株式投資で利益が出たら、考えなくてはいけないのが「税金」です。株の取引で発生した譲渡金、配当金などの利益には税金がかかりますので、条件に当てはまる時は、決められた方法で納税する必要があります。では、どのような場合に税金を納めれば良いのでしょうか。

今回は、株式投資で利益が出た時の税金について解説していきます。いざ納税となって慌てることがないよう、しっかりと理解しておきましょう。

  • 株で利益が出た時の税金について

    株で利益が出た時の税金について

株の取引口座の種類

まず、株の取引口座の種類について確認してみましょう。株の取引口座には4つの種類があり、それぞれ納税の方法など仕組みが異なっています。

一般口座

取引明細をもとに、投資家自らが1月1日から12月31日までの1年間の売却損益を計算し、利益が出ている場合は、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告で納税します。

ただし、年収が2,000万円以下の会社員(1カ所から給与を受け取っている)で、証券取引以外の雑所得がなく利益が20万円以下である場合は、納税の必要はなく確定申告は不要です。主に、特定口座に対応していない「ミニ株」や「るいとう」などを取引する場合に利用します。

特定口座(源泉徴収なし)

利益が出ている場合、自分で確定申告をする必要がありますが、簡単に手続きできるよう、証券会社が1年間の取引を集計した「年間取引報告書」を作成してくれる口座です。

特定口座(源泉徴収あり)

証券会社が年間取引報告書を作成し、利益が出ている場合は納税まで代わりに行ってくれます。税金は売却時に引かれるため、基本的に投資家は確定申告の必要がありません。

NISA(少額投資非課税制度)口座

通常、株を売買して利益を出すと、20.315%の税金が課税されます(所得税15.315%、住民税5%)。しかし、NISA口座では、年間投資元本120万円までの利益が非課税になります。

そのため、確定申告は不要です。なお、NISA口座は単独では開設できず、一般口座か2種類ある特定口座のうちどちらかを同時に開設しておく必要があります。

いくつも口座を持っている時には

それでは、異なる証券会社でいくつも口座を持っている、また、種類の違う口座を複数持っているという場合にはどうすればいいのでしょうか。基本的にはまず、それぞれの口座ごとに損益を計算してみましょう。

全て「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は、証券会社が納税を代行してくれているため、利益がどれだけあっても確定申告の必要はありません。また、全てが「一般口座」の場合、利益が20万円を超えていたら確定申告をします。

種類が異なる口座を持っている場合、全ての口座の損益を通算して、利益が出ている場合は確定申告の必要があります。また、納め過ぎた税金を確定申告によって取り戻すことができる場合もあります。

たとえば、「特定口座(源泉徴収あり)」の損失より「一般口座」または「特定口座(源泉徴収なし)」の利益が多い場合は、確定申告の必要がありますし、「特定口座(源泉徴収あり)」の利益より「一般口座」または「特定口座(源泉徴収なし)」の損失が多い場合、確定申告によって源泉徴収された分の税金を還付させることができます。

少し複雑ですが、納めるべき税金や還付金を見過ごすことのないよう、口座間の損益通算は忘れずに行いましょう。

損失が出た時に利用できる繰越控除とは

株で損失が出てしまった時には、本来、確定申告の必要はありません。しかし、「損失の繰越控除」を利用することで、節税できることがあります。

損失の繰越控除とは、その年に生じた損失の金額を、翌年以降3年間の利益から差し引く(控除する)ことができる制度です。たとえば、今年200万円の損失が発生し、翌年は300万円の利益が出たとしたら、前年200万円の赤字分を翌年の利益300万円から控除できるのです。

これにより支払う税金を安く済ませられるわけですが、損失の繰越控除を3年間利用するためには、毎年確定申告をして損失の繰り越しを行っている必要があります。そのため、納税するほど利益が出ていなかったとしても確定申告をしておくと良いでしょう。

確定申告は面倒に感じるものですが、税金を納めるだけでなく、申告によって還付金が受け取れたり節税に役立てたりできる場合もあります。「あまり儲かっていないから自分には関係ない」と思い込まず、しっかりと年間の利益や損失を把握してみましょう。

筆者プロフィール: 武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。