南海電気鉄道は6日、高野山ケーブルカー新造車両のデザインと概要を発表した。新型ケーブルカーのコンセプトは「期待感」「癒し・調和」「安全・安心」の3つ。2両連結車両を2編成導入する。

  • 高野山ケーブルカー新造車両イメージ。1号車は朱色に白のライン

高野山ケーブルカーは南海高野線と接続する極楽橋駅から高野山駅まで、全長0.8km、高低差328mを約5分で結ぶ。1930(昭和5)年に開通し、今年で開通88周年を迎える国内有数の歴史を持つケーブルカーであり、真言密教の聖地である高野山への旅の交通路としての役割に加え、高野山に住む人々の生活の足としての役割も担ってきた。現在は1964(昭和39)年に製造された3代目ケーブルカー(2両連結車両×2編成)を使用しており、車両新造は54年ぶり。あわせて巻上げ機など諸設備の新造工事も実施される。

新型ケーブルカーの製造は日本ケーブル、客車部分の製造はスイスのキャビンメーカー、CWA社が担当。寸法は長さ約14m、幅約3m、高さ約3.3mで、定員は181人(予定)となる。高野山への「期待感」を醸成させる和洋折衷のデザインとし、欧州風の流線形が特徴的な車体に、高野山・壇上伽藍の根本大塔を想起させる朱色のコンセプトカラーを採用。朱色は南海高野線の特急「こうや」および「天空」などでも採用されており、高野線全体で「聖地・高野山」への旅の期待感を醸成するという。

  • 新造車両の2号車は朱色にオレンジのライン

  • 乗降用扉を拡幅し、車いすスペースも設置

  • 内装は木目調とし、背もたれに木材を使用

車体のラインカラーは車両ごとに異なり、1号車は現行のケーブルカーや特急「こうや」を引き継ぐ白、2号車は高野山景の緑に溶け込む「調和」の取れた色彩としてオレンジのラインを採用。各車両とも大型の窓ガラスで四季折々の景色を楽しむことができ、前面の大型の曲面ガラスからは、斜面を自ら上り下りしているかのような臨場感を味わえる。

車内は「和」を基調に、自然との「調和」と「癒し」を演出。座席はゆとりある配置とし、内装全体に木目調の装飾を施す。背もたれは木材を使用した格子状のデザインで、圧迫感を与えないように工夫されている。調光式LEDを用いた間接照明も採用する。

「安全・安心」にも配慮し、車内に車いすスペースを新設するほか、電動車いすで乗車できるように、乗降用扉の開口部を現行車両の750mmから900mmに拡幅する。つまずきなどの事故防止対策として滑りにくい床材を使用し、車内段差部に足元灯も設置。座席を折畳み収納式とすることで、多客時などに座席を収納し、大きな荷物を持った乗客を余裕をもって乗車できるだけのスペースを確保する。

  • 高野山ケーブルカーの歴代車両。初代・2代目車両は1両で運行されたが、3代目となる現行車両(写真右)は2両連結車両として輸送力強化が図られた

高野山ケーブルカーは2018年11月26日から2019年2月下旬にかけて、車両および巻上げ機など諸設備の新造工事を行うため、ケーブルカーでの運行を休止する予定。工事期間中はバスによる代行輸送を実施する(バス代行輸送の詳細は10月頃に改めて発表)。2019年3月初旬から新型ケーブルカーでの運転開始を予定している。