JR東海は7日、同社初となるハイブリッド方式を採用した次期特急車両(試験走行車)を新製すると発表した。特急「ひだ」「南紀」に使用される特急形気動車キハ85系の置換えを見据え、試験走行車4両1編成を新製。2019年度末に完成した後、1年間をめどに試験走行を行い、2022年度を目標に量産車を投入する方向で検討を進めるという。
次期特急車両(試験走行車)の車両デザインも公開された。外観は刷新され、車体前面下部から車体側面の窓上にかけてオレンジのラインを配したデザインとなる。全座席にコンセントを設置し、客室内荷物スペースや車いすスペース(改良型ハンドル形電動車いすに対応)、オストメイト対応多機能トイレを設けるなど、旅客サービス設備・バリアフリー設備も充実させる予定。LED照明や防音床を採用するほか、グリーン車にセミアクティブダンパも採用して快適性向上を図る。客室・デッキに防犯カメラも設置する。
現行のキハ85系は推進軸・変速機を介してエンジンで走行する方式だったが、次期特急車両(試験走行車)はエンジンで発電した電力と蓄電池に貯めた電力を組み合わせ、モーターを回して走行するハイブリッド方式を採用。モーター走行によって気動車特有の回転部品が不要となり、ギアチェンジも解消されるため、安全性・信頼性・快適性が向上する。エンジン数を1両あたり1台(現行方式は2台)に削減し、駅停車時にエンジンを停止するアイドリングストップ機能を採用するなど、静粛性や乗り心地も改善される。
ブレーキ時に回生ブレーキで発生した電力を蓄電池に充電し、加速時や停車時に蓄電池の電力を使用することで、燃費も約15%向上する見込み。電車と同様の機器を採用するため、メンテナンス時の負荷が軽減され、コスト低減も図られるという。
JR東海はこれまでハイブリッド方式に必要な技術開発を進めており、試験走行車が完成する2019年度末以降、1年間をめどに技術の確立に向けた基本性能試験や長期耐久試験などを進めていく。2022年度の量産車投入を目標に、安全性・快適性を高めつつ、ハイブリッド方式の鉄道車両では国内初という最高速度120km/hでの営業運転をめざす。