しかも、それは外国人が直接消費した金額。経済効果はそれだけにとどまりません。ホテルや飲食店の新設・増築、雇用増加、多言語対応のための案内板設置や街並み整備など、都市再開発や交通網整備、さらにはホテルや飲食店が地元特産の食材提供を増やすことで農林水産業にも恩恵をもたらすなど、経済効果は広範囲に波及しています。

訪日外国人増加の経済効果は、東京や京都などの観光地だけではありません。実は、訪日が2度目以上のリピーターの割合は62.1%(2018年)に達しています。この人たちは、地方に出かける傾向が強く、地方に経済効果をもたらしているのです。

さらに訪日外国人増加は産業構造をも変えつつあります。例えば化粧品業界。多くの訪日外国人は日本のドラッグストアなどで化粧品を大量に購入し、帰国後もネット通販で日本製品を購入し続けているそうです。これを「帰国後消費」と呼ぶそうです。このため日本の化粧品の輸出額は、この5年間で4倍に増え、2018年には5,000億円を突破しました。

  • 日本の化粧品の輸出入

    日本の化粧品の輸出入

同じように石鹸、シャンプー、歯みがき、洗剤、紙おむつ、生理用品などの衛生・ヘルスケア関連の日用品分野でも日本製品が大人気で、輸出が急激に増えています。これに対応して、コーセーが42年ぶり、資生堂が36年ぶりの新工場建設、ライオンは52年ぶりに歯磨き粉の新工場建設に乗り出すなど、化粧品・日用品業界は国内工場の新増設ラッシュの様相を呈しています。

この業界はこれまで少子高齢化・人口減少によって国内市場は縮小傾向にありますが、インバウンド需要と帰国後消費という新たな需要の登場によって新たな「輸出産業」となる可能性が出てきたわけです。まさに日本の産業構造を変えうるインパクトを持っていると言えます。

最近は鈍化傾向も、中長期的に持続へ――「日本の魅力」が背景に

ただ、最近は訪日外国人増加は鈍化傾向を見せ始めています。特に最近の日韓関係の悪化によって、韓国からの訪日客は今年8月に前年同月比48%減、9月58%減、10月65%減と大きく落ち込んでいます。その影響で訪日客全体の数も8月と10月は前年同月比で減少し、今年1-10月累計(推計)でも前年同月比3.1%増にとどまっています。

このためインバウンド・ブームはそろそろ終わりではないかとの見方も出ています。しかし、この統計をよく見ると、韓国を除く訪日外国人数では8月以降も2ケタの増加が続いており、全体的な流れは基本的は変わっていません。

  • 2019年の訪日外国人数

    訪日外国人数の推移

そもそも、ここ数年の訪日外国人が急増している根本的な背景は、「日本の魅力」が世界から注目されるようになったことにあります。リピーターの割合が60%を超えていることが、それをよく表しています。したがって訪日外国人増加という基調は、そう簡単には崩れないでしょう。

来年、2020年はいよいよ東京五輪が開催されます。マラソンと競歩が札幌開催となったことは個人的には東京都民として残念ですが、来年7月の東京五輪開幕に向けて日本国内全体のムードが盛り上がるでしょう。それによる経済効果の一段の広がりも期待でき、それが2020年の景気を支える役割を果たすことは間違いないでしょう。

ただ気がかりなのは、五輪後です。「今の盛り上がりも五輪まで」「五輪が終われば、訪日外国人も減って経済効果もしぼむのではないか」といった懸念の声が聞かれます。しかし、実は私はそう思いません。それについては、次号で詳しく述べたいと思います。