本連載の第25回では「仕事のスピードを上げてミスを減らそう」と題し、仕事のスピード向上が作業ミスを減らすメカニズムをお伝えしました。本稿では業務品質やスピードのバラツキを減らすことの意義と、その方法をお話します。

チェーン店のハンバーガーショップではどの店舗に行っても同じ価格で同じ味、同じボリュームのものを食べられます。また、購入する曜日や時間帯が異なっても全く同じものが食べられます。

これがもし、隣町の店舗ではおいしいのに地元の店舗では乾燥してパサパサだったとか、夕方の空いている時間帯は丁寧に作りこんであるのに昼時の込み合う時間帯は明らかに手抜きされていて肉の火の通りが甘いなど、状況によって品質がばらばらであったらどのように感じるでしょうか。きっと、そのチェーン店にはあまり良い印象を持たないことでしょう。

オフィスでの仕事に置き換えると、顧客の要望への対応が人によって大きく異なったり、問い合わせへの回答が来るまでの時間が数分かかるときもあれば数日かかるときもあったりしたら、顧客にどう思われるでしょうか。やはり、あまり取り引きしたくない相手であると認識されてしまうのではないでしょうか。

業務の品質やスピードのバラツキはなぜよくないのか

では、仕事のアウトプットの品質やスピードのバラツキが大きいことがなぜ問題を引き起こしてしまうのでしょうか。それは大きく分けて「予測の困難さ」と「期待値との乖離」、それに「要求水準の未達」の3つがあります。

予測の困難さ

「予測の困難さ」とは、例えば家族へのお土産にどら焼きを買って帰ろうと思ったときに毎度大きさが異なると、実際に買って箱を開けて中身を見るまで量が足りるかどうかがわからないというようなことです。

期待値との乖離

「期待値との乖離」とは、「前に買ったときは、どら焼きの味が甘さ控えめでとてもおいしかったので今回もきっと同じようにおいしいはず」と思って購入したところ、以前より味が落ちたなとがっかりするようなことです。

要求水準の未達

そして「要求水準の未達」とは、3回買うとそのうち1回はお金を返してほしいと思うほどまずいどら焼きを出されたり、注文してから3分で提供されたりする場合もあれば15分も待たされてイライラさせられたりするようなこともあって、もう二度と行かないと思うようなことです。

ここでの「どら焼き」を「顧客に提出するレポート」や「上司に依頼された調査報告資料」など、ご自身の仕事のアウトプットに置き換えると、品質のバラツキが普段の仕事でも問題になることがわかっていただけると思います。また、ここでは主に品質を引き合いに出しましたが、スピードのバラツキについても同じことが当てはまることにご留意ください。

バラツキはなぜ発生するのか

業務品質やスピードのバラツキが発生するのはなぜでしょうか。それは、品質やスピードを作りこむのに必要な「業務プロセス」「人/スキル」「材料/情報」「ツール/フォーマット」「環境」の5つの要素に起因すると考えられます。

各々の要素とバラツキについて先ほどの「どら焼き」の例で考えてみましょう。最初の「業務プロセス」については、そもそも決まったレシピがなくて自由気ままにその日の気分で作っているような場合にバラツキを生みます。それによって味や形に大きな違いが出るのは当然ですね。そもそも業務プロセスや詳細な手順が定まっていないような場合や、定められていても順守していない場合に該当します。

次に「人/スキル」についてです。どら焼きを作るレシピが同じでも調理人が日によって替わり、しかも各々の熟練度が異なればやはり味を一定に保つことは難しいでしょう。たとえしっかりした業務マニュアルがあっても、それを実行するスキルに無視しがたいほどの差があればマニュアル通りに仕事を進めるのが困難になり、結果としてバラツキを生むということですね。

また、「材料/情報」についてですが、どら焼きを作る材料が異なっていても味に変化が生じるのは言うまでもありませんね。その時々で扱える情報源が異なったり、必要なデータを安定的に収集できなかったりすれば、アウトプットに一定の品質を担保することが難しいということです。

「ツール/フォーマット」についても同様に、どら焼きを作る際に扱う平鍋などが変わることでバラツキが生じるでしょう。統一されたツールやフォーマットがなくて毎度好き勝手に別のものを使っていれば、それに伴ってアウトプットの出来栄えや、その完成までの時間が左右されることは想像に難くありません。

そして、最後の要素は「環境」です。どら焼きでいえば、気温や湿度などの気候の変化によって味や見た目が若干異なるものになってしまうかもしれません。いずれにせよ、仕事をする環境が度々変わるようでは、そこで生み出すアウトプットにも影響が出ることは避けられないでしょう。

どうすればバラツキを減らせるのか

業務の品質やスピードにバラツキに影響を与える5つの要素について見てきましたが、必ずしもここで挙げた要因すべてに厳しい基準を設けて標準化しなければならないというわけではありません。顧客や上司など、自分の仕事のアウトプットを受け取る側が求める要求の水準や、業務の特性、制約などによって「標準化が容易なものと容易でないもの」や「バラツキの低減効果が大きいものと小さいもの」があるはずです。そこで、まずは要素ごとにそれらを評価し、費用対効果が大きいものから導入していくことをお勧めします。

先ほどの「どら焼き」のケースでしたら、使用する材料や道具を毎度替えるとは考えにくいので、実際には明文化されたレシピの欠如や調理人のスキルの差、気候の影響あたりがバラツキの要因になっていると思われます。

その場合、レシピが欠如しているのであれば、一番おいしくできる調理人にレシピを書かせて全員で共有し、スキルの差については味の決め手となる技のトレーニングによって埋めればよいでしょう。また、気候の影響が大きい場合には、気象条件のパターンごとに材料の配分を変えるなど品質が安定するようなレシピに改良するか、一定の室温と湿度を維持できる調理場を確保するかのどちらかで対応することが考えられます。

その上で、レシピ、トレーニング、調理場の3つのうちから対応が相対的に容易かつ費用対効果が大きいと想定されるレシピの作成から実行していくというような進め方になるでしょう。

それでは次に、資料作成を例に考えてみましょう。定期的に決まったフォーマットで決まった内容を決まった通りに提出するものであれば、マクロなどのツールを駆使して自動化できないか検討するのが得策です。なぜなら自動化はイレギュラーへの対応ができない反面、定型的な作業では品質やスピードのバラツキを減らすのに最も効果があるからです。

その反対に、作る資料のフォーマットも内容も提出方法も毎度異なるというのであれば、自動化はおろか統一した手順書を作成することの効果はあまり見込めません。それよりは資料作成のトレーニングをしてスキルを底上げする方が効果があると考えられます。ただし、その場合においても品質やスピードのバラツキを抑えるポイントが何であるかを意識して、そこを集中的に教えるようにすることが肝要です。

本稿では業務の品質やスピードのバラツキが生じることの弊害やその発生要因、それに対応の考え方をお伝えしました。バラツキを減らすことで業務品質やスピードを安定化させ、顧客や上司など、周囲の要求水準をクリアし続けるのにご参考になれば幸いです。

筆者プロフィール: 相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役
慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。