元国税局職員 さんきゅう倉田です。好きな税務署の人のジャンパーの色は「オレンジ」です。

人は、毎日素晴らしい商品や素敵なサービスを求めています。しかし、実際よりも良く見せる表示や過大な景品の提供でお客さんを釣り、良くない商品やサービスを買わせようとする業者もいます。そういう業者から、あなたを守るのが“景品表示法”です。

景品表示法では、過大な景品の提供を禁止しています。景品には、物やお金、経済的利益があり、「賞品」や「プレゼント」と呼ばれることもあります。日常生活で関わりのある、いわゆる”懸賞“や“福引き”、”くじ”は景品表示法のルールの中で行われています。

そのルールでは、一部の商品に景品をつけて外からは分からないようにしたもの、パズルやクイズに正解するともらえるもの、スポーツやゲームの優劣でもらえるもの、また、お中元・年末に商店街やショッピングモール、大手スーパーが実施するもの、一定の地域の小売店などがみんなで実施するものに、金額の上限を設定しています。

景品の上限金額

上限は商品やサービスの金額によって異なり、あなたが支払った金額が5000円未満ならもらえるものはその20倍の金額まで、5000円以上でも10万円までとなります。

また、ショッピングモールや小売店などがみんなで実施するものは、あなたが支払った金額に関わらず30万円までとなります。それ以外にも想定売上額の2%とか3%までみたいな、景品の総額についてのルールもありますが、これは消費者であるあなたからは見えないので、無視して良いでしょう。

違法な屋台のくじ引き

行動経済学の分野において、自分を制するというのはどのような賢者にとっても難しいとされています。だから、あなたが景品に惑わされて質の良くないものや割高なものを買ってしまう機会は、往々にしてあるといえます。

すると、商品や・サービスでの競争ではない、非健康的な景品による競争が激化していく可能性があります。景品表示法は景品の上限を規制することで、あなたと事業者を守っています。

ただ、多くの事業者が景品表示法のルールに基づいて景品を用意している中、一部の業種では昔からこれが守られない傾向があります。テキ屋です。

最近、お祭りには参加していませんが300円とか高くとも500円くらいでくじを引き、当たるとは言っていないけれど、最新のゲーム機器が陳列されているのではないでしょうか。箱には触れないので、空箱かどうかは確認できません。

現在、ニンテンドー3DSは約17,000円、Nintendo Switchは約32,000円で販売されています。くじが500円だったとしても20倍は1万円です。これらが景品になっていれば、景品表示法違反の可能性が高い。でも、古き良き文化として見過ごされているのでしょうか。

ぼくはテキ屋で大当たりを当てた人を見たことがないので、絶対当たらないようになっているから上限額を守っていないわけではない、と言われたら何も言い返せないかもしれません。でも、そうすると、実際には当たらない景品を当たるように見せかける行為が問題となるはずです。

という記事を公開したところで、ツイッターでご指摘をいただきました。「屋台のくじは、景品表示法上の“景品類”に当たらないので、限度額の規制を受けない」という内容です。これは勉強不足でした。

複数名からご指摘いただき、有り難いことに根拠も教えていただきました。弁護士さんが解説している動画のURLもいただいたので確認した上で、消費者庁に電話し、消費者ホットラインに回され、とある地方の弁護士会にも電話しました。

弁護会からは明確な回答を得られず、「景品表示法のことは分からない」と言われて話が終わってしまいましたので、さらに調べました。景品表示法における“景品類”とは

①顧客を誘引するための手段として
②事業者が自己の供給する商品又はサービスの取引に付随して
③取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益

で内閣総理大臣が指定するもの、なのだそうです。

ここで、「②事業者が自己の供給する商品又はサービスの取引に付随して」のところに注目します。これを今回の件に当てはめると「②テキ屋が300円で販売するくじに付随して」いると、景品類に該当します。

3DSやSwitchは、くじに付随するものでしょうか。ゲーム機はくじを買ったおまけではなく、「供給する商品」そのものであると考えられます。すると、ゲームは景品類に該当せず、景品表示法の規制を受けない、テキ屋の300円のくじで高いゲーム機があっても問題はない、ということになります。

誤認していました。SNSがインフラ化していなかったら、草葉の陰までテキ屋のくじを色めがねで見ていたことでしょう。

ご指摘いただいたみなさまに感謝しつつ、屋台のくじの益々の繁栄を願っています。

コンプガチャは全面的に禁止されている

景品表示法では、いわゆる「カード合わせ」を全面的に禁止しています。欺瞞性が強く、射幸心をあおる度合いが著しく強いためだそうです。スマホやパソコンなどのオンラインゲームで、有料ガチャをさせ複数のアイテムを揃えると特別なアイテムをくれるのが“カード合わせ”ですが、中毒性があって、意思の弱い方が激しくのめり込んでしまう危険を孕んでいるようです。もし、出くわしても手を出さないのが懸命です。

当たらなくてもいいから、射幸心を煽ってほしい、小さなギャンブルをたのしみたいくらいの気持ちであれば、屋台でくじを買うのは良いのかもしれません。ただ、社会が成熟し、民度が高くなってくると、そういう見過ごされていた文化は廃れていく可能性がある。遊ぶのなら今のうちかもしれません。

さんきゅう倉田

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さんきゅう倉田

さんきゅう倉田

芸人、ファイナンシャルプランナー。2007年、国税専門官試験に合格し東京国税局に入庁。100社以上の法人の税務調査を行ったのち、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに。ツイッターは こちら