相模鉄道が相鉄・東急直通線の車両として製造した新型車両20000系。2月11日の営業運転開始を前に、1月17日に発表会が行われた。かしわ台車両センターにてお披露目され、車両概要の説明も行われた。

  • 相模鉄道の新型車両20000系。発表会に相模鉄道代表取締役社長の滝澤秀之氏が出席し、同社キャラクター「そうにゃん」も登場

新型車両20000系のセレモニーには相模鉄道代表取締役社長の滝澤秀之氏が出席し、同社キャラクター「そうにゃん」とともにアンベールを行った。滝澤氏は挨拶の中で、20000系について「当社社員の思いが詰まった自慢の車両。『醸成するデザイン』をテーマに、トレンドに左右されないという方針の下、『安全×安心×エレガント』をめざして開発しました。相模鉄道を利用する皆様に喜んでいただくとともに、当社沿線に対する親しみや愛着がさらに深まるのではないかと期待しています」と述べた。

JR線直通より先に東急線直通の車両を新造、理由は?

セレモニーに先立ち行われた記者発表会では、まず映像で新型車両20000系を紹介。第1編成は山口県下松市の日立製作所 笠戸事業所にて約9カ月かけて製造され、組立・塗装・配線・配管作業などの工程を経て昨年7月に完成した。7月31日に笠戸事業所を出場し、JR線経由で約950km離れた神奈川県のかしわ台車両センターへ輸送された。

続いて相模鉄道運輸車両部の関根雅人氏が車両概要の説明を行い、新型車両20000系について「東急線への直通運転を念頭に置いて製造され、デザインブランドアッププロジェクトに則った初の完全新造車両として、当社の新たな100年を担う存在と位置づけています」と紹介した。製造にあたって課題も多かったとのことで、「JR線・東急線へ2つの直通プロジェクトを進めていく中で、これら2社の車両の規格が大きく異なっていることがとくに大きな課題となりました」と話した。

他にも「東急線へ直通する際、前面に避難用の貫通扉が必要となります」「乗務員室もJR線・東急線向けでハンドルの形やスイッチの配置が異なります」などさまざまな課題があり、「これらをひとつの車両で解決しようとすると、首都圏の多くの鉄道事業者と話し合いをしなければならない状況です。今回は目的別に最適化した車両を作ろうということで、まず東急線乗入れに対応した20000系から製作しました」とのことだった。

相鉄・JR直通線(2019年度下期開業予定)より先に相鉄・東急直通線(2022年度下期開業予定)の車両を新造した経緯にも言及。「開業年次はJR直通線が先ですが、JR線は当社線と規格が大きく変わらないこともあり、また東急線乗入れにあたり、当社において例のない装置を入れる必要もありました。試験・訓練の期間も考慮し、(相鉄・東急直通線の)開業まで5年程度ある現時点で東急相直の車両を入れることになりました」と説明した。

直通運転の制約を感じさせない外観・車内デザイン

新型車両20000系の諸元表によれば、車両型式は1号車(横浜方)から「クハ20100」(Tc2)・「モハ20200」(M1)・「サハ20300」(T1)・「モハ20400」(M2)・「モハ20500」(M3)・「サハ20600」(T2)・「モハ20700」(M4)・「サハ20800」(T3)・「モハ20900」(M5)・「クハ20000」(Tc1)とのこと。第1編成の車体側面には、1号車から「20101」「20201」「20301」「20401」「20501」「20601」「20701」「20801」「20901」「20001」と番号が記されてあった。

  • 「デザインブランドアッププロジェクト」初の完全新造車両となる20000系。外観は「ヨコハマネイビーブルー」1色の塗装に

車体長は先頭車が19,970mm(最大20,470mm)、中間車が19,950mm(最大20,000mm)。車体幅2,770mm(最大2,787mm)、屋根高さ3,625mm(クーラー部4,065mm、パンタ折り畳み4,080mm)、床面高さ1,130mmとされた。重量は先頭車(1・10号車)29.9~30.0トン、中間車の付随車(3・6・8号車)26.9~29.8トン、電動車(2・4・5・7・9号車)31.1~31.7トン。

