鉄道路線の相互直通運転は乗換えなしで便利。通勤路線で多くの人々が利用しているし、観光地へ直通する路線も楽しい。徳島県では道路と線路を直通するDMVの導入準備が進んでいる。そんな直通運転について、びっくりな事例を見つけた。なんと路面電車がケーブルカーに“直通”するのだ。場所はイタリア。行ってみたい。

  • 途中にケーブルカー区間があり、電車はトラクターに押し上げてもらう (写真 : Roberto Ventre)

この珍しい電車はイタリア北東部のトリエステ市を走っている。イタリア政府観光局の公式サイトによると、トリエステは東ヨーロッパの国境付近にあるため、歴史的にさまざまな民族、国家の支配を受け、独特の文化を形成したようだ。市街地を一望できるサン・ジュストの丘は、サン・ジュスト聖堂、海岸にそびえる白亜のミラマーレ城など、中世から現代に至る貴重な建築物が並ぶという。

トリエステ市の路面電車は「トリエステ・トランスポート」が運行する。同社はバス路線網も多く運行しており、唯一の路面電車「オピチーナ・トラム」は同社の2号線として案内されている。海岸部の市街地とカルソ高原の町、オピチーナを結ぶ公共交通機関だ。海岸部の「Piazza Oberdan(オベルダン広場)」と丘の上の「Villa Opicina(ヴィラオピチーナ)」を結び路線延長は5.175km。標高差は326m。両端駅を含めて13駅ある。

  • オピチーナ・トラムの運行区間

「路面電車がケーブルカーに直通する」と書いたけれど、正確には路面電車の途中にケーブルカー区間がある。オベルダン広場を出発して路面電車の区間を走り、次の駅が「Piazza Scorcola(スコーラ広場)」。ここでケーブルカー区間に入る。

スイッチバックでケーブルカー側の線路に移ると、ケーブルカーシステムのトラクターが電車を押して登っていく。ケーブル区間の最急勾配は26%。100m進むと26m上昇する。日本のケーブルカーは50%以上の路線も多いから、それに比べればゆるいかも。ちなみに箱根登山鉄道のケーブルカーの最急勾配が20%だから、それと同じくらいか、少し急坂ということになる。

  • オピチーナ・トラムのしくみ

途中で複線区間があって、電車とすれ違う。坂を下る電車にもトラクターが付いていて、ケーブルによって速度を抑えつつ下っていく。ケーブル区間の距離は799mで、標高差は160m。途中に2つの駅があり、踏切もある。ケーブルが通っていること、急勾配であることを除けば、路面電車、ローカル鉄道と変わらない。ケーブル区間は「Vetta Scorcola(ヴェッタ・スコッコラ)」で終わり、電車はそのまま路面電車として3.901kmを走行し、オピチーナに至る。

「トリエステ・トランスポート」の公式サイトによると、この路線は1902年に開業したという。当初は急勾配区間のみで、ラック(歯車式)レール車両を使っていたようだ。1936年までに普通鉄道区間としてオピチーナ鉄道駅まで延伸し、1928年にラックレール区間がケーブルカーに置き換えられた。

動画サイトで「Opicina Tram」などのキーワードで検索すると、実際の運行の様子がわかる。非常に面白いし車窓も美しい。すぐにでも乗りに行きたいけれど、公式サイトによると「temporarily suspended(運休中)」で、バス代行となっている。旅行口コミサイトで確認したら、2017年6月の時点で運休していたようで、存廃が心配なレベルになってきた。復活したらぜひ乗りに行きたい。