テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第121回は、10日に放送されたTBS系バラエティ番組『アッコにおまかせ!』(毎週日曜11:45~)をピックアップする。

1985年から35年にわたって放送されている長寿番組であり、和田アキ子唯一のテレビレギュラー番組。和田は先日発表された『週刊女性』恒例の「嫌いな女性芸能人ランキング2020」で3度目の1位に選ばれてしまったが、この番組による影響は少なくないだろう。今回の放送で、その理由が見つかるのか。

休日の情報番組で、巨大パネルを使う…。土日にも朝から夜まで同系の番組が増えた上に、『NHKのど自慢』(NHK)、『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)、『なりゆき街道旅』(フジテレビ系)とターゲット層がかぶりそうな裏番組が多い中、老舗番組ならではの強みはどこにあるのか。一部で嫌われながらも放送され続ける秘けつを探っていきたい。

  • 和田アキ子

■番組冒頭、視聴者に感謝するアッコ

番組スタートとともに和田アキ子と峰竜太がスタジオに現れ、和田が「どうもこんにちは。今日もご覧なっていただいてありがとうございます。今日も生放送でお送りします。アッコにおまかせ!」とおなじみのポーズを決めた。いの一番に視聴者への感謝を述べる振る舞いは、いかにもベテランらしく、嫌われるどころか好感が持てる。

続いて峰が別室からリモート出演している勝俣州和、IKKO、カミナリを紹介すると、和田は「枠の中に入るとこじんまりしちゃって、小さいのか大きいのか、太ってるのか痩せてるのか、全然わからない」と笑顔でボヤいて笑わせた。確かにその通り、リモート出演しているタレントの姿にはすっかり慣れたが、「やはり勢いや元気、華やオーラは感じにくい」という印象がある。

すぐに最初のコーナー「おまかせ!ニュースランキングTOP10」がスタート。10~50代男女300人に「1週間に起きたニュースの中で何に関心があったのか」を尋ねるアンケートをもとにしたランキングであり、現在のメインコーナーとなっている。

10位「新型コロナによる肺炎で入院していた赤江珠緒アナ(45)が退院」関心度13%
9位「愛知県が新型コロナウイルス感染者の個人情報を誤ってホームページに掲載」関心度14%
8位「ダウンタウン松本人志(56) 後輩芸人救済に総額10億円を貸し付け!?」関心度15%
7位「新型コロナウイルス 世界の感染者数が400万人を超える」関心度16%
6位「東京ディズニーランド 東京ディズニーシー休園期間を延長」関心度20%
5位「関東で2夜連続 緊急地震速報」関心度22%
4位「新型コロナウイルス 東京の新規感染者 7日連続で100人を下回る」関心度23%
3位「営業を再開した都内の一部パチンコ店に行列」関心度28%
2位「新型コロナウイルスの治療薬 木曜 レムデシビル 日本で正式承認」関心度36%
1位「緊急事態宣言 今月31日まで延長」関心度44%

冒頭の約20分間をかけて一気に発表したが、この間にランキング外の「ロバが大脱走」「羽生結弦(25) 動画公開 311秒に込めた想い」「桑田佳祐(64) 楽曲披露 感染拡大 自粛生活への想い」などのほっこり&感動ニュースも紹介していた。ランキング内がすべて重いニュースだっただけにバランスを取ったのだろうか。

和田をはじめ出演者たちは、画面右上のワイプに表情が映っているだけで音声はなし。シリアスなニュースばかりの今、険しい表情が映るだけのワイプは誰も得しないものであり、必要ないはずだ。

■パワハラではなくMCとしての気配り

ランキングが終わってスタジオに戻ると、感染症の専門家として長野保健医療大学特任教授の北村義浩氏が登場。しかし、なぜか「幸せなニュースが入って参りました」と小林廣輝アナが割って入り、「室井佑月が結婚予定」のニュースを紹介した。

番組の準レギュラーとしての配慮だろうが、視聴者にとっては猛烈な唐突感。和田は、室井から報告を受けたエピソードを明かし、「テレビ越しにごめんね。勝手に使っちゃってすいません。おめでとう。よかったね」とコメントした。さらに「『ひょっとしたら新潟行くかもわかんない』って言ってた。あんまり私が言うとよくないんだけど」と笑っていたが、こんな“ひと言多い”感じのトークが、生放送の醍醐味であり、嫌いな人もいるところだろう。

さらに「ちょっと変な感じだけど、IKKOって結婚する気あるの?」とブッコミを入れて、「どんだけ~」を引き出した。アンチにはこういったくだりがパワハラに見えるのかもしれないが、コメントのタイミングが難しい生放送で出演者にトークチャンスを与えるMCとしての気配りに他ならない。

その後、話題は新型コロナウイルスに移り、緊急事態宣言、37.5度以上の受診目安、治療薬・レムデシビルなどについて「出演者全員が北村氏に質問する」というシンプルな図式で番組が進んでいった。専門家だけでなく多くのコメンテーターが持論を話しがちな他の番組よりも見やすい一方、1人の専門家を信じ切り、責任を委ねるというリスクも感じさせる。