車体は日立製作所の標準プラットフォーム「A-train」をベースとしたアルミニウム合金製。現行車両より車体幅を20cm程度縮小(東急目黒線の規格に対応)し、裾の絞りをなくしたストレート車体に。「歪みない接合で美しい車体の標準車両を生かし、前面・内装の作り込みに専念することで質の高い車両を効率的に作ることになりました」と関根氏は言う。車体前面は「横浜らしい顔」をめざし、デザイナー・メーカー協働で3D削り出し加工からプレス加工、叩き出し加工まで駆使した豊かな造形に。印象的なライトや曲面ガラスも含め、前面貫通路を意識させない優美なデザインとした。

製造において最もこだわったのが塗装で、実際の車両に候補の塗料を複数塗るなど試行錯誤を重ね、現在の塗装に仕上げたという。関根氏によれば「初期段階で『ラインは入れないのか』『屋根は別の色にしたほうがいいのでは』など、社内でさまざまな意見も出ました。ただ、ラインなどは人の好みが入りやすいこともあり、最も普遍性の高いデザインを検討した結果、ラインは入れず1色塗りという結論に落ち着きました」「じつはラッピングも試してみたのですが、技術が向上したとはいえ、やはりどうしても塗装の品質にはかなわない。最終的に全面塗装となりました」とのこと。

車内は車体幅の縮小を感じさせないように中央高天井構造とし、内装はグレートーンで統一。昼光色・電球色に変化するLED照明、ガラスや金属を多用した荷棚・仕切り・扉をはじめ、高品位な車内空間としている。座席端部の袖仕切りは荷棚付近まで上げ、着席客とドア付近の立ち客の干渉を緩和する構造に。座席はクッション性と座り心地を追求し、表地には汚れが目立ちにくいようにランダムパターンを採用した。

優先席の一部に導入される「ユニバーサルデザインシート」について、関根氏は「座席の座り心地を追求すると、立ち座りに負担のある方にとっては座りにくいものとなってしまい、本来座っていただきたいお客様が立ったまま我慢するという状況もありえます。ユニバーサルデザインシートでは楽に立ち座りできるように、座面を90mm高く、約50mm浅くしました。足の悪いお客様が1~2駅乗車されるときも、躊躇なく座っていただけるようにしています」と説明する。荷棚は設けず、座席下に大型の荷物を置けるようにした。

  • 車内は落ち着きのあるグレーを基調としたデザイン。「ユニバーサルデザインシート」は座席の高さを上げ、荷棚は設けず、座席下に荷物を収納できるようにした

  • 通路の天井に広告などを表示する大画面案内表示器を設置。車内照明は調色調光式のLED照明となり、すべてのドアに個別ドアスイッチを導入している

  • 車両間の貫通扉の取っ手はアシストレバー付き。相鉄線の象徴として復活した車内の鏡は乗務員室付近にも設置された

相鉄線車両の象徴とされる鏡の復活も特徴のひとつ。「横浜に出かける際、身だしなみを整えてほしいとの思いで、かつて全車両に取り付けられていたと聞いています。今回は都心直通用の新型車両ということで、相鉄線のアイデンティティだった鏡を復活させようということになりました」と関根氏は言う。窓ガラスに紫外線カットの機能を持たせる一方、「直射日光が気になる」との声に応え、ブラインドも復活させた。

車内設備ではその他、神奈川県央部を走る相鉄線の暑さ寒さ対策として導入される個別ドアスイッチ、ドア上や通路の天井に設置した大画面(21.5インチ)のLCD式車内案内表示器、全車両に設置した車いす・ベビーカースペース、楕円型吊り手とアシストレバー付きの貫通路取っ手、パナソニック製「ナノイー」を採用した空気清浄機なども特徴に挙げられた。全車両で車内Wi-Fiも提供する(利用する際は通信事業者との契約が必要)。

乗務員室は関係線区との協定などに合わせ、主幹制御器を両手操作式ワンハンドル方式とし、運転台コンソールは座席周囲にL字配置とした。スイッチ類の配置は直通運転に備えた仕様に。車掌用の放送機の配置なども直通先の標準仕様としている。各種保安装置のスイッチやワンマン運転用のホーム監視カメラなどは準備工事とし、今後の運転区間に応じて順次整備していくという。

