市ヶ谷に向かった。今回のそばはこの街からお届けする。中央線の車窓を眺めていると、嫌でも釣り堀が目に入ってくる街。オフィスビルも多いが、学校や史跡も多く、どことなく落ち着いた雰囲気を醸し出している。JR中央・総武線「市ヶ谷」駅を出て麹町方面の坂に入り、1つ目の角を右に入ったところに「瓢箪」はある。
バリエーション豊富なメニューが嬉しい
既成品の「そばうどん」ののぼりがはためいているものの、年季の入った短髪ののれんと手書きのお品書きはチェーン店のそれではないことがはっきりとわかる。期待を込めて中に入ろう。
店内は広くなく、左手に厨房、右手にカウンターとなっていて、イスはない。AMラジオが流れている。時間は11時半頃、この近辺はランチタイムが厳格なのだろうか、先客はわずかに1名のみだった。突き当り奥に、ごく小さな券売機がある。外のお品書きで思案しなかったのだが、元々メニュー数はそれほど多くない。かき揚げや山菜、コロッケ、たぬきや月見など。冷製の分も合わせて、20種類ちょっとか。と思いきや、ご飯物のメニュー、牛丼やカレー、そぼろ丼や炊き込みご飯など、なかなかの引き出しの多さ。こちらは食券ではなく現金で直接注文らしい。結局注文したのは、「メンチそば」(430円)。マイナーではないが、どこにでもあるわけではないタネだ。
揚げ置きの天ぷらが並ぶカウンターに食券を出す。小銭の入った小さなボウルも脇に並んでいて、こちらがご飯物の代金を入れる場所らしい。給水器から水をくもうと思ったら、中は冷えた麦茶。これはなかなか嬉しい。
あっさり目のツユに揚げ物がマッチ
2分ほどで完成。丼は小ぶりサイズではあるが、これくらいの方が、立ち食いで持って食べるのにはベストだ。やや太めのそばがこんもりと盛られていて、ツユは黒いが、塩気は抑え気味であっさりめ。メンチカツは甘くて、うまい。こういうコッテリした旨味が、淡白なそばによく合う。わかめは肉厚コリコリ。薄いが、ピンク色のカマボコが頂上で華を添えている。
店員は3名。ご主人と女将さんらしき方、それに外国人の女性。入る時も出る時も、ご主人は終始無言でそばをつくり続けており、個人店ならではの空気が漂っているところもこれまた魅力。近くに寄れば思い出したい店である。