4月18日に杉並区の「井草湯」がリニューアルオープンした。同店が休業に入ったのは2016年7月、実に2年近い期間をかけての改装となったわけである。井草湯といえば、ドラマ『昼のセント酒』のオープニング映像に使われていた銭湯で、「富士山のペンキ絵を背景に、生ビールを片手にして浴槽に腰掛けるスーツ姿の主人公」というシンボリックなシーンが思い出される。筆者自身も、これまで3度程うかがわせてもらった。

  • 「井草湯」へは、西武新宿線「井荻」駅から徒歩10分

見かけもザ・銭湯から一新

アクセスは、西武新宿線「井荻」駅から歩くと10分くらい。この道が一番分かりやすいが、JR中央線「荻窪」駅からバスを使ってもいいし、歩いても30分かからない。近くに環八通りがはしっているが、一本裏手の通りに入れば閑静な住宅街で公園も多いので、散歩がてら歩くのもいいかもしれない。

さて、あの銭湯はどのように変わったのだろうか。期待を胸に現地に赴き、驚いた。あの頃の井草湯はもちろん、井草湯のあった場所自体の景色が全く変わっていたのだ。

大木に囲まれてひっそりとのれんを下げていた建屋は消え、広い土地の中を根本的に整理したようだ。銭湯に見えない、銭湯らしくない、いかにも今風の外観にガラリ。入口に掲げられた看板と営業時間の表記だけが、ここが銭湯と思い出させてくれる。

中に入ると、下足ロッカー。続いて券売機(2台)がある。左手にフロントカウンターがあり、ここではソフトクリームの販売もあった。ロビーはさほど広いというわけではないが、テーブル、イスや自販機が。

また、奥の階段から2階には休憩室とキッズルームがあるとのこと。訪問したのはオープン翌日の19日。スタッフの方も多く、花がたくさん出ていたり、記念の手ぬぐいをいただいたりした。男湯は左、女湯は右。

脱衣所のロッカーは硬貨返却式。中央に腰掛けがあり、洗面台やkeihoku製のはかり、デジタル体重計もある。当然ながらどこもかしこもピカピカで、余分な物はなく、すっきりしている。開店直後の相客は3人程。

日の光で明るく、湯にも驚きあり

男湯のイメージ(S=シャワー)

浴室の第一印象は、その明るさだ。上を見ると前後左右全てに小さいながら窓があり、日が差し込んでいる。富士山の絵はなくなったが、壁には麻の葉のモザイクタイルがあしらわれるようになっており、美しい。

湯の数も豊富に。主浴槽は約42度、シルキーバスは約43度、露天炭酸泉は約39度と、どれも入りやすい。また、主浴槽には極めて浅い子ども用の風呂も付随しており、小さい子どもも安心して楽しめる。ジェットバスの水流が、水面に噴射していないのが不思議だ。静かなのに水圧はかかっていて面白い(水深90cm)。

黒い桶とイスはそれぞれのカランにセット済み。シャワーは全てハンド式で、ボディソープ、リンスインシャンプーのほか、子ども用のアンパンマン柄のイスもある。また、使っている湯は全て軟水。こんなにヌルヌルでいいのか? と思うほどで、石けんの泡立ちもよく、湯上がりもしっとりすべすべが続く。

以前の面影は全くなくなった井草湯だが、今回のリニューアルで間違いなく東京銭湯の新しい顔になった。休みの日に電車を乗り継いでいく価値のあるお風呂。ぜひお試しあれ。

※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。