東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「スポーツクライミング」! 競技解説はフィジカルトレーナーとして、スポーツクライミング日本代表選手をはじめ、トップアスリートのトレーニングをサポートする竹口正範さんです。

  • スポーツクライミングの魅力とは?

スポーツクライミングの特徴

スポーツクライミングは、カラフルなホールドが設置された壁を自分の体一つで登る競技です。

同じ条件で設置された高さ15mの壁を2人の選手が同時に登り、速さを競う「スピード」、高さ4m程度の壁を制限時間内にいくつ登れるかを競う「ボルダリング」、制限時間内に15m以上の壁のどの地点まで登れるかを競う「リード」の3つがあります。

本来はそれぞれ別々の競技なのですが、五輪ではこの3種目の複合(コンバインド)で競い、各種目の順位の掛け算で順位が決まるという非常にユニークな競技です。フィジカルとテクニックに加えて判断力なども要求される競技で、人間業とは思えないような驚きのパフォーマンスが観る者を最高に興奮させてくれます。

スポーツクライミングを観戦するときのポイント

【スピード】
95度に前傾した高さ15mの2つの壁に世界共通のルートが用意されており、安全確保のためのロープを装着した2人の選手がタイムを競います。フライングの場合、一発で失格となります。失敗の許されない緊張感あふれる中で、超人的な速さで競う姿は圧巻です。優勝タイムは男子では5~6秒、女子では7~8秒。まさに、まばたきしている暇はありません。

【ボルダリング】
高さ4m程度の壁に極限まで難しく設定された課題を4分の制限時間内にいくつ登れるかを競います。トップのホールドを両手で保持できれば「完登」となります。そして、それをいかに少ないアテンプト数(トライ回数)で達成するかで順位が決まります。選手によって登り方も様々で、驚くような体勢や動きで課題をクリアしていく姿に興奮すること間違いなしです。

【リード】
6分の制限時間内に高さ15m以上の壁のどの地点まで登れるかを競います。選手は安全のためにロープをクイックドロー(ロープを引っ掛ける器具)に掛けながら登り、トップのクイックドローにロープを掛ければ「完登」となります。途中で落ちた場合はそこが記録となり、再トライはありません。極限の全身持久力が問われる高い壁に挑む姿には大きな声で応援せずにはいられません。

ボルダリングとリードでは、この世に同じ課題は1つとしてありません。そして、選手は本番の課題を事前に練習することもできません。試合当日初めて目にする課題に挑むわけですが、競技開始直前には「オブザベーション」というものがあり、課題やルートの確認をすることができます。オブザベーションではライバルである選手同士で相談することができ、その点も他の競技にはない非常にユニークなシーンといえるでしょう。

東京2020でのチームジャパンの展望

東京2020の日本代表枠は男女それぞれ2名ずつですが、現時点で代表内定となっているのは、男子が楢崎智亜選手、女子が野口啓代選手です。

楢崎選手は抜群の身体能力を生かした、彼にしかできないようなダイナミックなクライミングが持ち味で、2019年世界選手権の複合種目で金メダルを獲得するなど日本のエースとして東京2020の金メダルが期待されます。

野口選手も同じく2019年世界選手権の複合種目で銀メダルとなっており、東京2020では金メダルが期待されます。なお、長らく日本の女子クライミング界を牽引し続けてきた彼女は東京2020を最後に引退することを表明しており、キャリアの集大成として有終の美を飾れるかにも注目が集まります。

そして、この2人に加えて代表入りが期待されるのが、男子の原田海選手、女子の野中生萌(みほう)選手です。

原田選手は軽やかな動きと強力なホールドの保持力が持ち味で、2018年世界選手権のボルダリングで金メダル、2019年世界選手権の複合種目では4位など、若いながら実績は十分で、東京2020の金メダルが期待されます。

一方、野中選手はパワフルでダイナミックなクライミングが持ち味で、2018年ボルダリングのワールドカップ年間女王、2019年世界選手権の複合で5位、同年の複合種目日本選手権では野口選手を抑えて優勝しており、彼女もまた東京2020の金メダル候補の一人です。

ここまでの説明でおわかりの通り、スポーツクライミングの日本選手は世界トップレベルの実力と実績を持っています。今回の東京2020の新競技であり、男女ともに金メダルが期待されるスポーツクライミングにぜひ注目してほしいと思います。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

クライミング専門の屋内施設も増え、最近では大学や日本代表チームがトレー二ングを行う施設でもクライミングができるようになってきました。クライミングは、一見、上半身の筋力を養うことができるスポーツと思われがちですが、実は、ボールを打ったり投げるときに必要な「握る」動作が含まれており、幼少期に定期的に体験しておくと球技にも生かせそうです。また、柔軟性が必要といわれる股間節や肩関節の可動性も自然と高まります。公園で遊具としてクライミングウォールを設置しているところもありますので、そこからスタートするのが良さそうです。落下を伴う可能性があることから、安全に配慮しながら遊んでみてください。

競技解説 竹口正範(たけぐちまさのり)

Higher代表取締役/フィジカルトレーナー。サッカー日本代表の長友佑都選手やスポーツクライミング日本代表の野中生萌選手をはじめ、Jリーガーやプロ野球選手などのプロアスリートから、様々な競技の五輪選手や日本代表選手まで、多くのトップアスリートのトレーニングサポートを担当。東京・表参道でプライベートジム「CUORE ONE」を運営している。
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