東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「クレー/射撃」! 競技解説は、(一社)日本クレー射撃協会の坂本強さんです。

  • クレー/射撃の魅力とは?

クレー射撃の特徴

五輪の射撃競技には、ライフル射撃、クレー射撃という2つの競技があります。今回はクレー射撃についてご紹介しましょう。クレー射撃は、散弾銃を使って空中に放り出された円盤(クレー)を撃ち落とすスポーツです。その歴史は18世紀ごろ、欧州の中流階級貴族たちの間で「狩猟の練習」として始まったと言われています。

五輪競技全体での最高齢の金メダリストは、スウェーデンの射撃選手であるオスカー・スバーンで、1912年(大正元年)のストックホルム大会において、64歳で射撃の金メダルを獲得し、その8年後、72歳で銀メダルも獲得。これが金メダルと銀メダルの最年長記録となっています。

射撃で大事なのはメンタル。一般に、年齢とともにパフォーマンスが落ちていく競技がほとんどだと思いますが、年齢や体格に左右されず、老若男女、誰もがメダリストになれる可能性を秘めたユニバーサルスポーツなのです。

クレー射撃競技には「トラップ」種目と「スキート」種目があります。

「トラップ」は、射台(射手が撃つ場所)の15m先から飛び出すクレー(皿)を撃つ種目です。射手は銃を構えた状態でコール(掛け声のこと)し、その声に機械が反応して、クレーが飛び出します。クレーは左右、高さがランダムに飛び出し、射手は、1ラウンドにつき25枚(5か所の射台×クレー1枚×5周)のクレーを射撃します。1枚のクレーに対し2発以内で撃破することができれば、得点となります(ファイナルは1発で撃破)。

「スキート」は、2か所の装置から1枚ないし2枚同時に射出されるクレーを撃つ種目です。8か所の射台を移動しながら合計で1ラウンド25回射撃し、トラップとは異なり、1枚のクレーに対し1発しか撃てません。クレーは射手のコール後、3秒の間いつ飛び出すかわかりません。クレーの飛び方は3種類あります(左、右、左右同時)。

クレー射撃を観戦するときのポイント

観戦の見所は、凄まじい轟(ごう)音で放たれた散弾が、時速80~120㎞ものスピードで飛んでいく11㎝のクレーに命中し、「パーン」と粉々に砕ける瞬間です。

東京2020の射撃競技会場となる陸上自衛隊朝霞訓練場は、1964年の東京大会ではライフル射撃の会場でした。今大会では3,000名余を収容する仮設会場ではありますが、再び射撃の緊張感と火薬臭、そして観客の熱気で満たされるに違いありません。

選手のユニフォーム(ベスト)は各国で統一されていますが、強烈な爆発音から耳を守るプロテクター、日差しの具合で使い分けるシューティンググラスには、選手のセンスや思いが生かされており、お洒落の楽しみ方にも注目してください。

東京2020でのチームジャパンの展望

日本代表は、シドニー大会以降5度目の出場となる女子トラップ種目の中山由起枝選手が、2008北京五輪の4位を上回れるかに注目が集まります。

そのほか、リオ大会に次いで出場する女子スキート種目の石原奈央子選手、男子トラップ種目として日本初出場の大山重隆選手、同じく初出場の男子スキートの井川寛之選手、今大会から新種目として実施される男女混合トラップ種目には中山・大山選手のペアが出場予定で、その活躍に期待がかかるところです。

選手たちに対しては、競技別ナショナルトレーニングセンターとして認定された神奈川県立伊勢原射撃場にて月例合宿を実施。競技そのものの練習以外にも、トップアスリートとして必要な栄養学、メンタルトレーニング、アンチ・ドーピング講習、インティグリティ学習など多岐に渡る座学も取り入れ、真のアスリートになるための強化に取り組んでいます。

競技会場となる朝霞駐屯地での射撃経験については、各国と同様皆無でありますが、日本の夏独特の湿度、風向きなどに慣れていることは優位性のひとつであり、また、数々の予選会を経て勝ち得た出場権にかける選手の強い思いには、並々ならぬものがあります。 日本開催の大会でメダルを! この信念こそが、体力や競技力を超えて何より勝る点であると言えましょう。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

アメリカに住んでいたとき、近くの町でレーザー銃でのクレー射撃のイベントがあり、見学したことがあります。レクリエーションのほか、チームビルディングなどでも利用することがあるそうです。調べてみたら日本でも体験できるところがあるようですので、ぜひチャレンジしてみてください。銃は重いため、子どもが行う場合には親のサポートが必要になると思います。私が幼少期のころ、父に割り箸銃を作ってもらった記憶があります。現代ではあまり見かけなくなりましたが、輪ゴムを使って的を狙う遊びです。そんな割り箸銃を作って室内でクレー射撃大会も盛り上がりそうです。体を動かす遊びではないですが、様々なスポーツに必要な集中力は養えるかもしれませんね。

競技解説 坂本強

一般社団法人日本クレー射撃協会・広報担当。ホームページはこちら