ラグビーのW杯(ワールドカップ)で、日本は残念ながら準々決勝で敗退しました。しかし、今大会で日本代表チームは快進撃を続け、日本中に感動を与えました。初めてテレビでラグビーの試合を見て、ラグビーが好きになったという人も多いのではないでしょうか。

それにしても、このラグビーの盛り上がりは予想以上でした。なぜここまで日本中がラグビーに沸いたのでしょうか(いや、W杯は続いていますので、沸いている、というべきでしょう)。それは、日本が勝ち続けたためという以上のものがあったように感じます。ラグビーというスポーツそのものの良さを知ることができたことも大きいでしょう。

しかし、やはり何と言っても、弱小国だった日本チームが、体格や突進力ではるかに上回るはずの外国人選手に正面からぶつかって勝利したことで、元気と勇気をもらえたという点が大きいと思います。

このことは、スポーツという枠を超えて、実に多くの示唆を私たちに与えてくれています。日本はバブル崩壊後の長年にわたって経済低迷が続き、国際的にも存在感が低下していました。日本人が元気をなくしていたと言ってもいいでしょう。そんな時代が長年続いていたからこそ、多くの日本人は元気の源を求めていたのであり、今回のラグビーはまさにその場となったと言えます。

と同時に、最近の日本経済はこの連載でも指摘してきたように、着実に強さを取り戻しつつあります。日本のラグビーがここまで強くなったという事実は、日本経済の復活の動きとも重なって見えてきます。

基礎から強化し技を磨いた日本のラグビー~構造改革で競争力高めた日本企業

日本のラグビーはフィジカルで圧倒的に不利であるにもかかわらず、スクラムやタックルでは大柄な外国チームに引けを取らない力をつけてきました。さらに素早いパス回しやチームプレーなど、日本の持ち味を存分に発揮した技を磨いてきたことなどが快進撃という結果につながりました。これは、日本の多くの企業が、構造改革を進めながら独自の技術力を磨いて国際競争力を高めてきたことと相通ずるものがあります。

さらには多くの外国出身の選手も日本代表として選ばれ、彼らの力も生かしながら一体となったチームワークを強化したことは、日本企業が外国人の雇用増加など企業内グローバル化を進めていることや、訪日外国人増加が日本経済の活性化に大きな効果を発揮していることなどと重ね合わせることができそうです。経済復活も「グローバル化」と「日本独自の強み発揮」、そして「オールニッポン」のチームワークが重要なのです。

また今回の大会は、海外にも大きな影響を与えました。日本の強さだけでなく、日本のファンのマナーや日本国内の「おもてなし」の様子などが海外に伝えられ、日本という国を一段と世界に印象づけました。こうした情報発信は、今後のさらなる訪日外国人の増加や日本製品への需要などにつながり、経済効果を広げることになるでしょう。来年の東京五輪に向けても大きなステップとなることが期待されます(こちらはマラソン開催地のことが気になりますが……)。

もう一つ別の視点で考えると、ラグビー日本チームの活躍は、日本の中小企業にとっても元気の源になりうるものです。ラグビーの世界基準から見れば、ニュージーランドやイングランド、南アフリカなどの強豪国は、いわば大企業であり、これまでの日本は中小企業のような存在でした。両者の差はあまりにも大きいものがありました。

しかし、日本チームは着実に力をつけて4年前のW杯で南アに勝利し、今大会ではアイルランドとスコットランドに勝って4連勝、決勝トーナメント進出を果たしたのでした。中小企業が大企業との闘いに勝利し、世界市場で覇権を争うまでになったわけです。