現在、店舗でのカード払い(国際ブランド付きクレジット/デビット/プリペイドカード)は、カードをスワイプして磁気ストライプを読み取る、またはカードを端末に差し込んでICチップを読み取る方式が主流だが、Suicaなどのように端末にカードをかざすことで決済が完了する非接触方式の普及が進んでいる。

これまで国内では、ごく限られた店舗でしか国際ブランドの非接触決済は利用できなかったが、今年3月から全国のマクドナルドで、9月からは全国のローソンでもVisa、Mastercard、JCB、アメリカン・エキスプレスの対応カードで非接触決済が利用可能となった(Visaを除く3ブランドは、対応カードを保有していればApple Payでも利用可)。

今回はその中から、Visaが展開する非接触決済サービス「Visaのタッチ決済」について紹介する。同サービスは2019年3月から2020年3月にかけて、イオングループ各店の約10万台のレジでも順次導入されることが決まっており、対応カードの発行も急増中。いま最も非接触決済の普及に意欲的な国際ブランドと言って差し支えないだろう。

  • 端末にカードをかざすことで決済が完了する非接触方式から、今回は「Visaのタッチ決済」をピックアップ

    端末にカードをかざすことで決済が完了する非接触方式から、今回は「Visaのタッチ決済」をピックアップ

タッチ決済のメリットはスピードとセキュリティ

「Visaのタッチ決済」に限ったことではないが、非接触決済を使うメリットは大きく分けて2つある。1つは、決済時間の短縮。かざすだけで決済できるため、Suicaなどの電子マネーと同様に素早い決済が可能だ。非接触で決済できるのに「タッチ決済」という呼称が用いられているのは矛盾しているようにも感じるが、実際はかざして使う人よりもタッチして使っている人のほうが多いのかもしれない。

もう1つは、セキュリティに優れていること。店員にカードを渡すことなく決済できるため、磁気ストライプをスキミングされることも、カード番号を記録されることもない。決済に使われるICチップも、EMVと呼ばれる世界基準のセキュリティ技術が用いられており、偽造は困難な仕組みとなっている。

その一方で、本人確認を行うことなく支払いに使えるため、盗難された場合に悪用される恐れはあるが、大きな過失がない限りは、原則として発行会社から補償を受けられる。また、一定金額を超える支払い(「Visaのタッチ決済」は原則1万円だが加盟店により異なる)には利用できず、その際は従来の支払い方法で暗証番号の入力またはサインが必要となるため、高額の被害は出にくい設計となっている。

対応カードは14社から発行され、デビットも急増中

「Visaのタッチ決済」を利用するには、まず対応しているカードを保有する必要がある。現在、対応しているカードの多くはデビットカードで、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行、住信SBIネット銀行、GMOあおぞらネット銀行など10社が発行。11月13日からはジャパンネット銀行でも発行開始となる。なお、「三菱UFJ-VISAデビット」は、Garmin社製スマートウォッチに紐付ければ、カードの代わりに腕時計をタッチさせて支払うことも可能になる。

クレジットカードでは「ジャックスカード Visa payWave」と「OricoCard Visa payWave」の2枚が対応しており、2018年11月からはイオンカード(一部交通系提携カードを除く)でも「Visaのタッチ決済」機能搭載カードの発行が始まっている。プリペイドカードでは、アプラスから発行されている「GAICA」のみが対応。これら対応カードにはWi-Fiのマークを90度回転させたようなリップルマークが券面に描かれている。

  • 「Visaのタッチ決済」を利用できるカードは、画像右上のリップルマークが券面に描かれている

    「Visaのタッチ決済」を利用できるカードは、画像右上のリップルマークが券面に描かれている

国内外で対応加盟店が増加

利用方法は、対応する加盟店で支払いの際に「Visaのタッチ決済で」と告げ、端末に対応カードをタッチさせるだけだが、店員がタッチ決済について把握していない場合もあるのが現状だ。ただし、マクドナルドやローソンでは「クレジットで」などと伝えるだけで端末がタッチ決済を受け付ける状態になるので、あえてタッチ決済であることを言わなくても問題ない。

現時点で「Visaのタッチ決済」に対応している国内の加盟店は、前述したマクドナルドやローソンのほか、TSUTAYA、メガネストアー、表参道ヒルズ、関西国際空港など。JTBのC→REX端末、ぐるなびPayの端末を設置している店舗でも利用でき、伊藤園の自販機やサブウェイでも順次導入が進行中。来春からは、イオングループ各店やJapanTaxiでも導入が予定されている。ただし、いずれも店舗や支払い内容によっては利用できない場合がある。

「Visaのタッチ決済」は海外でも利用でき、70以上の国と地域で展開されている。特にイギリス、シンガポール、オーストラリアでは、マクドナルド、スターバックス、サブウェイをはじめ、日常的に利用するような多くの店舗が対応している。イギリスでは、ロンドン交通局の鉄道・バスでも利用可能。アメリカでも、マクドナルド、スターバックス、サブウェイでは基本的に利用できる(一部対象外店舗あり)。なお、海外では「Visa Contactless」と呼ばれている場合が多い。

今年10月16日から2019年1月15日までは、Visaデビットでタッチ決済を2回 (タッチ決済以外の支払いでは5回)以上利用すると、抽選でAmazonギフト券1万円分または神戸牛1万円相当が当たるキャンペーンも行われている。抽選対象となるにはエントリーが必要で、1回300円未満の支払いはカウント対象外。毎月16日から翌月15日を1期間として、計3回の抽選が実施される。

利用回数が増えるほど当選確率はアップするので、この機会に「Visaのタッチ決済」を始めてみてはいかがだろうか?

(※クレジットカードの用語などは以下を参照)

『シーンで選ぶクレジットカード活用術 (1) 最低限知っておいてほしい基礎知識』

※本記事で紹介したサービス内容は、消費税率8%を前提とした更新日時点の情報です。ポイント価値は編集部にて算出。利用方法によって上下する場合があります。また、各サービスには一部対象外となるケースがあります。ご利用の際は公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。

■ 筆者プロフィール: タナカヒロシ(ライター・編集者)

普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。