保安装置に関して、諸元表では「ATS-P(ATC/S/O統合型保安装置)」「在来線デジタル列車無線装置、防護無線装置」と記載されていた。性能面の特徴のひとつに「乗り入れ線区に応じた保安装置(一体型)」が挙げられ、「さまざまな保安装置をそのつど積むのではなく、一体型の装置を準備し、これから乗り入れる線区を決定していく中でソフトウェアを追加するなどで対応していこうと考えています」との説明もあった。信号入力部および演算部を一体化して小型化を図るとともに、将来の直通運転に向けて各種保安機能に柔軟に対応できる統合型装置とされている。

  • 新型車両20000系の乗務員室。運転台コンソールは座席周囲にL字配置とし、スイッチ類の配置は直通運転に備えた仕様となっている

なお、概要説明の中で、東急線との相互直通運転に関して「東横線・目黒線の両方と乗入れ計画があります」との発言も。その後の質疑応答で、東急線から先の路線(東京メトロ副都心線・南北線、西武池袋線、東武東上線、都営三田線など)への直通運転について質問もあったが、「現在の計画上は東急線内までで国の認可をいただいており、その先どこまで行くかはまだ決まっていないというのが実情です」とのコメントにとどまった。

新型車両がめざすのは「待ってでも乗りたい」電車

新型車両20000系はMT比(電動車・付随車の比)1:1を基本としており、10両編成時は5M5T、8両編成時は2両外すことを前提としている。設計最高速度は120km/h。加速度は3.0km/h/s・3.3km/h/s(切替式)、減速度は常用最大3.5km/h/s、非常時4.5km/h/sとのこと。

台車は軸箱支持方式をモノリンク式としたボルスタレス空気バネ台車。急曲線における安全性向上策も施し、曲線通過性能を向上させた。基礎ブレーキ装置はM車系を踏面式ユニットブレーキ方式、T車系を踏面ブレーキ・ディスクブレーキ併用式とし、安定した制動力の確保をめざした。リング式防音車輪で騒音低減にも配慮している。

パンタグラフと制御装置は電動車の2・4・5・7・9号車に設置。制御装置はスイッチ素子に低損失IGBT、還流ダイオードにSiC(炭化ケイ素)を応用したSiCハイブリッドモジュールによるVVVFインバータ方式とし、消費電力量の削減をめざした。主電動機は容量190kWの全閉内扇形で、内気と外気の熱交換に配慮した形状とし、密閉化による回転音の低減、メンテナンスフリー、さらに高効率特性による省エネルギー化も図った。駆動装置は従来車と共通化し、TD継手方式の平行カルダン方式(歯車比6.06)とした。

補助電源装置は付随車の3・8号車に設置。高効率タイプの3レベルIGBT方式で260kVAの容量を有する静止形インバータ(SIV)とし、編成中2台の片方に異常があった場合でも、延長給電機能により健全側の装置で負荷を負担する。その他、車両情報装置に「Synaptra」(イーサネット版)を採用し、安全性・メンテナンス性を向上させている。

新型車両20000系は相互直通運転を行う上での制約もある中、優美なデザインと高品位な内装を実現し、省エネ機器も全面採用した車両となった。「これから都心へ乗り入れる我々も含め、首都圏の鉄道路線の相互直通ネットワーク化が進む中、各社のエース車両が乗り入れ合う状況で、電車が直接比較される時代に入ったと感じています。新型車両で我々がめざしたのは『待ってでも乗りたい』という電車。さらには都心で『あのネイビー色の電車はどこの電車?』『相鉄線の電車だ!』と認識していただける車両となるように製造を進めてきました。我々にとって前例のない都心直通ということで、他事業者の胸を借りつつ、新しい価値観を都心にもたらしたい」と関根氏は述べた。

今後の車両新造についても触れ、「今回は20000系を1編成製造しましたが、次期の新造車両として相鉄・JR直通線の車両をいったん挟み、20000系の第2編成以降はJR直通線の開業後に作っていこうと考えています。その間、必要に応じて試験・訓練も実施し、確実に開業を迎えられるようにしたいと思います」とのことだった。

  • 新型車両20000系の発表会では、車両概要の説明に加え、日立製作所 笠戸事業所で製造される様子も映像で紹介された