ここ数カ月、景気の足踏みを示す経済データが相次ぎ、先行きに慎重な見方が増えています。たしかに米中貿易戦争や相次ぐ自然災害、消費税引き上げなどの影響が実際に出ており、それが消費者や企業の行動や心理にも影響していることは否定できません。

このため短期的には景気の停滞や後退はあるかもしれません。しかし中長期的に見れば「日本経済の復活は続く」と見ていることを改めて強調したいと思います。そう考える根拠は、この連載で見てきたように、日本企業の競争力回復(連載第1回第2回)、中小企業の健闘(第3回)などですが、今回は3つ目として、訪日外国人増加による経済効果を見ていきます。

  • 浅草の浅草寺は外国人旅行者からの人気が高い

昨年の訪日外国人は3,119万人、消費額は4兆5,200億円

まず訪日外国人数の増加ぶりをおさらいしておきましょう。日本政府観光局の発表によると、2000年代初めまでは400万人台にとどまっていましたが、2003年に当時の小泉内閣が「ビジット・ジャパン」を打ち出したのを受けて、2007年には800万人台まで増加しました。しかし、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災の影響で再び大幅に減少するなど、2012年までは一進一退が続いていました。

それが、2013年から急激に増加し始めます。同年の訪日外国人数は前年比24%増の1,036万人となり、初めて1,000万人を突破しました。その後も毎年、前年比20%前後から40%台の高い伸びを続け、2016年に2,000万人超え、2018年は3,119万人となりました。2018年の伸び率は8.7%増とやや鈍化しましたが、それでも過去最高を更新し続けています。

  • 訪日外国人数の推移

    訪日外国人数の推移

このような訪日外国人の増加は、2012年に発足した安倍内閣がアベノミクスの第3の矢・成長戦略の柱の一つとして観光立国を掲げ、日本入国の際のビザの緩和や撤廃、官民挙げての観光客誘致などに取り組み始めたことの成果で、アベノミクスによって円安となったことも追い風となりました。さらに、2013年9月に2020年東京五輪開催が決まったことも、大きなきっかけとなっています。

訪日外国人増加の経済効果は、直接的には外国人が日本で消費した金額に表れています。こちらのデータは観光庁が訪日外国人を対象とする聞き取り調査から推計したものですが、2011年の8,135億円から2018年には4兆5,189億円に達しています。この4兆5,000億円余りという金額は、日本の名目GDPの約0.8%近くに相当するものです。2018年の名目GDPは0.7%増でしたから、訪日外国人の消費額がいかに日本経済を支えているかがわかります。

  • 訪日外国人の旅行消費額

    訪日外国人の旅行消費額