JR北海道は2月16日、同社が自力で維持困難と表明した線区のひとつ、札沼線北海道医療大学~新十津川間について「札沼線沿線まちづくり検討会議」にバス路線への転換を提案したと公表した。2月17日のYOMIURI ONLINE記事「バス転換、受け入れへ調整…札沼線検討会議」によると、月形町長は沿線4町を代表する形でバス運行の具体案を高く評価したという。沿線の月形町、新十津川町、浦臼町、当別町が提案を持ち帰り、3月の会議で方針を決定するとのこと。

  • 札沼線北海道医療大学~新十津川間のバス転換提案内容

月形町長は1月16日に開催された同会議の第1回で、「札沼線の維持存続に変わりはないとの構えを崩さず」と報じられた(日本経済新聞電子版1月16日)。鉄道廃止反対の立場だった月形町長がバス転換に前向きになったことで、札沼線北海道医療大学~新十津川間についてはバス転換へ向けて動き出した。

JR北海道の提案内容は同区間を3つに分けている。

石狩当別~石狩月形間

現在、並行するバス路線がないため、新規バス路線を設定する。バスの運行本数は列車より増やし、月形高校の下校時間帯も増やす。バスと鉄道の連絡については北海道医療大学駅を接続駅とし、乗換えが便利になる形で設備を設置する。石狩当別~北海道医療大学間は列車を増便、バスの増便と合わせて札幌方面との連絡を便利にする。

石狩月形~浦臼間

月形高校への通学輸送も含めた輸送手段を設定する。バスと明記していないため、乗合タクシーなども想定しているようだ。また、並行している浦臼町営バスについて、函館本線奈井江駅に接続する便を土日も運行し、札幌への連絡を便利にする。

浦臼~新十津川間

沿線の利用者の公共交通は並行する北海道中央バスの滝川浦臼線となっている。列車は朝の1往復しかなく、バスはすでに上下10本あるという。このバスを今後も活用するほか、札幌へは新十津川と函館本線滝川駅を結ぶ39本のバス便を利用してほしいとのこと。

新しいバス路線などは地元事業者が主体とし、国または道の補助制度を活用する。JR北海道としても初期投資費用と運行費用について一定期間の支援を行う。「一定期間」の例として、江差線のバス転換について実施した18年を示したという。

札沼線北海道医療大学~新十津川間については、JR北海道が2016年11月に発表した「当社単独では維持することが困難な線区について」の中で、

月形高校への通学利用を除き日常的なご利用は殆ど無い線区。また、老朽化したレール や橋梁等があり維持管理に苦慮しているほか、冬期間には吹き溜まりが多発し、除雪等 の対応に苦慮している線区。なお、運営赤字とは別に老朽土木構造物の維持更新費用として今後20年間で6億円程度が必要。

と表明していた。沿線自治体が強固に鉄道維持を求めた場合、見返りとしてこれらの費用の負担を提案されかねない。それよりも国、道、JR北海道の支援で「鉄道より便利になりそうなバス」を手に入れるほうが現実的だ。鉄道ファンとしては寂しい話だけれども、地域にとって最適な選択であれば、鉄道の廃止を受け止めるほかない。いずれにしても、この区間の「お別れ乗車」を検討する時期が来たようだ。

他の「維持困難線区」も方針が固まりつつある

一方、北海道運輸交通審議会は2月15日に第2回会議を実施し、交通政策総合指針案を策定した。「維持に向けてさらに検討を進める」とされた路線と、「他の交通機関との代替も含め、地域における検討・協議を進めていく」とされた路線がある。指針案を知事が了承すれば、北海道として維持すべき鉄道路線と代替交通を促す鉄道路線が明確になった。

「維持に向けてさらに検討を進める」とされた路線

  • 宗谷本線(名寄~稚内間) : ロシア極東地域と本道との交流拡大の可能性も見据え、国土を形成し、本道の骨格を構成する幹線交通ネットワークである。
  • 根室本線(滝川~富良野間) : 住民の利用状況や、鉄道貨物輸送が地域の農産物を輸送する役割を一部担っている。
  • 富良野線(富良野~旭川間) : 観光客の利用だけで鉄道を維持していくことは難しい。関係機関が一体となり、観光路線としての特性をさらに発揮するよう取組を行う。
  • 石北本線(新旭川~網走間) : 国土を形成し、本道の骨格を構成する幹線交通ネットワークである。
  • 釧網本線(東釧路~網走間) : 観光客の利用だけで鉄道を維持していくことは難しい。関係機関が一体となり、観光路線としての特性をさらに発揮するよう取組を行う。
  • 根室本線(釧路~根室間) : 北方領土返還運動の拠点として重要な役割を有する。国の北方領土対策や高規格幹線道 路網整備の状況も踏まえる。
  • 日高本線(苫小牧~鵡川間) : 他の交通機関での代替の可能性も踏まえつつ、地域における負担等も含めた検討・協議を進める。
  • 室蘭本線(沼ノ端~岩見沢間) : 住民の利用状況を踏まえ、地域における負担等も含めた検討・協議を進め ながら、路線の維持に努めていく。

ただし、根室本線滝川~富良野間と石北本線、室蘭本線沼ノ端~岩見沢間が担う貨物輸送に関して、トラック輸送や海上輸送も含めて総合的に対策を検討すべき、と付されている。とくに室蘭本線については、代替ルートとなりうる千歳線の厳しい線路容量等も考慮する、とも付け加えられた。「千歳線の貨物代替ルートとして残すべきだけれども、北海道全体の物流施策次第ですよ」ということだろうか。

2月18日の毎日新聞電子版「支援枠組みづくりへ 花咲、釧網線 自治体7月までに/北海道」によると、早くも「維持に向けて検討」とされた根室本線釧路~根室間と釧網本線の沿線自治体が釧路市内で支援の枠組みを検討する会合を開いたという。

「他の交通機関との代替も含め検討・協議を進めていく」とされた路線

  • 根室本線(富良野~新得間)
  • 留萌本線(深川~留萌間)
  • 札沼線(北海道医療大学~新十津川間)
  • 日高本線(鵡川~様似間)

乗客数も少なく、貨物輸送もない。とくに留萌本線と根室本線富良野~新得間については、高規格道路の影響も考慮するとある。札幌など主要都市からの移動が高規格道路のバスになれば、鉄道の利用は沿線地域内に限られる。かなり厳しい状況になってきた。