昨年12月、札幌ではうっすらと雪が積もり始める頃、友人の藤原くんが登山に誘ってくれた。行き先は、札幌市内で気軽に自然を楽しめる藻岩山で、片道1時間ほどの低山だ。平日に休みが合った仲間数名で登り、山頂でヨガをしようという提案だった。
実際に参加してみると、これが実に心地よい。通常の登山に比べ、より大きな爽快感と充実感を得ることができた。
その体験をきっかけに、「サイクリングとヨガを組み合わせても面白いのではないか?」と考えた。早速、藤原くんとヨガインストラクターのヤヨイさんに提案したところ、「それ楽しそう!」とすぐに賛同してくれた。こうして、今回の企画が実現することになった。
集まったのは12人の仲間たち
今回のスタート地点は札幌市中央区の中島公園。
そこから豊平川サイクリングロードを通り、南区の石山緑地まで、約11kmを走る計画だ。
急な登り坂はなく、自転車初心者でも無理なく楽しめるコースである。
参加者のバックグラウンドはさまざまで、登山を楽しむ人、トレイルランナー、さらには近々アドベンチャーレースに出場予定の人など多彩だ。初対面の人もいたが、自然と会話が生まれ、情報交換が始まった。
それだけでも、この場の価値を大いに感じることができた。
筆者自身もサイクリングに加え、年に数回登山を楽しみ、最近はランニングも始めたところだったため、こうした交流の中で刺激的で参考になる話を聞くことができた。
30分ほどの交流を経て、いよいよ出発。
ロードバイク、グラベルバイク、マウンテンバイク、そしてシティサイクルまで、参加者の自転車も実に多様だ。
準備を整え、ついに走り出す
5月の札幌は気温20℃前後の日が多く、野外活動には最適な季節だ。
今回は12名でのグループライドのため、できるだけ一般道は避け、サイクリングロードを走る。他の利用者の迷惑にならないよう一列になり、無理のないペースを心がける。
こうした配慮は登山やトレイルランニングでも共通するマナーだ。誰に言われるでもなく、参加者全員がそれを自然に実践している様子に、頼もしさと嬉しさを感じた。
この日の札幌の最高気温は19℃で、とても走りやすい天候だった。
豊平川サイクリングロードは、札幌市東区から南区までを結ぶ歩行者・自転車専用道路である。南区の真駒内からは真駒内川沿いのルートへとつながり、常盤地区まで走ることができる。
これらの区間を合わせると30km以上を走ることが可能で、週末にはサイクリングやランニングをはじめ、さまざまなレクリエーションを楽しむ人々で賑わう。
走り始めて30分ほどすると、市街地の喧騒からはすっかり遠のいていた。聞こえてくるのは、川のせせらぎと鳥のさえずりだ。
途中で2回ほど休憩をはさみ、自転車の状態を確認する。その間も楽しい会話が尽きることはなかった。
目的地「石山緑地」に到着
約2時間をかけて目的地に到着。
無理のないペースで、途中で休憩も挟みながら進んできたため、予定の時間をややオーバーしてしまった。ただ、休憩のたびに自然と会話も弾み、楽しみながら走ってくることができた。
今回の目的地である石山緑地は、昭和52年まで札幌軟石の採掘場(石切場)として利用されていた場所だ。現在は公園として整備され、自然と芸術が融合する独特の景観を楽しむことができる。
観光地として取り上げられることは少ないが、札幌を訪れた際にはぜひ足を運んでほしい場所のひとつだ。アクセスは決して良いとは言えないものの、訪れる価値は十分にある。
到着後はまず、しっかりと水分補給を行う。
程よく汗をかき、ゆったりとしたペースで走ったことで、有酸素運動ならではの心地よさを感じる。週末にヒルクライムを行っていた筆者にとっても、良いリカバリーライドとなった。
初対面の参加者も多かったが、まるで以前から友人だったかのような距離感で会話が弾む。楽しい時間の共有と共通の体験から生まれる共感が、人と人との距離を一気に縮めていくのだと実感した。
呼吸を整え、身体をゆるめる
一息ついたところで、いよいよヨガの時間へ。
ペダルを漕ぎ続けていた足や、ハンドルを握り続けていた手が少しずつリラックスしていく。呼吸も自然と深くなり、運動でこわばっていた身体がほどけていくのがわかる。
呼吸に意識を向けながら、小さな筋肉から大きな筋肉へと、徐々に身体を伸ばしていく。
登山のときにも感じていたことだが、運動時の呼吸がいかに大切かということに気づく。目を閉じて身体の一つひとつの動きに集中することで、意識を向けた部位の筋肉がしっかりと伸び、全身がリラックスしていくのがはっきりと感じられる。
40分ほどのヨガタイムで身体が驚くほど軽くなっていた。
自然の中で味わう、特別なひととき
ヨガで身体を整えたあとは、待ちに待ったコーヒーとおやつの時間だ。
コーヒーを用意してくれたのは、コーヒー販売を営むコズエさん(and coffeeworks)。
そして焼き菓子は、菓子店(山といっぷく)を営む友人の藤原くんがこの日のために用意してくれたものだ。
自然の中で味わうコーヒーは格別で、焼き菓子の甘みと絶妙に調和していた。
身体を動かしたあとのこの時間が、1日の充実感をさらに深めてくれるのであった。
自転車の楽しみ方は、もっと広がる
今回の企画は、藤原くん、ヤヨイさん、そしてコズエさんの何気ない会話から生まれたものだ。
「山に登ってヨガをしたら気持ちよさそう」
「そのあとにコーヒーを飲んだら最高だよね」
「じゃあ、お菓子も持っていくよ」
そんなやり取りがひとつにつながり、自然とイベントのかたちになっていったという。
普段は登山とヨガを軸に「日々、ひより」として活動している彼らだが、今回はそこに“自転車”という要素が加わり、新たな楽しみ方が生まれた。
筆者にとって自転車は、移動手段であり、アクティビティでもある。そして今回の体験を通して、さまざまなフィールドをつなぐ“ハブ”のような存在でもあると感じた。
登山、ランニング、サイクリング――。
それぞれ多様な活動を楽しむ人たちが、自転車という共通項を通してひとつの時間を共有することができた。
自転車に乗って「走ること」だけに集中することも良い。
だが、誰と、どこで、どのように楽しむかという視点を持つことで、その可能性は大きく広がっていくのではないだろうか。










