新幹線や在来線特急列車の普通車の中には、本来あるはずの座席を取り払った空間がある。横5列(3列+2列)の座席配置の場合は3列座席の通路側、横4列(2列+2列)の座席配置の場合も片方の通路側だ。これは車いすを設置するために空けてあり、隣の座席は車いす利用者の専用席で、車いすを固定する器具が備えられている。また、座席の端になる場所でも肘掛けが跳ね上がり、座席と車いすの移動に配慮している。

車いすに優しい環境はベビーカーにも優しい(画像はイメージ)

これらの座席は車いす利用者優先で販売されるけれど、ある条件で一般利用者も購入できる。ベビーカー利用者に便利で活用する人も多い。どうすれば購入できるだろうか。

結論から先に書くと、乗車当日の朝、駅の指定席発売窓口で「ベビーカー利用者のため、車いす対応座席を希望します」と申し込む。窓口で空いている席を探して、見つかれば割り当ててくれる。希望の列車が空いていなければ、前後の空いている列車を提案してくれるだろう。

車いす対応座席は、乗車日の2日前まで車いす利用者のために空けてある。2日前までに希望者がいなかった場合に限り、前日中に開放される。前日のどのタイミングかは決まっていないようだ。ただし、経験者のブログなどを拝読すると、遅くとも当⽇の朝には発券可能になっている。

それでも、なるべく車いす利用者に使ってもらいたいから、一般利用者には他の座席を割り当てる。その"スキマ"にベビーカー利用者のチャンスがあるというわけだ。もっとも、他の座席がすべて埋まるなど、混雑する列車の場合は一般利用者に販売される。

「車いす利用者優先で販売される」とはどういうことか。JR西日本が運営する「JRおでかけネット」に次のような記述があった。ここから、いくつか重要な情報を読み取れる。

(1) 乗車される1ヶ月前の日の10時から2日前までに
(2) 当社内の駅(無人駅を除く)にて直接または電話にてお申し込みいただきますようお願いいたします。
(当社の駅で、全国の新幹線・特急列車などの車いす対応座席をお申し込みできます。

「駅に直接または電話にて」という記述、当たり前のことが書いてあるけれど「これ以外の方法では対応できません」という意味だ。つまり、インターネット予約、旅行代理店などでは対応しない。ビジネスマナーとして、お客様や取引先には否定形の言葉遣いをしないため、可能なことのみ記述している。しかし、できないことをできないと表示した方がわかりやすい場合もある。工夫が必要な書き方かもしれない。

カッコの中の「当社の駅で、全国の新幹線・特急列車などの車いす対応座席をお申し込みできます」は、JRグルーブ共通の対応という意味だ。

「乗車される1ヶ月前の日の10時から2日前」、ここが一般の指定席券とは異なる。一般の指定席券は「乗車日の1ヶ月前の日の10時から」という条件だけ。2日前という限定条件はない。システム的には、列車が指定席の利用開始駅を発車する直前まで対応できる。ただし、実際には発券窓口からプラットホームまでの距離を考慮して、発車時刻より前に販売を締め切る場合がある。

この情報を整理すると、車いす対応座席は乗車日の2日前までは一般席とは別に管理され、駅の窓口だけで販売される。予約されなかった場合は、早ければ前日に一般販売座席と同じ扱いになる。空席のままだと売上げが減ってしまうから、発車までに売り切ってしまいたい事情もある。

しかし、車いす利用者だって当日、急に列車に乗る用事もある。その場合はベビーカー利用者と同じで、当日の朝、駅で申し込む必要がある。逆にベビーカー利用者にとっては、他の指定席と同様、早い時期から予約しておきたいだろう。車いす専用座席を増やし、ベビーカーや大きな荷物を持った人など「その場所を必要とするすべての人が使える」状況が望ましい。

障害者対応、バリアフリーというと、「自分には関係ない」と思う人も多いだろう。しかし、車いす対応のために駅にエレベーターを設置すれば、ベビーカー利用者だけでなく重い荷物を持った人、腰痛・筋肉痛の人、気分が悪い人も助かる。障がい者が便利に使える環境は、誰でも便利に利用できる。その考え方が、バリアフリーの発展形「ユニバーサルデザイン」だ。鉄道のユニバーサルデザインの普及はまだまだ発展途上だ。

※画像は本文とは関係ありません。