたって相葉がどうしても確かめておきたい」こととして、志村さんの家政婦だった星野さんを訪ねて話を聞いた。

星野さんによると、愛犬2匹は帰ってこない志村さんを必死に探し、玄関で待っていたが、特に柴犬の“殿”はエサと水を拒否し、階段の下から2日間出てこず散歩にも行かないなど深刻な状態。しかし、星野さんの子どもたちが毎日呼びかけたことで散歩へ行けるようになり、引き取ることになったという。その後、相葉は殿と対面し、志村さんからほめられたシャンプーをはじめた。

相葉は『志村どうぶつ園』で、飼育放棄などで悲しい思いをした犬たちにシャンプーをしてきたが、同じように悲しい思いをしている志村さんの愛犬にもそれができたこのシーンの意味は深い。相葉にしてみれば、「これでようやく番組を引き継ぐことができる」と思うための儀式だったのかもしれない。

あらためて番組全体を振り返ると、「ツバメが巣をつくる場所と理由。巣と外を1日300往復するから行動範囲は半径200~300m程度」「カピバラは天敵に気づかれないように気配を消しているが、危険を感じると時速50㎞で走る。和名はオニテンジクネズミ」「レッサーパンダはかかとがあるから立てる」など、動物の生態に関する情報量の多さが目立った。ここ数年『志村どうぶつ園』は動物愛護的な社会派コーナーが増えていたが、『I LOVEみんなの動物園』はもう少しライトで、「親が子どもに見せたい番組」というレベルに留めている。

ともあれ、初回は番組の方向性を示し、「レギュラーコーナーの顔見せ」という印象に留めていた。いい意味でこれといった目玉企画や派手な演出などはなく、それよりも牧歌的なムードに徹したのだろう。その牧歌的なムードは相葉のカラーそのものとも言える。

まだ初回放送のみだが、この番組はポジティブな意味で「『志村どうぶつ園』を相葉のカラーに塗り替えただけ」なのかもしれない。そのため、番組をけん引するのは相葉であり、「責任を一手に担っている」ように見えるが、だからこそ「頭にバッタがついたことに気づかず進行する」というシーンが気になってしまった。相葉を前面に押し出すのはいいのだが、「いい人」「かわいい」「抜けている」などのイメージを誘導する作為的な演出は諸刃の剣であり、やりすぎないことを祈りたい。

■次の“贔屓”は…弘中綾香アナは土曜夜の顔となるか?『あざとくて』『ノブナカ』

テレビ朝日の弘中綾香アナウンサー

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、10日に放送されるテレビ朝日系バラエティ番組『あざとくて何が悪いの?』(毎週土曜21:55~)、『ノブナカなんなん?』(毎週土曜22:25~)。

この日から土曜夜にレギュラー放送されることになった2つの番組をピックアップ。特筆すべきは、両番組ともに弘中綾香アナが中軸を担うトーク番組であり、その期待にどう応えていくのか注目が集まるはずだ。

また、プライムタイムの大半が1時間以上の番組が占める中、「関連性のある30分番組を2本並べる」という戦略はどうなのか。まずは初回放送をチェックしてみたい。