相模鉄道は横浜~海老名間を結ぶ本線と、二俣川駅から分岐して湘南台駅に至るいずみ野線を運行している。2019年度下期にJR線、2022年度下期に東急線と相互直通運転を開始する予定で、本線の西谷駅から羽沢横浜国大駅を経由し、日吉駅へ新線を建設中だ。上下分離方式を採用し、西谷~新横浜(仮称)間は相模鉄道、新横浜(仮称)~日吉間は東急電鉄が運営するという。

  • 相鉄・JR直通線は2019年度下期、相鉄・東急直通線は2022年度下期に開業予定

相模鉄道にとって、この新路線は本線・いずみ野線に続く第3の路線だ……と思ったら異論有り。相模鉄道には、路線図に描かれていない「第3の路線」がある。その名は厚木線。本線の海老名駅付近から分岐し、JR相模線と並行して厚木操車場に至る2.2kmの路線だ。当初は旅客営業を行い、後に貨物線となった。

厚木線を含む厚木~二俣川間は1926(大正15)年、神中鉄道の路線として開業した。その後、神中鉄道は小田急電鉄と直通するため、途中の相模国分駅(現・相模国分信号所)から分岐して海老名駅を結ぶ路線を建設。旅客列車はすべて海老名駅経由となり、相模国分~厚木間は貨物線となった。後に神中鉄道は相模鉄道(現・JR相模線)に吸収合併され、厚木線は相模鉄道厚木線に、神中鉄道本線は相模鉄道神中線となる。

  • 相模鉄道厚木線の位置(国土地理院地図を加工)

戦時中に相模鉄道の本線は国有化され、相模鉄道は神中線と厚木線を運営する会社になった。その後、1976年にいずみ野線が開業し、1999年に湘南台駅まで全通して現在の路線図となっている。本線・厚木線より後に開業したという点では、いずみ野線のほうが「第3の路線」といえるかもしれない。ただし、厚木線は貨物線のため、旅客案内の路線図には表示されない。

厚木線は貨物線として、かつて米軍基地へ航空燃料の輸送も行っていたけれど、1998年に終了している。それでもこの路線が廃止されない理由は、相模鉄道と鉄道車両メーカーの「橋渡し」を行う役割を担っているからだろう。

相模鉄道の新型車両は車両メーカーを出発した後、貨物列車として機関車に引っ張られ、JR相模線・相鉄厚木線経由で搬入される。今年デビューした相鉄・東急直通線の新型車両20000系に続き、今後は相鉄・JR直通線の新型車両12000系が導入される予定で、新型車両を搬入するルートとして、厚木線の活躍の機会がさらに増えるかもしれない。

なお、相模鉄道は2015年・2016年に夏休み企画として「相鉄厚木線 乗車体験会」を開催している。本線のかしわ台駅を出発し、厚木線に入って厚木操車場まで往復するルートで3往復した。1回につき500名が乗車できたという。2017年以降は開催されていないけれど、新型車両の導入などが落ち着いたところで、ぜひ復活させてほしいイベントだ。