潮干狩りシーズン終了前に再挑戦!

第8回の「ちょっぴり潮干狩り気分を味わう」の時は、小さなイシハマグリ1個という結果に終わってしまった。それでも食べてみたら、とてもおいしかったので、次こそは絶対にたくさんのイシハマグリを……と、待つこと2週間。ようやく新月の大潮の時期(3日間程度) がやってきたので、再び潮干狩りへ繰り出してみた。

大潮1日目。引き潮の底(もっとも潮が引く時間)は、9時52分。8時ごろに家の近くの海岸へ下りて、砂浜を歩きながら、波打ち際を熊手で次々と掘ってみる。そう、前回の潮干狩り初体験の後、すかさず郊外の釣具店へ出向き、この熊手を購入しておいたのだ。

しかし、二宮町から大磯町までの波打ち際は砂利ばかりで、掘っても掘っても小石がジャラジャラ転がるだけ。やはり、潮干狩りができるのは、遠浅の海の浜辺や干潟であり、すぐに深くなる二宮界隈の海ではムリなのか。すぐ近所の海で潮干狩りが楽しめたら素晴らしいだろうなあ、というささやかな夢は、あっけなく消えてしまった。

かといって、せっかく大潮なわけだし、手ぶらで帰るわけにもいかない。潮が引いて波間に姿を現した岩礁地帯へズンズン入っていき、打ち寄せる波と格闘しながら、岩に付いた貝を採る。イボニシという巻き貝ばかりだが、ここでは誰も採らないらしく、どれもいい感じの大きさに成長している。しめしめ。

30個ほど持ち帰り、塩茹でにして楊枝で中身を取り出しながら食べてみる。うまい。ほろ苦い肝が、ビールによく合いそうだが、まだ午前中なので、やめておく。

ほんのり甘くて苦いイボニシは、ほかの貝や魚をエサにする肉食の貝とか

"3度目の正直"に期待しつつ出陣

大潮2日目は朝から仕事があったので潮干狩りを断念し、翌3日目に挑戦。イシハマグリ1個だった初回から数えると、3度目の潮干狩りということになる……むむむ、なんとなく大漁の予感がするのは、気のせいだろうか。

干潮時だけ現れる岩礁地帯。岩に付着している青のりも香ばしい

3日目の引き潮の底は、11時15分。二宮海岸の砂利をいくらひっくり返してもダメなことは学習したので、家族を引き連れて大磯へ向かう。まわりの潮干狩り体験者から聞いた情報を総合すると、イシハマグリの採れるポイントは、西が大磯港近く、東が平塚の相模川あたりまでと、けっこう広範囲らしい。

あらかじめ狙いをつけておいた大磯のとある砂浜で、9時30分ごろから潮干狩りスタート。さすが大潮最終日だけに、潮干狩りをする人の姿が目立つ。中には、スコップのような巨大ジョレン(砂中から貝をかき出す爪と、その貝を受け止めるステンレス製の箱が付いた道具)を使って、波打ち際を掘り起こすセミプロ風、居酒屋大将風の人々も。

我が家のかみさんと子供は、熊手を使わずに、波打ち際に立って腰を左右に振るツイスト派。両足がグルグルとネジのごとく砂中深くめりこんでいき、その爪先や足の裏に貝が触れたら、すかさずつかみとる。ぼくはまず熊手で探り、右手が疲れたら左手で、そして左手も疲れたら今度はツイストに切り替えるなど、手足をフル活用しながら貝を探し続けた。

ツイスト中に足裏にタックルしてきた子ガニ。もしかしてワタリガニ?

熊手に引っかかるのは、つまり浅瀬にいるのは小粒なイシハマグリばかり。ツイストで深いところを探ると、驚くほど大きなイシハマグリが見つかった。わずか1個しか探せなかった1回目、イボニシだけ持ち帰った2回目……そんな地味な思い出たちよ、さようなら。まさに"3度目の正直"なのか、ぼくらはおよそ2時間でたくさんのイシハマグリを採ることができた。

大きそうな貝を、持ってきたメジャーで測ってみる。最大サイズの貝は、なんと幅8.5cm。数えてみたら大7個、小11個もあった。 アサリとハマグリの中間みたいな貝なので、これをアサハマと呼ぶ地域もあるそうだが、大サイズのものは限りなくハマグリに似ているように思える。

ぼくらにとっては初めての大物だったので、大粒の貝を何人かの知り合いに配り、残りの小粒は酒蒸しにして食べた。ねっとりした甘味、深い滋味。「こんなにおいしいなら、また行かなきゃね」と、かみさん。はい、もちろんですとも。

大漁を祝って貝焼きの宴に突入

それから2日後のこと。潮は大潮の次の中潮だったが、何気なく潮汐表を見ていたら、正午を過ぎたころ大潮並みに引くことに気づき、慌てて大磯の海へ繰り出した。

結果は、2時間弱で大22個、小9個と、我ながらビックリの大漁。もちろん過去最高、自分たちの記録をわずか中1日で更新してしまった。あの最大サイズ8.5cmを超えるものはなかったが、うれしいことに7cm級の大粒ばかりで、入れていたビニール袋が破けそうなくらい、ずっしりと重い。

最終日の獲物は、なぜか大粒ばかり。潮干狩りの神様、ありがとう

幅7cm、厚さ4cmほどの大振りなイシハマグリは食べ応え十分だった

半日かけて砂を出した貝は、そのまま晩ご飯のおかず、酒の肴となった。小さなものは薬味も加えず、その香りだけをじっくりと味わうために澄まし汁に。メイン料理は、卓上コンロに網をのせて、熱々の大粒イシハマグリを堪能する直火焼き。開いた貝殻から姿をのぞかせた身をガブリと頬張れば、プーンと漂う潮の香り。ああ、たまらん。

ここのところ何日か、朝から海に入って、筋肉痛になるほど腰を振ったり熊手で砂をかいたりした苦労が、ようやく報われた気がした。ついに番外地で潮干狩りらしい潮干狩りができたぜ、という高揚感と達成感が、酒と共にジワジワと体中に染みていく。

7月に入れば、大磯から平塚にかけてのビーチは、海水浴客やマリンレジャーを楽しむ家族連れであふれかえる。潮干狩りは、とりあえず9月まで休むことにして、次は「夜明け後の1時間だけ、イワシがたくさん釣れるらしい」という気になるウワサを追いかけてみようか……。

焼いた貝のあまりのおいしさに、また海へ行きたくなってしまう……