なにかとストレスの多い現代社会。疲れたビジネスマンにオススメしたいのが日本旅館や和式のビジネスホテル。東京近郊にも趣のある和風旅館が意外とあるんです! しかも、おひとりさまOK、ちょうどいい広さで宿泊料金もリーズナブルな宿が!

2時間で癒やしの世界

都心から片道2時間程度(※)で到着できるので、たとえば、土曜日の午後に出発して、明るいうちからひと風呂浴びて、ビールを飲みながら読書……なんて楽しみ方も出来ますよ。さあ、日頃、忙しくて読めなかった文庫本をカバンに入れて、癒やしの世界へ旅立ちましょう――。
※都内ターミナル駅から宿泊先の最寄り駅までの移動時間

富士山を眺望できる宿

今回紹介するのは、山梨県富士吉田市にある不動湯。JR新宿駅から約2時間で富士急・富士山駅に到着。雄大な富士山の裾野に広がる富士河口湖エリアには、古来より登山者は必ずお参りをしたという、北口本宮冨士浅間神社や河口湖、富士急ハイランド、忍野八海など、人気の観光スポットが点在しており、外国人観光客も増加し続けているとのこと。

不動湯は、そんな観光スポットの喧騒から離れた杓子山にある一軒宿です。

  • 湯治場の趣を残す佇まい

  • 不動湯福祉会理事長の桑原正利さん

「当館では、はるか昔から敷地内に湧く『硯水不動尊の湧水』を使っています。不動湯の最大の特長は、その効能にあります。アトピー性皮膚炎、肌荒れ、やけど、切り傷、打撲、美肌などに抜群の効能が期待できるといわれており、関東甲信はもちろん、中京・関西圏から訪れる方も多いですね」

こう語るのは、不動湯福祉会理事長の桑原正利(くわばらまさとし)さん。不動湯の歴史は古く、鎌倉時代にまで遡るとのこと。源頼朝が富士の巻き狩りの際、不動尊の境内に湧く岩清水に筆をひたして妻に便りを書いて送った、という故事から、「硯水不動尊」と呼ばれるようになったそうです。

湧水は、万病に効く霊水であると里人から言い伝えられ、約100年前に地域の人たちの手で湯治施設として開湯。近年では、皮膚疾患はもちろん、美肌にも効能を期待できる公共の宿として、若い女性からも注目されていると桑原さんは言います。

  • レトロでゆとりあるロビー

  • 立ち寄り湯を楽しむ方も多い

  • 山中の湯小屋だった頃

  • 清掃が行き届いた館内

徹底した水質管理

不動湯の魅力の一つは、湯治場の雰囲気を残すレトロな造り。清掃が行き届いた館内には、湯小屋だった昭和30年代の写真や著名人が訪れたときの記念写真等が飾られています。また、日帰り入浴客も歓迎しており、湯上がりに休息できる大広間も完備。昼食、夕食、朝食を提供する食堂やスナック菓子・ドリンク類を販売するコーナーもあります。

「当館では、サービス業の基本として、お客様を笑顔でお迎えし、笑顔でお送りするように努めています。特に水質管理と建物内外、浴室、トイレの清掃管理は、徹底して行っており、お客様に気持ちよくご利用いただけるよう、努力しています」

  • 誰でもくつろげる大広間

  • 温かな光に癒される

  • 食堂も完備

  • 晴れた日は、ここから富士山が見える

宿の歴史を伺い、設備を拝見した後は、パリッと糊の利いたシーツと枕カバーを持って客間へ。案内されたのは、床暖房を完備した六畳の和室。硯水不動尊と宿の横を流れる渓流を臨む角部屋で、不動湯の中でも、特に人気のある客間とのこと。到着早々、山の香りと水の音に癒やされます。今日も素敵な宿との出会いに感謝!

  • 客間は17室・定員50名

  • 布団の支度はセルフサービスで

湯あみを楽しむ

客間で一息ついた後は、お楽しみの浴室へ。不動湯の浴室は、一般客用と皮膚疾患者向けの治療専門浴室があります。どちらも、ぬる湯とあつ湯の2据えあり、数分ずつ交互に入浴することで、効能を高めることができるといわれています。お湯は無色透明、無味無臭、さらっとした感触で飲泉も可能。常に蛇口から湧水が注がれており、季節やその日の気温に合わせて、細かな温度調整を行っているそうです。

まさに源泉かけ流しの贅沢なひとときを堪能できます。山の香りを胸いっぱいに吸い込み、水の音を聞きながら、ぬる湯とあつ湯に交互に浸かる。そんな長湯を楽しめるのも不動湯ならでは。

  • 上がぬる湯、下があつ湯の浴槽

  • 飲泉も楽しめる

  • こちらは治療専門浴室の脱衣所

  • 治療専門浴室

歴史ある湯治場

湯上がりに宿の奥にある「硯水不動尊」を参拝。不動湯の水は、入浴はもちろん、直接飲んでも効能が期待できるといわれており、連日、数多くの方がプラスチック製タンクなどを持参し、水を汲みに(※)くるとのこと。昔から「不動湯の霊水は腐らない」といわれ、御飯を炊いたり、料理に使ったり、水割りにしても、おいしくいただけるそうです。
※湧水の持ち帰りには料金が必要です。詳しくは電話で不動湯まで問い合わせください

  • 不動尊入り口

  • 赤い鳥居をくぐって参拝

  • 筆者が泊まった2階客間

  • 湧水を汲みに来る方が絶えない

  • 霊泉のいわれを読む

  • 毎年8月には祭りが開催される

「当館は、地域の人たちにより湯治施設として開湯され、この地方で一番古い湯治場として利用されてきました。昭和48年、当時の財産区や連合自治会の皆さんの大きな努力により改築し、公営施設として現在の形が整えられました。必要最低限の設備しかありませんが、これからも当館は、水質と清掃にこだわり、ゆっくり、のんびり過ごすことが出来る宿であり続けます」

はるか昔から、地域の人々の手で大切に守られてきた不動湯。都会の喧騒から、わずか2時間離れた山中で出会った、こんこんと湧く湧水に心も体も癒やされました。というわけで、今回の取材も無事完了! さあ、湯上がりのビール飲むぞ~!

<お問い合わせ先>
不動湯
住所 〒403-0003 山梨県富士吉田市大明見4401 TEL/FAX 0555-23-9239
交通アクセス 電車:富士急・富士山駅下車 タクシーで約15分