その中で和田は、誰よりも視聴者目線で話し、その上で進行していこうとする姿勢を見せていた。たとえば、「マネージャーの奥様が38度の熱が出まして、でも発熱症状があると診てくれないんですよ」というエピソードを話し、北村氏から「誤解を解いておくと…」と正しいであろう情報を引き出した上で、「ああそうですか。安心しました。ありがとうございます」と感謝。

さらに、「個人的なお名前を出して申し訳ないんですけど、フリーアナの赤江(珠緒)さんはアビガンを打たれて退院されました。一方、石田純一くんは今、副作用で血管が硬くなってるって…よくわからないですね」などと話し、北村氏から「男性の方が重篤化しやすい、あるいは退院までの期間が長いと言われているので要注意ですね」という見出し級のコメントを引き出した。ランキングを見た視聴者が「あれっ?」と思ったことを自らサッと尋ねられるのは、長年の経験が物を言っているからではないか。

■失敗しても引きずらないメンタリティ

その他にも和田は、「北村先生はものすごいことをバッと言われるんですよ。『(先週の報道で)来年のオリンピックはない』とかね」と話したが、すかさず小林アナから「北村先生、『オリンピックがない』のではなく、『通常通りの開催は難しい』とおっしゃられました」と訂正が入り、「すいません。私が間違えました。失礼いたしました」と平謝り。

また、ガンガン前に出て質問を続けるIKKOに「今日、ようしゃべるねえ」とツッコミを入れつつ、カミナリの竹内まなぶに「キミら何してんの?」と奮起を促し、まなぶがマジメなコメントをしたら「キミ、お笑い全然なしやな」と斬り捨てて笑わせた。構成的にどうしても笑いどころは少なくなってしまうのだが、それでも採り入れなければ、という姿勢だろうか。

謝りも、ツッコミも、斬り捨てるのも、すべて生放送らしいライブ感があり、コメントや進行がうまくいってもいかなくても引きずらず次のトークに進むメンタリティは、何とも頼もしい。和田は極度のあがり症を公言しているが、舞台に上がってしまえば、その勝負強さは大御所にふさわしいものがあるのだろう。

その後、出演者や土屋太鳳、一般人の“おうち動画”を紹介して番組は終了。エンディングで和田は「今日も本当に身近な質問ばっかりぶつけましたけど、(北村)先生、ちゃんと答えていただきましてありがとうございました。ちょっと衝撃的な「(新しい生活様式を続ける期間は)あと3年」ということもありましたけど、毎週言ってますが、みなさん手洗い、うがい、消毒、そして気持ちを前向きに持って来週も元気にお会いしましょう。アッコにおまかせ!」と再びポーズを決めて締めくくった。

正直なところ、ザッピングせずに通しで見たのは久々だったが、「和田のアクションとリアクションを見せる番組」という印象は変わっていない。しかし、世の中が新型コロナウイルス一色の状況だけに、“自分も当事者の1人として視聴者に寄り添ったスタンスを心がけよう”という様子が伝わってきた。過去には何度か失言が取りざたされることもあったが、少なくともこの日の放送を見て「嫌い」という人は色眼鏡で見ているからであり、それも存在感の大きさへの反発ではないか。

試しに1.3倍速で番組を見直してみたら、和田の声だけが圧倒的に聞き取りやすかった。やはり歌手であり、あまり語られていないが、その声は生放送の司会者を続ける上での大きな武器になっているのだろう。生放送にふさわしい声を保ち続けるプロ意識は、もっと称えられていい気がする。

近年、1週間のニュースを扱う土日の情報番組が、雨後の筍のように増えた。その意味では日曜昼と放送順の遅い『アッコにおまかせ!』のアドバンテージは、もはやないのかもしれない。さらに、新型コロナウイルスの影響で重苦しいムードに覆われているからこそ、かつてのような明るいゲームやトークのコーナーを見てみたい感もある。

ただ、どんな形に変わったとしても、司会者・スタッフともに放送35年の歴史は色あせず、伊達じゃない。最長寿の生放送バラエティでもあり、番組が続いていくこと自体が意義深く、その意味で4月10日に70歳の節目を迎えた和田の健康を願わずにはいられない。

■次の“贔屓”は…まさかのフジ『坂上どうぶつ王国』コラボ! 『池の水ぜんぶ抜く』

(左から)田中直樹、田村淳、坂上忍、伊達みきお、富澤たけし=テレビ東京提供

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、17日に放送されるテレビ東京系バラエティ番組『緊急SOS! 池の水ぜんぶ抜く大作戦 あの大物芸能人が所有する巨大池を抜く』(19:54~21:54)。

17年1月の特番スタートから、18年4月の月1レギュラー化を経て、すでに30回の放送を数えるなど、テレ東の看板番組と言ってもいいだろう。しかも今回は、フジテレビ『坂上どうぶつ王国』とのコラボであり、坂上忍やサンドウィッチマンも参戦するという異例の放送。坂上が動物の保護施設用に購入した土地の巨大池は「番組史上最悪のヘドロ地獄」であり、「最恐モンスター捕獲の瞬間15連発!」というだけに期待が募る。

「新型コロナウイルスの影響で各局が厳しい対応を迫られている」「しかし、外出自粛でテレビ番組の視聴機会が増えている」などと番組制作をめぐる状況が動いているときだけに、局の垣根を越えたコラボの可能性も追求していきたい。

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。