超低金利時代が続く日本。円預金ではほとんどお金を増やすことができません。貯蓄性がある保険として人気がある一時払い終身保険も円建ては販売停止にしている会社が多く、販売している会社でも保険金額と一時払い保険料が同額に設定されるなど相続税対策以外ではメリットがありません。

そこで最近、金融機関などへ行くと勧められるのが外貨建ての保険です。現時点では円よりも金利が高い外貨で運用するため、支払った保険料が大きく増えるように見えますがリスクはないのでしょうか。加入する前に理解しておきたい外貨建て保険の仕組みを紹介します。

外貨はさまざまな経済要因で大きく相場が動く

為替は株式と同じように相場によって変動します。基本的な変動要因は2国間の力関係で、強い方の国の通貨が買われて高くなり弱い方の通貨が売られて安くなります。その需給バランスが崩れると、為替相場に変化が生じるのです。

ただし、かつては金利や物価水準、国際収支の状況など経済的な要因で相場が変動しましたが、最近では短期間に利ザヤを稼ぐ市場参加者による投機的要因、テロなどによる地政学的要因、コンピューターの超高速取引によるテクニカル的要因など、為替相場の変動は経済的要因だけでは説明できないことも増え、その行方を見通すのは株価以上に難しいともいえます。

では、具体的に為替相場はどのくらいの幅で動くのでしょう。下図は直近10年間の円/ドル相場の月次をグラフ化したものです。最も円高だった2012年1月は1ドル=76.19円、円安だった2015年5月は124.11円。ということは、手数料などを勘案せず単純に計算すると1ドル=100円のときに1万ドルを買った場合、2012年1月に売れば76万1900円になってしまいますが、2015年5月なら124万1100円になるということです。

外貨建て保険の仕組みをきちんと理解しておこう

そもそも、ファイナンシャル・プランナーなどお金の専門家は貯蓄性の保険をあまり勧めません。それはなぜかというと、貯蓄性があるといっても保険ですから保障に対する費用が必要で、手数料などの諸経費もかかるためです。

さらに外貨建ての場合は円を外貨に交換する際の手数料もかかるため、お金を貯めるという視点で見ると効率がいいとはいえないからです。くわえて保険期間中にお金が必要になった場合も、預金のように自由に引き出すことができません。

円建ての場合は中途解約するという方法もありますが、外貨建ての場合は為替相場によっては支払額を大きく下回る可能性もあり、いざとなったら中途解約すればいいという選択肢をいつでも選ぶことはできません。

さらにいうと、それは満期時も同じ。下のイメージ図のように外貨ベースでみれば積立額は右肩上がりで増えていきますが、為替相場によっては円貨でみると支払額を下回る可能性もあるのです。

外貨建て保険のメリットとデメリット、加入するときの注意点は?

外貨建て保険は為替相場の影響を大きく受けると説明しましたが、逆にいうとそれはメリットでもあります。

わかりやすくまとめると、メリットは(1)為替相場によっては受取額が増える可能性がある。(2)日本円以外で資産形成をすることは、円の価値が低下するリスクに備えられる。(3)現時点では日本の金利が低いので、円で運用するよりも予定利回りが高い、ということ。

デメリットは(1)円高が進むと受取額が少なくなり元本割れをする可能性がある。(2)保険料の支払い、保険金の受取りの時など外貨を円に替える際は手数料が発生する。(3)毎月支払う保険料が、為替の変動によって高くなることがある(日本円で保険料が固定された商品もある)、ということになります。

これらを理解したうえで、保険というよりは投資商品として活用したい人にはメリットがあるといえそうです。ただしその場合も、保険金受取時に外貨のまま据え置ける商品かどうか(為替リスクを回避するため)、為替手数料はいくらかかるのかといったことには注意したいもの。特に一時払いの返還外貨建て保険は、為替水準を見極めて加入時期を考えることが最大のポイントです。

  • 鈴木弥生

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。